車を利用する障害者の方にとって毎月のガソリン代の支出は、家計にとって大きな負担ですよね。
特に、最近では世界情勢の不安定さや円安などの影響で燃料費は高騰し続けているのが現状です。
そこで、車を利用する障害者の方のために「自動車燃料費助成」という制度があります。
自動車燃料費助成とは、重度の障害がある方を対象に、自治体がガソリン代の一部を補助する制度です。
支給額は自治体によって異なりますが、月3,000円〜5,000円程度が目安で、ガソリン券として配布される地域もあれば、口座への現金振込で支給される地域もあります。
ただし、この制度は国の統一制度ではなく、お住まいの市区町村ごとに対象者の条件・支給方法・申請窓口が大きく異なります。「隣の市では使えるのに自分の市では制度自体がない」「申請したら所得制限で対象外だった」というケースもあるため、まずはご自身の自治体の制度内容を確認することが必須です。
この記事では、自動車を日常的に利用される障害のある方とそのご家族に向けて、①対象者となる障害の等級・条件、②自治体ごとの支給方法と金額の例、③申請に必要な書類と手順、④他の移動支援制度との併用可否を解説していきます。
1.障害者手帳でガソリン代が補助される「自動車燃料費助成」とは?
自動車燃料費助成とは、障害者の社会活動を促進することを目的に外出にかかる自動車燃料費の一部を助成する制度です。
主に、障害者手帳や療育手帳を所有している方を対象に、ガソリン代にかかる経済的負担を軽減してくれます。
ガソリン代の一部をどのように補助するのかというと、自治体から発行された「ガソリン券(自動車燃料券)」を給油時に提示することで、ガソリン代が割引になります。
また、自治体によっては口座振込での現金支給の場合もあり、補助方法はさまざまです。
自動車燃料費助成は、車を利用する障害者の方にとっては移動手段の下支えとなる制度だといえるでしょう。
2.自動車燃料費助成の対象者
2-1.比較的重度の障害者が対象
自動車燃料費助成の対象者になる障害者は、自治体の基準によって異なりますが比較的重度の方が対象です。
例えば、埼玉県ふじみ野市の場合自動車燃料費助成の対象になる障害者は以下の通りです。
引用元:障害者自動車燃料費の助成|ふじみ野市
- 身体障害者手帳の1級または2級をお持ちの方
- 療育手帳のマルAまたはAをお持ちの方
- 精神障害者保健福祉手帳1級をお持ちの方
かつ- 障がい者又は障がい者と同一の敷地内に居住する者が、自動車検査証上の「使用者」であり運転者である場合
ふじみ野市では、身体障害者手帳1・2級や療育手帳でも重度のA判定、精神障害者手帳は1級と比較的重度の障害者の方が対象になっています。
次に、千葉県浦安市の対象となる障害者の要件を見ていきましょう。
浦安市では、市内に在住し、次の要件に該当する方(または該当する方が含まれる世帯)が所有する自家用車が対象です。
引用元:自動車燃料費助成|浦安市
- 身体障害者手帳1級・2級・3級(視覚障がいに限る)をお持ちの方
- じん臓機能障害で手帳があり人工透析を受けている方
- 療育手帳マルA・マルAの1・マルAの2・Aの1・Aの2をお持ちの方
- 児童相談所または知的障害者更生相談所において最重度または重度の知的障がいと判定を受けた方
- 精神障害者保健福祉手帳1級・2級・3級をお持ちの方
浦安市では、身体障害者は1・2級に加え、視覚障害の方に限り3級も対象です。 精神障害者保健福祉手帳は1〜3級までと、ふじみ野市より幅広い方が対象になっています。 なお浦安市の支給額は月額2,000円(1世帯につき1台まで)で、1カ月あたりの燃料費が2,000円未満の月は対象外です。 また、福祉タクシー券を利用した月は、自動車燃料費助成を受給できません。
参照:自動車燃料費助成|浦安市
上記のように、自治体によって対象となる障害者は異なっているので、まずお住まいの地域のホームページや問い合わせにて自分が対象者であるか確認することをおすすめします。
2-2.障害者の扶養・同居家族も利用できる
自動車燃料費助成の対象者は、障害者本人だけでなく扶養・同居家族でも利用できます。
重度の障害がある方はご自身で運転できないことも多いため、多くの自治体では、同居または扶養しているご家族が障害者本人のために運転して給油する場合も対象としています。
ただしあくまで、障害者本人の移動のために給油する場合が対象です。
前掲のふじみ野市のように「障害者本人、または同一敷地内に居住する方が車検証上の使用者かつ運転者であること」など、運転者に条件を設けている自治体もあります。
よって、家族名義・家族運転で使う場合は要件を確認しておきましょう。
2-3.補助が受けられる利用と所得制限について
自動車燃料費助成には、利用する条件と所得制限が設けられています。
利用する条件は、先ほどの自治体が定めた障害者手帳や療育手帳の等級に当てはまっているかどうかと「在宅」であることが条件です。
そのため、対象の障害者に当てはまっていても施設に入所している障害者の方や入院中の場合は、申請ができないので注意しましょう。
