みなさんは〝福祉避難所〟という言葉を聞いたことがありますか?
災害が起きたとき、多くの人は近くの学校や公民館といったあらかじめ決められた「一般避難所」へ避難します。しかし車椅子を利用する人にとって、段差の多い体育館や、狭く混雑した通路、使いにくいトイレなど、一般の避難所での生活には多くの困難があり、「避難所に行くこと自体をためらってしまう」という人も多いのではないでしょうか?
そうした人々が安心して避難生活を送るために用意されているのが〝 福祉避難所〟です。しかし、その存在や利用方法について詳しく知らないという人もいらっしゃいますよね。
この記事では、福祉避難所とは何か、どうすれば利用できるのかを分かりやすく解説していきます。
福祉避難所とは?一般の避難所との違い
福祉避難所とはどのようなところでしょうか? 内閣府の資料によると『要援護者(高齢者、障害者等)が安心して生活ができる体制を整備…(中略)…した避難所である』 とされています。福祉避難所は対象者が決められており、誰でも利用できるわけではありません。
『要援護者(高齢者、障害者等)が安心して生活ができる体制を整備…(中略)…した避難所である』
引用元:福祉避難所について|内閣府
一方で一般の避難所は、地域住民全体を対象とした避難施設で、学校の体育館や公民館などが指定されていることが多く、バリアフリー対応や必要な設備が十分に整っていない場合もあります。
対象になるのはどんな人か
福祉避難所の対象となる人は、避難所での生活に支障があったり、特別な配慮を必要としたりする人とその家族、とされています。
具体的には高齢者、障害者、妊産婦、乳幼児とそのご家族、疾病を抱えている人などが該当します。
「災害が起きたらすぐ福祉避難所に行ける」は誤解?

災害に遭うと、誰でもとてつもない不安におそわれます。状況によっては一般避難所に行くのでさえ大変です。そのようななかで、すぐに福祉避難所へ行くことはできるのでしょうか?
まずは一般の避難所へ避難するのが基本の流れ
災害が起きたとき、学校や公民館などの地域防災拠点(一般避難所)に避難所が開設されます。まずはそこに避難するのが一般的な流れです。
その後に福祉避難所が開設されても、地域防災拠点(一般避難所)からの移動は本人や家族で行うのが一般的な流れとなります。ただし、自治体によって移送の支援体制は異なるため、あらかじめお住まいの自治体の体制を確認しておくと安心です。
福祉避難所が開設されるタイミングは自治体によって差がある
福祉避難所は、災害から数日後に開設されるとは限りません。あとから福祉避難所が開設される場合もあれば、指定避難所内で一般避難スペースと福祉避難スペースとに分かれている場合もあります。ここで知っておいてほしいことは「自治体によって運用が異なる場合がある」ということです。
内閣府参事官による寄稿によると、
と書いています。『 ある小学校が指定避難所でかつ福祉避難所として指定されていた場合、体育館など一般避難者の避難スペース(以下「一般避難スペース」という)とは別に、教室など要配慮者の避難スペース(以下「福祉避難スペース」という)があるということになります。このケースでは、その教室は「福祉避難所」ですが、小学校という施設として見るとこの教室は「福祉避難スペース」です。』
引用元:福祉避難所について(川上一郎 内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(被災者行政担当)(当時))(月刊ノーマライゼーション2017年9月号│DINF
福祉避難所は「必ず利用できる」とは限らない
さて、福祉避難所は「避難所での生活に支障があったり、特別な配慮を必要としたりする人とその家族」が対象となりますが、該当していたとしても必ず利用できるわけではありません。
福祉避難所は必ず開設されるものではなく、開設されたとしても、施設によって収容人数や設備数に幅があります。さらに専門職(保健師)などが要配慮者本人の状況や要介護認定の有無等を確認し、一般避難所での避難生活は難しいと判断されると福祉避難所に行くことができます。
いざというときに適切なサポートを受けるためにも、日頃から自治体の防災計画を確認し、必要に応じて保健師などの専門スタッフへ事前に相談しておくことをおすすめします。
今日からできる、事前の備え
いざという時のために何ができるのか、万が一に備えて今からでも登録しておきたい制度があることをご存じですか?
