市販の椅子では姿勢が崩れてしまい、食事をする時や、園・学校での活動に困ってしまう人がいます。座位保持椅子を知らなかったり、知っていても種類や費用などがわからなかったり、「どこに相談したらいいのかわからない」という判断に迷うケースもあるでしょう。
補装具費支給制度における障害児(18歳未満)の所得制限が撤廃されたため、以前は「対象外」だったご家庭も費用支給の対象となる可能性が出てきました。
本記事では、座位保持椅子の基本知識や費用、申請から完成までの流れを解説しています。さらに、「座位保持椅子が外出時に持ち出せるのかが分からない」「うちの子には旅行は難しい」と感じている保護者の方に向けて、飛行機に乗るときの工夫も紹介しています。
座位保持椅子は申請から手元に届くまで時間がかかるため、早めに動き出すことが大切です。
※本記事は2026年10月10日時点の情報です。補装具費支給制度の運用や各航空会社のサービス内容は変更される場合がありますので、最新の情報はお住まいの自治体の窓口および各航空会社の公式サイトでご確認ください。
1.座位保持椅子とは?

障害などがあり、市販されている椅子では姿勢が崩れてしまう人が、安定して座れるように工夫された椅子のことを座位保持椅子といいます。座位保持椅子は、単に「座らせておくため」のものではなく、日常のさまざまなシーンにおいて生活の幅を広げるための用具です。
姿勢が安定することで、手を使いやすくなったり、食事の場面で楽に過ごせるようになったりする場合があります。どのような変化があるかは一人ひとり異なりますので、お子さんの状態については主治医やリハビリの担当者にご相談ください。
なお、座位保持椅子は制度上「姿勢保持装置」といい(2024年(令和6年)4月に「座位保持装置」から名称変更)、補装具費支給制度の対象となります。
参照:1 補装具の種目|補装具の種目、購入等に要する費用の額の算定等に関する基準(平成18年厚生労働省告示第528号)|厚生労働省
参照:補装具費支給制度の概要|千葉県
2.座位保持椅子の種類
座位保持椅子の種類は姿勢保持装置の「支持部」の作り方によって違い、次の3種類があります。
平面形状型
モールド型
張り調整型
平面形状型は、平面を主体として支えるタイプで、各種付属品を組み合わせて姿勢を保持します。採寸して製作。
モールド型は、身体の形に合わせて曲面で支えるタイプで、各種付属品を組み合わせて姿勢を保持します。採寸または型をとる採型のどちらかの方法で製作。
張り調整型は、シートや複数のベルトのたわみを利用して、身体の形や変形に合わせて支えるタイプです。
なお、以前の資料では「張り調整型」は「シート張り調節型」と表記されていました。また、背もたれの角度を変えられる「リクライニング」や座った姿勢のまま全体を傾けられる「ティルト」は型式とは別に選択することができる機能です。
どの型式や機能が合っているかについては、医師や理学療法士・作業療法士などのリハビリの担当者、義肢装具士といった専門職が評価したうえで検討されます。
参照:第1の5 姿勢保持装置(4)製作要素価格 ア 支持部〜ウ 構造フレーム(44〜46ページ)|補装具費支給事務取扱要領(最終改正 令和8年3月30日)|厚生労働省
3.座位保持椅子はどうやって手に入れる?
座位保持椅子を使ってみたいものの「どのように手に入れたらいいのかわからない」とお困りの方へ向けて製作にたどり着くまでの流れを書きました。座位保持椅子を作る際の参考にしてみてください。
3-1.基本はオーダーメイド
既製品ではなく、基本は一人ひとりに合わせて製作します。製作には医師が処方した「意見書」が必要です。意見書を持って福祉用具の製作事業者に相談に行き、採寸や試作を重ねていきます。オーダーメイドのため、相談してもすぐには手元に届きません。
3-2.相談先の探し方
製作事業者は全国各地にありますが、どこに相談したらいいのかわからない場合には、主治医やリハビリの担当者、自治体の障害福祉担当窓口などにお尋ねください。地域で対応している事業者を紹介してもらえる場合があります。
4.座位保持椅子の費用と補助金(補装具費支給制度)
オーダーメイドで製作するため、完成までいくらかかるか見通しが立ちません。費用の負担を軽くするために、障害者総合支援法に基づく公的な制度として「補装具費支給制度」があります。
4-1.費用の自己負担は原則1割
補装具費支給制度を利用する場合、自己負担は原則1割です。ひと月あたりの負担上限額は所得に応じて定められており、生活保護世帯および市町村民税非課税世帯は0円、市町村民税課税世帯は37,200円です。
ただし、1割負担となるのは、制度で定められた基準額の範囲内の費用です。基準額を超える金額や、制度の対象とならない付属品の費用は、自己負担となる場合があります。実際の自己負担額は見積りの内容によって変わりますので、製作事業者とお住まいの自治体の窓口の双方へご確認ください。