所得制限額は自治体ごとに設定されています。
参考として、東京都北区の基準は以下の通りです。
| 扶養親族等の数 | 収入額 | 所得額 |
| 0人 | 5,252,000円 | 3,661,000円 |
| 1人 | 5,728,000円 | 4,041,000円 |
| 2人 | 6,203,000円 | 4,421,000円 |
| 3人 | 6,668,000円 | 4,801,000円 |
| 4人 | 7,090,000円 | 5,181,000円 |
| 5人 | 7,512,000円 | 5,561,000円 |
所得制限は基本的に障害者本人の所得で判断しますが、20歳未満の場合は保護者(扶養義務者)の所得で判定されます。
もし基準額を超えると、助成の対象になりません。
ただし、この基準額は自治体によって異なります。
例えば東京都目黒区では、扶養0人で所得3,661,000円、扶養1人ごとに38万円加算という別の基準が設けられています。
また、上記の所得額は年収から各種控除を差し引いた金額です。
世帯の状況によっては、次のような控除を差し引ける場合があります。
- 所得者本人の雑損控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 寡婦控除
- 勤労学生控除
- 控除対象配偶者
- 扶養親族の障害者控除
- 特別障害者控除
- 配偶者特別控除額
上記の控除対象に当てはまる場合は、所得額を減額できるので所得制限で申請できないと諦める前に、まずは自治体の窓口で相談してみることをおすすめします。
3.自治体ごとのガソリン代支給方法や金額の違い
自動車燃料費助成は、自治体によってガソリン代の支給方法や金額が異なります。
ガソリン代の支給方法は、冒頭でも解説したガソリン券(自動車燃料券)や福祉燃料券と呼ばれる割引券のようなもので配布されるのが一般的です。
ただし、自治体によっては指定口座への現金支給という形で実施している自治体もあります。
また、東京都三鷹市のように使用したガソリン代(給油量)に応じて支給する自治体もあります。
1リットルにつき50円単位で、1カ月の上限が50リットル。各月の使用量に応じて算定した金額を助成します。
引用元:三鷹市心身障がい者自動車等燃料費助成|三鷹市
支給金額も自治体によって、以下のように金額が大きく異なります。
- 新潟市・・・年額10,000円(10月〜翌年3月に受給資格を得た場合は5,000円)
- 郡山市・・・年額15,000円(初年度は申請月により変動)年額15,000円
- 墨田区・・・年額最大30,000円分(申請月により5,000円ずつ減額)
参照:自動車燃料費助成|新潟市 参照:重度心身障害者タクシー料金・自動車燃料費の助成|郡山市 参照:心身障害者福祉タクシー料金・自動車燃料費助成共通券の交付|墨田区
上記のように、障害者手帳でのガソリン代の支給金額は自治体によって差があるのが特徴です。
なお墨田区の助成は、タクシー料金と燃料費の両方に使える「助成共通券」として交付される点が特徴です。 また、個別等級が下肢・体幹機能障害1級、脳病変移動機能障害1級、腎臓機能障害1級のいずれかに該当する場合は、上記の助成額に10,000円が加算されます。
4.障害者手帳によるガソリン代割引の申請方法について
4-1.申請に必要なもの
自動車燃料費助成の申請に必要な書類は、以下の通りです。
- 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳
- 自動車検査証
- 自動車燃料費助成申請書
- 運転免許証
- マイナンバーカード
- 印鑑
- 委任状(本人以外の代理人が申請する場合)
口座振込で支給を受ける場合は、これに加えて次のものが必要です。
- 助成対象となるガソリン代の領収書
- 障害者本人名義の通帳もしくはキャッシュカード
(対象者が障害児もしくは知的障害者の場合、保護者名義も可)
口座振込の場合は、別途領収書や口座番号がわかる通帳やキャッシュカードが必要になります。
上記で記載した必要書類に関しては一例で、自治体によって異なります。
また、本人以外の家族が申請する場合は委任状や代理で申請する者の身分証明書などが必要になるので、事前にお住まいの自治体のホームページで確認しておきましょう。
4-2.申請の手順
申請は、お住まいの市区町村の窓口(障がい福祉課・社会福祉課など、名称は自治体により異なります)で行います。
自動車燃料費助成申請書や委任状は、自治体のホームページからもダウンロード可能ですが窓口でも入手できるので申請時に記入しても問題ありません。
申請後は、審査が行われ決定通知書が郵送されます。
4-3.変更手続きについて
住所や登録車両の変更手続きを行う場合は、申請手続きと同じように市町村の窓口にて申請します。
また、タクシー券や他の移動支援制度から自動車燃料費助成の切り替えを行う場合も、変更手続きが必要です。
4-4.申請月によっては減額される場合もあるので注意