避難行動要支援者名簿への事前登録
2013(平成25)年の災害対策基本法改正により、市町村に対して避難行動要支援者名簿の作成が義務付けられました。万が一の災害時に少しでも支援を受けやすいよう、事前の登録をおすすめします。なお、名簿への登録は支援を保証するものではありません。
登録の条件や申請方法は各自治体によって異なる可能性もあるため、まずはお住まいの自治体窓口へご確認ください。
Ayumiが自治体窓口に問い合わせて分かったこと
2026(令和8)年8月24日、さいたま市福祉総務課様に問い合わせを行いました。
福祉避難所の開設と施設情報
福祉避難所は必要に応じて開設される二次避難所です。「市が福祉避難所として指定した施設」と「市と協定を締結した民間の社会福祉施設」、合わせて103の施設があります。詳しい施設の情報はさいたま市ホームページ内の「福祉避難所について」のページに「福祉避難所設置・運営マニュアル」のリンクがあります。その資料の下段にある「福祉避難所の一覧」から事前に確認できます。
福祉避難所は災害が発生した後、おおむね3日程度での開設を想定しています。その理由として、福祉避難所(二次避難所)として指定・協定している施設やその施設の利用者様の安全確保、職員の人員確保などを行う必要があり、すぐには開設できないためです。
また、原則として直接福祉避難所に行くことはできません。まずは一般の指定避難所(小学校や公民館等)へ避難し、そこで配慮が必要と判断された場合に移動(二次避難)することになります。その際の移動についてはご家族、支援者、ボランティアなどの協力による移動を基本としております。
そのほか、一般避難所においても、妊産婦や配慮が必要な方への個別のスペース確保など、現場の状況や自主防災の範囲内でできる限りの対応はしたい、とお話しになっていました。ただ義務づけられているわけではありません。被災した状況下においての臨機応変な対応となり、確実に設けられるかどうかは分からない、としています。
避難行動要支援者名簿への登録について
さいたま市では、自ら避難することが困難な方の名簿という形で「避難行動要支援者名簿」を作成しています。
名簿に登録された方を対象に、自治会や自主防災組織、民生委員等に情報を提供し「何かあった際に助けが必要ですよ」という情報を周知しています。ただし、有事の際には、地域の支援者も被災者となることから、 必ずしも「お助けします」と約束するものではありません。なお、情報の提供にあたって、同意書の提出が必要となります。
登録条件や手続きについては、さいたま市ホームページに記載されています。
高齢者の場合は、
引用元:避難行動要支援者名簿の作成について|さいたま市
・要介護2~5の認定を受けている方
・要支援1・2、要介護1の認定を受けている単身又は高齢者のみの世帯の方
障害者の場合は、
・障害支援区分認定者 ・視覚障害者1・2級
・聴覚障害者2・3級 ・身体障害者(肢体不自由)1・2級
・身体障害者(内部障害)1級 ・知的障害者Ⓐ・A・B
・身体・知的障害児 ・精神障害者1・2級
・特別障害者手当受給者
必ず条件を満たす必要はなく、ご本人の希望があれば名簿への記載は可能です。
避難する際の同行者について
一人での移動や避難生活が困難な場合、付き添い(介助者)の存在が必要不可欠であるという観点から、福祉避難所への避難時に要配慮者本人と介助者等1名程度の同行はできるそうです。
まとめ

福祉避難所は、一般の指定避難所では配慮が難しい高齢者や障害者などが安心して過ごせるよう整備された二次避難所です。まずは、一般の指定避難所に避難したうえで二次避難となること、避難行動要支援者名簿への登録によって周囲に支援の必要性を周知できるなど、いざという時に慌てないための制度がいくつも用意されています。
こうした制度が整えられてきた背景には、1995年に起きた阪神・淡路大震災において災害関連死が相次いだことの教訓があります。災害関連死とは、直接その災害で亡くなるのではなく、介助が行き届かない避難所での生活において亡くなることです。
福祉避難所という制度について、あらかじめ知っておくことで、要配慮者やその家族は災害時の備えをすることができます。
制度は少しずつ整ってきた一方で、医療的ケアやトイレの問題など、当事者でなければ気づきにくい課題もまだまだあります。医療的ケアやトイレについては、別の記事で取り上げる予定です。
災害はいつ起こるかわかりません。この記事で初めて〝福祉避難所〟を知ったという人は、まず、お住まいの自治体の防災情報を調べてみてください。







