起き上がりや立つときに介助が必要な車椅子利用者との旅行。宿選びで、次のような経験はありませんか。
「ベッドの高さが合わず、抱え上げが大変だった」
「自宅ではできる介助が、旅館のベッドではやりにくかった」
一般的な旅館の低いベッドや布団は、介助者の腰への負担も大きく、旅行そのものをためらう原因になりがちです。そんな不安を解消してくれるのが、電動ベッドのある旅館。電動ベッドと一言でいっても機能はさまざまで、選び方を間違えると「自宅と同じようには介助できなかった」ということにもなりかねません。
この記事では、電動ベッドがある旅館を安心して予約するために、事前に確認しておきたいポイントを紹介します。
電動ベッドがある旅館を選ぶときに見るべき2つのポイント

ここでは電動ベッドを備えた旅館を選ぶ際に確認しておきたい「モーター数」と「ベッドの設置向き」という2つのポイントを紹介します。
モーター数でわかる:背上げ・脚上げ・高さ調節のどれが必要か
宿泊時に必要なモーター数は、自宅で使っている電動ベッドが基準になります。それぞれの機能が必要になるのは、次のような方です。
背上げ:自分で起き上がるのが難しい方/介助者が体を起こすことに不安がある方
脚上げ:足を上げたほうが楽な方/座った姿勢が前にずれやすい方
高さ調節:車椅子との乗り移りに介助が必要な方/自宅で高さを変えて介助している方
背上げは、背中を上げて座った状態にできる機能です。寝たままの状態からでも体を起こすことができ、楽に座った姿勢を保てます。また、ベッドに座ったまま食事をしたいときにも便利です。
脚上げを使うと、足側だけを高くできます。足を上げたほうが楽なときに使えるほか、背上げと併用することで体が前にずれにくくなる場合があります。
高さ調節では、ベッド全体の高さを変えられます。普段から高さを変えて使っている場合には、高さ調節があれば普段と同じ手順が再現できます。
自宅の電動ベッドのリモコンを見て、普段どのボタンを使っているかを確認しておくと、旅館に必要なモーター数の目安になります。
ベッドの設置向き:自宅と同じ側から介助できるか
自宅と同じように介助ができるかどうかも確認しておきたいポイントです。たとえば自宅ではベッドの右側から車椅子を寄せて介助しているのに、旅館では左側にしかスペースがなく、いつもと逆の介助になってしまう、というケースもあります。
ベッドの位置や向きが違うことによって車椅子利用者と介助者の双方が不便を感じる場面が出てきます。現地でのストレスを減らすためにもベッドの位置や向きは確認しておくとよいでしょう。
客室の中で「介助が成り立つか」をシミュレーションする
トイレや浴室への動線も確認しておきたいポイントです。
トイレ・浴室への動線:車椅子のまま入れるか/出入口の幅はどれくらいか
部屋の中の移動スペース:荷物置き場や客室の設備が車椅子の通行の妨げにならないか
介助者の就寝位置:ベッドから移動して自宅と同じように介助がスムーズにできるか
車椅子の幅と出入口の幅を確認しておけば、現地で「車椅子のままでは入れない」と困る事態を防げます。
部屋の中の動線も大切です。介助用品で荷物が増えることも多いため、荷物を置くスペースがあるかを確認しておきましょう。あわせて、客室の設備が車椅子の通行を妨げていないか、介助者の寝る場所からベッドまでスムーズに移動できるかも見ておきたいところです。
これらを予約前にシミュレーションしておくことで、現地での困りごとを減らすことにもつながります。
電動ベッドがある旅館・ホテル4選
ここからは、各施設に直接お電話で確認した4軒を紹介します。モーターの数、ベッドの向きを変えられるか、貸し出してもらえる介助用品まで、1軒ずつ伺いました。
※掲載している設備・貸し出し用品の情報は、2026年7月時点で各施設に確認した内容です。状況は変わることがあるため、予約前に各施設へご確認ください。
亀の井ホテル鴨川(千葉)

千葉県鴨川市の温泉ホテルです。バリアフリー対応客室は1室のみのため、日程が決まったら早めの問い合わせをおすすめします。
電動ベッドは3モータータイプで、背上げ・脚上げ・高さ調節ができます。自宅で高さを変えながら介助している方も、同じ手順を再現しやすいでしょう。
ベッドは固定されていて動かせませんが、左右どちらの側にも車椅子を横付けできるスペースがあります。取り外しができる天井走行リフトが備わっているため、ベッドからトイレや浴室への移動がスムーズです。使い方に不安がある方は、事前の問い合わせか現地での確認をおすすめします。
客室からトイレ・浴室までは段差がなく、通路幅も車椅子で通行できるとのことでした。必要な幅は車椅子の種類によって変わるため、お使いの車椅子の幅を伝えて確認しておくと確実です。
介助用品は持ち込みができます。車椅子とシャワーチェアは貸し出しがありますが、滑り止めマットの貸し出しはありません。浴室で使う予定があれば持参してください。
【基本情報】
住所:千葉県鴨川市西町1137
電話:04-7092-1231
ホテル玉之湯(長野・松本浅間温泉)
長野県松本市にある温泉旅館です。客室には電動ベッド1台と通常ベッド1台が並び、介助するご家族も隣で休めます。電動ベッドは3モータータイプで、背上げ・脚上げ・高さ調節ができます。
当日の移動は難しいものの、事前に連絡すれば左右の位置変更や、乗り移る側に合わせた車椅子スペースの確保に対応してもらえます。
介助バー(手すり)は電動ベッドの枕元側・足元側のどちらにも付け替えでき、通常ベッドにも要望に応じて固定式手すりを取り付けてもらえます。客室内のトイレ・浴室までは段差がなく、通路幅も車椅子で通行できるとのことでした。