動車燃料費助成では、自治体によって、年度の途中で新たに対象になった方について、申請した月に応じて交付額(枚数)が少なくなる場合があります。
例えば、埼玉県鴻巣市では申請した月によって給付されるガソリン券は、以下のように変動します。
| 申請月 | 支給枚数(支給額) |
| 4月 | 12枚(8,400円) |
| 5月 | 11枚(7,700円) |
| 6月 | 10枚(7,000円) |
| 7月 | 9枚(6,300円) |
| 8月 | 8枚(5,600円) |
| 9月 | 7枚(4,900円) |
| 10月 | 6枚(4,200円) |
| 11月 | 5枚(3,500円) |
| 12月 | 4枚(2,800円) |
| 1月 | 3枚(2,100円) |
| 2月 | 2枚(1,400円) |
| 3月 | 1枚(700円) |
参照:福祉タクシー利用券・自動車燃料費助成券の交付について|鴻巣市
このように、年度の途中で対象になった場合は申請が遅いほど交付額が少なくなることがあります。
また、振込での支給は申請月が決められている場合が多いので、お住まいの地域ではどのような支給要件なのか確認しておくのがよいでしょう。
5.障害者手帳のガソリン代割引を利用する上での注意点
5-1.福祉タクシー券との併給は不可
多くの自治体では、福祉タクシー券と自動車燃料費助成券の併給(両方の同時利用)はできません。
どちらか一方を選ぶことになるため、車での外出が中心か、タクシー利用が中心かなど、ご自身のライフスタイルやお住まいの地域の交通事情を踏まえて選択しましょう。
ただし、神奈川県箱根町のように併給可能な自治体もあります。
1. 福祉タクシー利用券 利用券(1枚500円)交付による運賃の助成 年間の交付枚数は5から60枚(人工透析者は年間13から156枚)
引用元:在宅重度障がい者等福祉タクシー利用券および自動車燃料費助成券の交付|箱根町
2. 自動車燃料費助成 助成券(1枚1,000円分)交付による燃料費の助成 年間の交付枚数は2から14枚(人工透析者は年間3から36枚) ※両券を併給する場合は、各券の交付枚数の1/2を交付
5-2.利用できるガソリンスタンドかどうか給油前に確認する
自動車燃料費助成は、申請した市町村内の指定されたガソリンスタンドで利用できます。
そのため、給油前にガソリンの補助が受けられるかどうか確認しましょう。
自治体によっては、自動車燃料費助成が利用できるガソリンスタンドの一覧が記載された紙を配布する場合もあります。
あわせて、次の点にも注意が必要です。
- セルフ式のガソリンスタンドでは使えないことがある(従業員が券を確認・処理するため)
- ガソリン券にはおつりが出ないのが一般的で、券面額に満たない分の差額は自己負担になるので給油前に金額を店員に伝えておくと安心
- 紛失しても再発行されない自治体が多いため、券は大切に保管する
また、ガソリン券はハイオクガソリン・レギュラーガソリン・軽油のみ利用可能なので、洗車やオイル交換などは助成対象外です。
5-3.登録車両以外の車への給油は対象外
自動車燃料費助成の申請時には、給油する車両を車検証に基づいて1台登録します。
給油時にガソリンスタンドの従業員の方が、障害者自動車燃料券に印字された車両のナンバーと実際に給油する車両のナンバーが一致しているかの確認を行います。
そのため、事前に登録された車両以外への給油は助成券の対象外です。
買い替えなどで車両が変わった場合は、忘れずに変更手続きを行いましょう。
6.障害者手帳によるガソリン代割引以外に障害者が受けられる自動車関連の割引制度
障害者の方は、自動車燃料費助成の他にも自動車関連で受けられる割引制度があります。
下記は、自動車関連の障害者割引・助成制度の一例です。
- 有料道路における障害者割引
- 自動車税の免除
- 身体障害者用自動車改造費助成
- 自動車運転免許取得費用の助成
いずれも対象条件や申請期限、所得制限などが自治体・都道府県ごとに定められているため、事前にお住まいの窓口でご確認ください。
有料道路の割引については「障害者手帳を使った高速道路や有料道路の割引制度」、自動車税の減免など手帳で使える割引全般については「障害者手帳を使った割引・サービス20選」もあわせてご覧ください。
7.まとめ
今回は、障害者手帳をお持ちの方のガソリン代を補助する「自動車燃料費助成」について対象者や申請方法を解説してきました。
自動車燃料費助成は、車を所有している障害者の方にとってはガソリン代の一部が割引される嬉しい制度です。
ただし国の統一制度ではなく、対象者の要件・支給方法・金額・申請窓口は市区町村ごとに大きく異なります。
また、福祉タクシー券との併給ができない自治体が多いことや、所得制限が設けられている点にも注意が必要です。
さらに、有料道路の割引や自動車税(種別割)の減免、自動車改造費・運転免許取得費の助成など、自動車に関連する支援制度もあります。
これらを組み合わせて活用すれば、自動車にかかる負担をより軽減できます。
ぜひ、障害者手帳で受けられる自動車燃料費助成を有効活用して、家計の負担を少しでも減らしましょう。







