
近年、日本のいたるところで地震や豪雨などの災害が起きています。いつ何時災害が発生しないとも限りません。能登半島地震の調査で、避難生活が始まってすぐに困ったことの1位が「トイレ」(69.8%)でした。車椅子を利用する人にとっては、さらに大変な状況だったであろうことは想像に難くありません。
参照:P8 │ 能登半島地震(能登町)における発災後のトイレ事情調査 │ 特定非営利活動法人日本トイレ研究所(災害用トイレ普及・推進チーム)
特に車椅子利用者が一人暮らしの場合、災害にあってもすぐには支援も介助の手も届きにくく、誰かがそばにいてくれるとも限りません。避難所のトイレだけに頼るのは衛生上の懸念や、混んでいてすぐには使えないことも考えられます。また、トイレに行く回数を減らそうとして水分補給を控えることで脱水となり、病気を引き起こすリスクも考えられます。
避難生活をしなければならない状況になったとき、自宅のトイレが使えたら格段に過ごしやすくなると思いませんか? この記事では、自宅避難でも使える携帯トイレの使い方や準備、今日からできる工夫をわかりやすくまとめました。
備え①:携帯トイレの使い方と、備える量
今やホームセンターなど、どこでも携帯トイレが購入できるようになりました。ただいざというときに使えないと困りますよね。ここでは使い方とともに、いくつストックがあればいいのかも考えてみたいと思います。
設置手順
在宅避難の大きなメリットは、慣れた空間で車椅子のまま安心してトイレに行けることではないでしょうか? まずは一人でセットできる「携帯トイレの設置手順」を確認しておきましょう。
『水が出ない、排水できないときでもトイレ空間と便器は活用できます。安心できるトイレ空間は、ものすごく大切です。自宅のトイレを有効活用する上で必要なのが携帯トイレです。』
『携帯トイレは便器に取り付ける袋式のトイレで、吸収シートや凝固剤を入れて、うんちとおしっこを安定化させるのが目的です。携帯トイレをいきなり便器に取り付けると、便器の底に溜まっている水が付いてしまい、交換時にポタポタ垂れてしまいます。まずは便座を上げて、便器そのものにポリ袋を被せ、便座を下ろしてから携帯トイレを取り付けるとよいです。』
引用元:携帯トイレの使い方 | TOILET MAGAZINE(トイレマガジン)
引用先には図もありますので確認してみてください。
車椅子を利用する人が工夫できること
車椅子利用者1人でも避難生活が過ごしやすくなる工夫もいくつかあげてみましたので、参考にしてみてください。
いざというときのためにトイレまでの動線にはなるべく物を置かない、ことがあげられます。特に廊下など狭いところは動線に物が多いと倒れたり壊れたりして障害物となり車椅子の動きを妨げてしまう可能性が高くなります。
停電をしている場合には日が落ちると暗く何も見えなくなってしまうため、両手が使えるようにヘッドライトを使うのも一案です。また日頃から置き型のセンサーライト(電池式や充電式)を使っていれば近づくだけで明るくなるので、好みに合わせてご使用ください。
携帯トイレを使用する手順のうち、ビニール袋を便器に取り付けできない場合には、ポリ袋に水を溜めたものをあらかじめトイレに置いておくことをお勧めします。断水していても水を溜めたポリ袋を封水(便器内の水が溜まっているところ)の上に置くだけで蓋ができ、携帯トイレも濡れずに取り付けられます。また、携帯トイレを交換する際にも封水が触れないため交換しやすくなります。なお、封水は悪臭や有害ガスの逆流を防ぎ、また、虫の侵入も防ぐことができるため、あえて抜かないようにしましょう。
衛生上の観点から、使用済みの携帯トイレの片付けなどで手を不用意に汚さないためにも手袋も準備してあると安心です。
携帯トイレだけでは足りないもの
携帯トイレだけでは、いざというときに不便を感じることがあります。
断水で水が使えない状況では手を洗うことができないため、ウエットシートやお尻拭きなどがあると不衛生にならずにすみます。また、使用済みの携帯トイレを入れるゴミ袋(消臭タイプだとなお良し)や、それらを入れるゴミ箱もあれば、散らかることなくまとめて置いておくことができます。
