エキマトペをデザインした株式会社方角 代表方山れいこさんが変える社会の在り方とは?

株式会社方角 代表方山れいこさん

障害当事者の困りごとに真正面からデザインで取り組む挑戦者がいます。

今回は、株式会社方角・代表の方山れいこさんに取材をさせていただきました。

方山さんがデザインされた、聴覚障害者の駅案内装置「エキマトペ」は福祉の枠を超えて、大きな反響を呼びました。

福祉と全く接点がなかったにも関わらず挑戦した背景や、方山さんがデザインするバリアフリーな未来にも迫りましたので、ぜひ最後までご覧ください。

1.株式会社方角ってなに?

株式会社方角は、2021年1月に設立されたばかりのデザイン会社です。

持続可能なデザイン組織作りを大切にされており、その一つに雇用の整備が挙げられます。なかでも重要な取組みとして、聴覚障害者をデザイナーとして雇用し、一緒に働いているそうです。今後も聴覚障害者を中心に雇用していきたいといいます。

耳の聞こえない・聞こえづらい方、いわゆる聴覚障害者と接点を持ったきっかけは、エキマトペのデザインを担当したことでした。

当事者やチームメンバーの意見を取り入れた「エキマトペ」のデザイン

JR上野駅のエキマトペ

「キンコンカンコーン」「プシュー」「ゴゴゴォ」JR上野駅の自動販売機の上には、このような環境音を可視化する装置「エキマトペ」が設置されています。

聴覚障害者の声から生まれたエキマトペは、文字デザインの楽しさから、当事者のみならず多くの人に受け入れられ、2022年にグッドデザイン賞を受賞されました。

そのエキマトペのアニメーションやデザインを担当されたのが、方山さんです。

学生時代の友人からプロジェクトに誘われましたが、当初は聴覚障害者との関わりがなかったため、デザインの押し付けにならないよう、当事者やチームメンバーの意見を聞きながら作成されました。

こうして2022年6月に実証実験を行ったところ、SNSを中心に大きな反響を呼びました。

この出来事が、福祉に関心を持つきっかけになったといいます。

デザインで福祉を盛り上げる事業を展開

株式会社方角には、エキマトペの他にも福祉にデザインを取り入れたサービスがあります。

その一つが、ブラウザ上で筆談ができる「ifyoumeet.com」です。

ifyoumeet.comの筆談ができる画面

エキマトペをきっかけに聴覚障害に関心を持った方山さんですが、当初はどのように当事者とコミュニケーションをとったらよいか、分からなかったそうです。

エキマトペが当事者以外からも拡散されたことから「福祉に興味がないのではなく、何をしたらよいかが分からない人が多いのではないか」と方山さんは考えました。

ifyoumeet.comは、健常者側からコミュニケーションを働きかけることを想定したサービスです。健常者が聴覚障害者と出会った際に、ifyoumeet.comを思い出してコミュニケーションを図って欲しいという想いから開発されました。

株式会社方角では種類を問わず、様々なデザイン事業に取り組まれています。そこには、自分のデザイン技術で人に喜んでもらいたいという、方山さんの想いがあるためです。

株式会社方角が行う取り組み

「聞こえない・聞こえづらい人々が自分らしく生きられる社会構造をつくる」をミッションに掲げる、株式会社方角では、上記に紹介した事業以外にも、聴覚障害者向けの活動をされています。

2023年5月からはYouTubeチャンネル「方角の方角」を開設し、聴覚障害に関するニュースの発信や、福祉業界外の企業とコラボを通してダイバーシティの取り組みを発信されています。

方角の方角:https://www.youtube.com/@hogakunohogaku

また、2025年に聴覚障害者のスポーツ大会である「デフリンピック」が東京で開催されるに伴い、音が聞こえなくても競技を楽しく観戦できるアイデアのピッチコンテスト「UPGRADE with TOKYO」を東京都が主催しました。

株式会社方角が提案したのは「雰囲気応援可視化システム」です。

競技の音や観戦、雰囲気をオノマトペとしてリアルタイムに表示させ、聴覚障害者でも臨場感を味わうことができるシステムを、株式会社アイシンと早稲田大学と共同で開発を行っています。

コンテストでは技術力とデザイン性を評価され、見事に優勝をされました。

参照:UPGRADE with TOKYO(東京都 公式)-note:第29回「音が見える、音を感じる競技会場の実現」

産官学と共に展開する株式会社方角のこれからにより一層注目です。

2.代表 方山れいこさんってどんな人?

仕事中の株式会社方角 代表方山れいこさん

筆者が最初に感じた方山さんの印象は「穏やか」でした。しかし、お話を伺ううちに穏やかなだけではなく、新しいことも取り入れる貪欲さ、一つひとつのプロジェクトに対する熱い想いも感じました。

ここからは過去を遡って、方山さんのルーツを見ていきましょう。

方山さんの過去に迫る!