5階にはリフト付きの貸切風呂「はるの湯」があります。エレベーターで移動したあと、一度屋外に出てスロープを上がる区間があるため、雨天時の対応については宿に確認しておくと安心です。
介助用品の持ち込みができます。シャワーチェアが1台と滑り止めマット、踏み台の貸し出しがあります。
【基本情報】
住所:長野県松本市浅間温泉1-28-16
電話:0263-46-0573
下田大和館(静岡)
静岡県下田市にある旅館です。電動ベッドは2モータータイプで、背上げ・脚上げができます。高さ調節はできないため、自宅で高さを変えながら介助されている方は、事前に代わりの方法(クッションの活用等)を確認しておくと安心です。
各部屋に通常ベッド1台と電動ベッド1台があり、車椅子は左右どちらにも横付けできるスペースがあります。客室からトイレ・浴室までは段差がないとのことです。
バリアフリーの客室は3室あり、そのうち「304号室」には昇降機付きの露天風呂があります。専用の浴用車椅子(ワンサイズ)を使って入浴でき、一般的な体型の方であれば問題なく利用されているとのことでした。ただし体格によっては利用の可否が確認できていないため、不安がある場合は予約前に旅館へ相談してください。
スライディングボードやクッションなど、過度に大きいものでなければ持ち込み可能です。またマットやシャワーチェアなどは貸し出しがあります。
【基本情報】
住所:静岡県下田市吉佐美2048
電話:0558-22-1000
参照:客室|【公式】下田大和館
松井本館(京都)
京都府京都市にある旅館です。バリアフリー対応のユニバーサルデザインルームは1室のみのため、旅行が決まりましたら早めの問い合わせをおすすめします。
客室には3モータータイプの電動ベッドが2台設置されています。背上げ・脚上げ・高さ調節ができるため、自宅で高さを変えながら介助している方も同じ手順を再現しやすいでしょう。
2台とも電動ベッドのため、介助しやすいほうを選べます。左右どちらにも車椅子を横付けできるスペースがあり、自宅と同じ手順をそのまま再現しやすいでしょう。
客室からシャワールームまでに段差はなく、車椅子が通るのに十分な幅があるとのことでした。
介助用品の持ち込みは可能で、車椅子やシャワーチェアは貸し出しがあります。なお、滑り止めマットは持参をおすすめします。
【基本情報】
住所:京都府京都市中京区柳馬場六角下ル井筒屋町405
電話:075-221-3535
公式サイト:https://matsui-inn.com/
参照:客室|【公式】松井本館
そのまま使える!問い合わせ文例つきチェックリスト
電話やメールで確認する際、何をどう聞けばいいか迷う方も多いかと思います。以下の文例を参考に、気になる点を事前に問い合わせてみましょう。
文例①:電動ベッドの機能(モーター数)
「電動ベッドの設置がある客室を希望しています。背上げ・脚上げ・高さ調節の機能のうち、どれが使用できますか?」
車椅子利用者にとって普段から使用しているモーターがあると安心です。どのモーターがあるかを事前に知ることができると、現地での介助のイメージもしやすいでしょう。
文例②:ベッドの設置向きと介助スペース
「現在ベッドの右側(または左側)から介助しています。そちら(右側または左側)から車椅子が入れるスペースは確保できますか?また、介助者が寝る場所からベッドまでの動線も教えていただけますか?」
旅先で普段使用している方向から介助できるかは確認したいポイントです。また、見落としがちなのが介助者の動線。忘れずに確認しておくと安心です。
文例③:バリアフリートイレ・浴室までの動線
「客室からトイレ・浴室まで車椅子で移動できますか?また、通路や扉の幅、段差があるかどうかも教えてください。」
通路や扉の幅は確認したいポイントです。また、ほんの少しの段差がある場合もありますので、事前に問い合わせると安心でしょう。
文例④:介助用品の持ち込み・レンタル可否
「スライディングボードやクッションなど、普段使っている介助用品の持ち込みは可能ですか?また、館内でレンタルできる介助用品があれば教えてください。」
「◯◯(用品名)の持ち込みについて記載が見当たらなかったのですが、持ち込みは可能ですか?」
レンタルできるものはホームページの【よくあるご質問】などに書いてあることがありますので、そちらもご確認ください。
回答から「ここなら大丈夫」を見極めるポイント
具体的な数字が返ってくるかどうかは大切なポイントです。「幅◯cmあります」「ベッドの右側に◯cmのスペースがあります」など、具体的な回答が返ってくる旅館は、実際に客室を確認したうえで答えてくれていることが多く、安心して予約できます。
一方で「バリアフリー対応なので大丈夫です」など抽象的だった場合には再度連絡をして、「写真を送ってもらえませんか」など相談してみてください。言葉だけでは説明しきれないところも写真を見ると分かります。
まとめ
電動ベッドがある旅館を4軒紹介しました。旅館によって、ベッドを動かせるかどうかやモーター数に違いがあります。今回の4軒では、モーターが3つか2つかで、高さ調節ができるかどうかが分かれていました。
「ベッドの高さが合わず、抱え上げが大変だった」「自宅ではできる介助が、旅館のベッドではやりにくかった」そんな経験から旅行をためらってしまう方も少なくないでしょう。今回の記事を旅館選びで困らないための目安としてご活用いただけたら幸いです。
また、各旅館ともバリアフリー対応の客室に限りがあるため、早めの問い合わせも大切です。気になる旅館を見つけたら、記事内の文例を参考に問い合わせてみてください。