日頃からトイレットペーパーは多めにストックしておきましょう。
必要なものを準備し、どこに置いておくかもあらかじめ決めておくと、災害などの緊急時にも慌てずに使うことができます。
何回分備えるか
携帯トイレは普段から1日のトイレに行く回数がわかればそれに応じた回数×7日分(1週間分)あると安心です。例えば1日に5回行く人は、5(1日に行く回数)×7(日数)=35回分を用意しておきます。ただし、環境が変化したストレスで体調を崩すことも想定して少し多めにおいてあれば安心です。
備え②:一人で行う場合を試しておく
防災用品の中には立ったまま使うことが前提となっているものがあります。試しに家で携帯トイレを使ってみるとどこに不便を感じるのかがわかりますし、それによって対策することもできます。
例えば「移乗の手順や所要時間」は実際にやってみないことにはわかりません。「どこに明かりがあると便利か」なども試したからこそ得られる情報となります。万が一のときに頼れる人がいない状況でも1人でどこまでできるか知っていることは大切です。平時に実際に1人で試してみることをおすすめします。
避難所のトイレは、車椅子を利用する人にとって厳しい現実がある
実際に、避難生活において、車椅子利用者が不便な思いをした事例があります。たとえば、能登半島地震での調査では、避難所にある仮設トイレの多くが和式だったり、たとえ洋式でも空間が狭い場合があったことが報告されています。また、個室数も少なく、「遠い・狭い」といった声もありました。
そのほかにも現場では様々な声があがっていたようです。詳しく知りたい人は以下の記事をご覧になってみてください。
参照:災害時における避難所のトイレ・仮設トイレ問題|リスク対策.com 参照:災害時のトイレ問題・被災地を知る有識者に聞く実情|空飛ぶ捜索医療団ARROWS
備え③:自宅にいても、支援を受けられるようにしておく
自治体が作成している【避難行動要支援者名簿】を知っていますか? 支援が必要な人がどこにいるのかがわからないことには、支援の手があっても助けようがありません。避難行動要支援者名簿に登録しておくことで自治体も支援が必要な人を事前に把握でき、地域の方や自治防災組織、民生委員などとも情報を共有することができるようになります。
在宅避難は把握されにくいという現実
避難所にいれば名簿などで避難者を把握できますが、在宅避難はどうしても人の目に触れにくい状況です。自宅は他人が気軽に入り込める空間でもないため、周りに伝わりにくい環境となり、困りごとにも気づかれにくいという現実があります。
事前にしておきたいこと
【避難行動要支援者名簿】へ登録しておくと万が一のときの安心にもつながります。そのほかにも、お住まいの自治体の相談支援専門員やケアマネジャーともあらかじめ災害時の連絡方法を決めておくと、行政側も要支援者の存在を把握しやすいです。同時に、車椅子利用者からの連絡手段も決めておくことができるため、災害が起きたときに自分からも状況を伝えることができるようになります。事前の準備をしっかりとしておくことで、自宅避難でも孤独に感じることが少なくなるでしょう。
また、DWAT(災害派遣福祉チーム)が在宅避難者宅に派遣される場合もあります。ただし、自治体によっては対応が異なりますので、まずはお住まいの自治体へ確認してみてください。
参照:東京都災害派遣福祉チーム(東京DWAT)について|東京都社会福祉協議会
まとめ

災害が起きたとき、トイレに困る人が少なくありません。在宅避難の場合、安心してトイレに行ける環境が整えられるメリットがありますが、反面、周囲からは状況が把握されにくいといった環境になりえます。だからこそ、事前の備えが大切です。
携帯トイレをはじめとした備品の準備はもちろん、自治体への相談と避難行動要支援者名簿への登録で地域との繋がりができます。事前の相談で、福祉避難所についても情報が得られるかもしれません。福祉避難所については別の記事で紹介していますので、興味があれば見てみてください。
災害はいつ起こるかわかりません。だからこそ、トイレ環境を整え、いつ被災しても安心できるように今から備えておくことが大切です。