幼少期は落ち着きが無く、整理整頓が苦手だったといいます。また、自然が好きで、トカゲを捕まえて帰ることもあったそうです。

絵を描くことが好きだったため、小学校の卒業文集には「漫画家になりたい」と書いていたとのこと。

本格的にデザイナーを志したのは、高校2年生の時です。ある音楽番組の舞台セットに魅了され、直感的に「これを作りたい」と思い、その方法を模索するうちにデザイナーという職業を見つけました。

それまで、何もやりたいことがなかったと振り返る方山さんですが、このひとつの出会いが強い原動力になったといいます。

全く違う畑(業界)からの起業

美術大学・大学院を卒業した後、デザイン事務所へ就職します。

そこでは大規模なパーティーの空間演出を手がけられ、テレビ番組の舞台セットではないものの、高校生に思った空間デザインの目標を叶えられました。

それから2年半が経ち、フリーランスとして独立されますが、そこで社会の冷たさを味わったといいます。

既に結婚されていた方山さんは、世間の「妻」という印象に振り回されたのです。本気でデザインに取り組んでも片手間だと思われることや、誤解されることがあったそうです。

会社として法人化することで、仕事への想いが伝わるのではないかと思い、2021年に株式会社方角を起業されました。

福祉業界にデザインの考えを取り入れた

福祉に関心を持ったのは、やはりエキマトペでの出来事でした。

当事者やそのご家族からたくさんの感想が届き、中には「エキマトペを作ってくださり、本当にありがとうございます」と切実な声もありました。

「私がやらなきゃ」

当事者の声を聞くうちに、方山さんの心に使命感が現れたといいます。そこから福祉や障害について勉強をされ、本格的に事業として取り組むこととなりました。

これまで全く福祉業界を知らなかった方山さんだからこそ、同じように知らない方・分からない方に向けて発信を続けていきたいといいます。

3.株式会社方角を通して伝えたいこと

方山れいこさんが描いたエキマトペのラフデザイン

方山さんは、自分の個性をデザインに表したくないといいます。

エキマトペが設置された当初は「方山さんらしい」という声もあったそうですが、メディアで広く認知されていくと、そのデザインは方山さんのものではなく、エキマトペのものになっていったのです。

このように、株式会社方角で作られたデザインが、世の中に普及しスタンダードなものとして浸透していくことが理想的だと話します。

株式会社方角が手掛けるデザインで最も意識していることは、わかりやすさとのこと。

誰が使っても分かりやすく、生活に寄り添ったデザインを生み出していきたいそうです。

また、エキマトペを通じて、社会の暗い一面も知ることとなりました。

文章では伝わりにくい問題でも、デザインにすると伝わりやすいこともあります。こうした点にデザインの可能性があり、今後デザインを通じて伝えていきたいと話します。

4.社会が意識を変えるきっかけを与えるため、これから展開するものとは?

株式会社方角では、聴覚障害者のための求人サービス「Gratuna (グラツナ)」を2023年1月にリリースしました。グラツナのサービス内容はこちらの記事から確認できます。

起業してからたくさんの当事者の声を聞いていくなかで、特に雇用に関する課題が多いと感じたそうです。

Gratunaでは、耳の聞こえない・聞こえづらい方専用の求人サイトを立ち上げ、従来の障害で一括りにする形式ではなく、コミュニケーション方法や特性を具体的に表示させる形式にするとのこと。

聴覚障害当事者1個人と1企業がスムーズにマッチングできる体制を整えます。

当事者のヒアリングを元にした聴覚障害者の求人専用の求人テンプレートを掲載する求人サイトをオープン(2023年1月予定)し、更に就業後も企業向けに適切な配慮と適宜アドバイスを行うプログラム(2023年3月予定)も提供していきます。

「Gratuna (グラツナ)」へのお問い合わせはこちら

メール登録で情報を受け取りたい方へ

求人掲載をご希望の企業様へ

雇用する側が事前に一人ひとりの障害特性を知っておくことで、就職後のトラブル軽減に繋がるため、お互いにとって利点のあるサービスとして展開していきたいといいます。

こうした雇用整備もデザインの役割であり、取り組みたいことの一つだと話します。

これらのバリアフリーデザインが、方山さん独自のものではなく、世の中の当たり前になるように、方山さんは挑戦し続けるのです。

5.最後に

今回の記事はいかがだったでしょうか。

これまでのデザインの枠にとらわれず、デザインの力でバリアフリーな社会を目指す方山さん。

SNSでも精力的に発信されているので、気になった方はぜひチェックしてみてください。

公式HP:https://hogaku.co.jp/
Twitter:https://twitter.com/denkiry
ifyoumeet.com:https://ifyoumeet.com/
Gratuna(グラツナ)ティザーサイト:https://gratuna.com/

Facebook
Twitter
LinkedIn

シェアお願いします( ´ ▽ ` )

▼おすすめ記事

この記事のライター

メニュー

記事カテゴリー

新着記事

人気記事

Ayumiの活動を寄付で応援し、
社会を変える仲間になりませんか?

Yogibo Social Good


公式オンラインストアで
クーポンコード [ THAY ] を入力して
Yogibo(ヨギボー)を購入すると
売上の5%がAyumiの活動資金となります

プロボノ募集中

ボランティア募集中 activo

公式SNS

運営にご協力いただいている企業様