参照:こどもが補装具を利用するご家庭の皆様へ(別添)|こども家庭庁・厚生労働省
参照:補装具費支給制度の概要|国立障害者リハビリテーションセンター
4-2.補助金の所得制限は2024年4月に撤廃された
以前は、障害児本人またはその保護者などの世帯員のいずれかが一定以上の所得(市町村民税所得割の最多納税者の納税額が46万円以上)である場合、補装具費の支給対象外となり全額自己負担でした。2024年(令和6年)4月1日以降、障害児についてはこの所得制限が撤廃されました。
参照:こどもが補装具を利用するご家庭の皆様へ(別添)|こども家庭庁・厚生労働省
ただし、支給を受けるには、所得以外の要件を満たす必要があります。身体障害者手帳の交付を受けている場合のほか、障害者総合支援法の対象疾病(難病等)に該当する場合も対象となることがあります。いずれの場合も、医師の意見書などに基づく判断を受けることが必要です。要件の細かな取り扱いは自治体によって異なる場合がありますので、お住まいの自治体の窓口へご確認ください。
4-3.申請から受け取りまでの流れ
申請から完成品の受け取りまでは主に5つのステップで進みます。
医師・リハビリの担当者へ相談し、補装具費支給意見書(処方)を取得する
製作事業者から見積書を取得する
市町村の窓口へ申請する
市町村が書類をもとに支給の可否を判断する
支給決定を受けたあと、製作・納品が行われる
補装具費の支給は障害者総合支援法に基づく制度です。18歳以上の場合は、身体障害者更生相談所による判定を受けるのが原則ですが、18歳未満については、補装具費支給申請書や意見書などにより市町村が判断して支給決定を行います。ただし、必要な書類や手続きの詳細は自治体によって異なる場合がありますので、お住まいの自治体窓口へご確認ください。
なお、補装具が手元に届くまでの期間は、製作事業者や自治体の手続きによって異なります。
参照:車椅子の購入は補助金を活用!補装具費支給制度の判定基準や支給までの流れを解説
4-4.購入以外の選択肢
サブスクリプションで利用できる、乳幼児向けの姿勢保持クッション(シュクレN)があります。大阪にある「株式会社アシスト」が展開しているサービスです。なお、シュクレNは、市区町村の判断で日常生活用具(訓練椅子)として給付の対象になる場合があります。お住まいの市区町村の窓口にご確認ください。
お子さんに合うかどうかはわからないため、主治医やリハビリ担当者と相談したうえで、サブスクリプションの利用を検討してください。
参照:シュクレN サブスクリプション(定額レンタルサービス)|アシスト
【基本情報】
住所:大阪府河内長野市加賀田205-1
電話:0721-60-2833
公式サイト:https://assist-info.jp/
5.飛行機で座位を保つための工夫

座位保持椅子は一人ひとりの身体に合わせて作られているため、外出先にそのまま持って行けるとは限りません。万が一、座位保持椅子が使えないとなった場合でも、航空会社が貸し出している補助具で対応できる場合があります。
また、普段使っている補助具を持ち込む場合についても書きましたので、旅行の際の参考にしてください。
5-1.航空会社が貸し出している補助具
本記事ではANA・JAL・Peachの3社について取り上げます。補助具は3社ともに事前申込が必要です。また、今回挙げた3社だけでなく、その他の航空会社でも同様のサービスを用意している場合もありますので事前に確認してみてください。
なお、補助具を使用する際にはお子さん自身の座席が必要となるため、運賃がかかります。
■ ANA:アシストシート
アシストシートは座席に取り付けた状態で貸し出されます。
サポートベルトは「ベストタイプ」と「ベルトタイプ」の1セットで貸し出されます。
座位を安定させるために、枕や毛布を体と座席の隙間に入れて使用できます。
補助具を使用する場合は、非常口座席に着席できません。
サポートベルトを使用していても、航空機座席のシートベルトは必ず着用しましょう。
■ JAL:チャイルドシート(座位を保つことが困難なお客さま)
上体固定用補助ベルトもあります。
利用する際、年齢・身長・体重の確認があります。
Sサイズを利用する場合は、肩ベルト調整のため、座面から肩までのサイズも確認。
■ Peach:サポートベルト
座席に上体を安定させられる、「サポートベルト(ベストタイプとベルトタイプを1セット)」の貸し出しがあります。
貸し出しは無料です。
一部の座席では使用できない場合があります。
座位を安定させるため、必要に応じて体と座席の隙間に入れるタオルなどを持参してください。
参照:サポートベルトをご希望のお客様|お身体が不自由なお客様|Peach Aviation
参照:お手伝いが必要なお客さま|Peach Aviation
※ANAとJALでは、Sサイズの身長条件が異なります。なお、体格が境目にあたる場合は、どの補助具を選べばいいのかを各航空会社に確認してください。
※各航空会社の貸出内容は2026年10月10日時点の情報です。変更される場合がありますので、最新情報は公式サイトでご確認ください。
5-2.自分の補助具を持ち込むという選択肢
航空会社の設備をお借りできるのは便利な一方で、一人ひとりの体格に合ったものではないため、隙間ができたり、体がずれてしまったりといった心配も出てきます。もし、普段使用している補助具が持ち込めるならそれに越したことはありません。実際に持ち込む選択肢はないのでしょうか。
各航空会社で持ち込めるものをピックアップしてみました。ただし、持ち込むためには「予約を取る前に確認」すること、「航空会社によっても対応が分かれる」ことに注意が必要です。
■ ANA
自身の補助具を機内で使用できる場合があります。事前に、補助具の形状やサイズ、座席への装着方法を「ANAおからだの不自由な方の相談デスク」へ連絡しましょう。
日本・欧州・米国の安全基準(MLIT/ECE R44/FMVSS No.213)で承認されたチャイルドシートや、航空機用の幼児用ベルト「CARES」も持ち込めます。
■ JAL
お子さん自身のカーシートや補助具を、事前の確認を経て機内で使用できる場合があります。
補助具の形状がわかる写真を添え、素材、サイズ(高さ・幅・奥行き・重さ)を事前に連絡しましょう。
座席への装着は付き添いの方が行います(持ち込みの場合)。
■ Peach
自身で持ち込んだサポートベルトは使用できません。
貸し出しのサポートベルトのみ利用可能です。
普段の補助具を使いたい場合は、持ち込めるかどうかを航空会社へ確認してみましょう。持ち込めるものは航空会社によって異なるため、航空会社を選ぶことも旅行の準備のひとつです。
5-3.事前連絡の期限と伝えるべきこと
補助具をあらかじめ準備してもらうためには期限が決められており、間に合わないと当日利用できない場合があるなど、不都合が出てきます。飛行機の利用日が決まった段階で、早めに航空会社に確認してみましょう。
※JALの上体固定用補助ベルトは、国内線・国際線とも便出発の96時間前(4日前)までです。
年齢・身長・体重、自身の補助具を使う場合は形状や装着方法などを聞かれる可能性があります。あらかじめメモに書いておくなどの準備をしておくとスムーズです。
5-4.実際に飛行機に乗ったご家族の工夫
※ここで紹介するのはあくまでも一例です。機内での固定方法や補助具の使用ができるかどうかは事前に航空会社へ確認してください。
実際に飛行機を利用したご家族から、Ayumiに情報をご提供いただきました。

写真では、ネックピローや三角マット、姿勢サポートクッション(p!nt kids)、固定ベルトで姿勢を保っています。状況に合わせて、U字クッションを使うこともあるそうです。オムツや着替えをエコバッグに詰めて簡易クッションにしたり、航空会社でクッションをお借りしたりすることもあります。
手持ちのものも組み合わせながら、身体に合わせて少しずつ調整し、今のかたちになったそうです。
お子さんによって適した方法は異なり、首まわりに物を当てる方法は、気道が圧迫されて呼吸に影響が出るおそれがあります。同じ方法をそのまま取り入れることは避け、必ず事前に主治医やリハビリの担当者にご相談ください。また、持ち込む道具は離着陸時に使用できない場合があります。
なお、搭乗手続き全般や障害者割引については、こちらの関連記事を参考にしてください。
そのほかにも、医療・福祉・介護の「すきま」をつなぐ活動を行う団体「NPO法人あえりあ」では、看護師が医療的ケア児の旅行に同行した記録を発信しています。気になる方はこちらのサイトも確認してみてください。
参照:重症心身障害児(医療的ケア児)沖縄旅行with看護師|NPO法人あえりあ
6.まとめ
座位保持椅子についての製作の流れ、型式、費用についてまとめています。補装具費支給制度の所得制限が撤廃(18歳未満)されたことによって、補助金をもらえる対象となる可能性が出てきました。乳幼児向けの姿勢保持クッションのサブスクリプションについても触れています。
また、飛行機に乗る際の注意点や、借りることができる補助具、機内に持ち込めるものについてもまとめましたので参考になれば幸いです。
外出には、こども本人の体調はもちろん、医療的ケアの状況によって配慮するべき点が異なるため、主治医やリハビリの担当者とも相談したうえで進めるようにしましょう。ほかに何か困ったことがあれば、自治体の障害福祉担当窓口などに相談するということもできます。
「うちの子には旅行は難しい」と諦めていたご家族が、この記事を参考にして外出のきっかけとしていただけたら嬉しいです。







