重度心身障害児18トリソミーの娘と出会い、在り方を学び、発信し続けるゆずちママ

ゆずちちゃんを抱っこするゆずちママ

結婚、出産、育児。

一見、人生を歩む上で当たり前のように見える出来事ですが、実は奇跡の連続なのです。

今回紹介するゆずちママは、出産、育児でその奇跡を強く感じたママの1人です。一人娘のゆずちちゃんは、18トリソミーの障害を抱えています

障害がわかったのは妊娠30週のとき。思い描いていた人生とはほど遠い現実を目の当たりにし、最初は受け止めることが難しかったそうです。

しかし、ゆずちちゃんが生まれてきてくれたことで、人生観が大きく変わり、とても生きやすくなったといいます。

ゆずちママは、ゆずちちゃんからどんな生き方を学んだのでしょうか。ゆずちママが、障害児・医療的ケア児ママへ伝えたい想いに迫りました。

1.重度心身障害児18トリソミーってどんな病気?

ゆずちちゃんが抱える18トリソミーとは、染色体異常症の一つで、知的障害や身体障害をはじめ、様々な合併症を伴うケースが多くあります。

6,000人に1人の確率で発症すると言われており、そこから1歳を迎えられる子どもは、5〜10%に過ぎません。医療が発達し予後に改善の兆しが見られるものの、有効な治療は未だ確立がされていない病気です。

参照:18トリソミー|MSDマニュアル

ゆずちちゃんの場合は、心臓の病気である両大血管右心室起始症や、難聴、弱視などの症状に加え、重度な身体障害があります。

そのため、人工呼吸器の装着や経管栄養など、24時間の医療的ケアが必要になるそうです。

2.ゆずちちゃん奇跡の誕生秘話

生まれたばかりの頃のゆずちちゃん

【インタビュアー(ライター):赤石/インタビュイー:ゆずちママ

赤石:ゆずちちゃんに障害があるとわかったときの心境を教えてください。

ゆずちママ:私は4人兄妹の末っ子で、お姉ちゃんたちがみんな結婚して子育てをしている姿を見ていたので、健康な子どもしか生まれないと思っていたんです。

妊娠30週のエコーで、普段は穏やかに会話をする先生の口数が減り「障害を持って生まれてくるかもしれません」と言われたときは、不安と恐怖でいっぱいでした。

当たり前に思い描いていた未来が、一瞬にして崩れていった感覚です。

「育てる自信がないから施設に預けた方がいいかな。いっそ無かったことにできないか。」

正直、そう考えたこともありました。入院中はたくさん泣きましたね。

赤石:なぜ、そこから前向きに出産と育児を考えるようになったのですか?

ゆずちママ:ゆずちは、生まれてもNICU(新生児集中治療管理室)に必ず入ることになります。なので、事前に見学させていただきました。

そこには、管やモニターに繋がれた小さな赤ちゃんが一生懸命に生きようとしている姿がありました。

ただただ生きたい。その一心で頑張る赤ちゃんを見て、障害という言葉は私たちが勝手に感じているもので、この子たちには関係ないのではないかと思ったんです。

ゆずちは、18トリソミーに加えて逆子でした。主治医や看護師さんからは、生まれて来られないかもしれないと言われ「心拍モニターをつけますか?」と聞かれました。

亡くなって生まれてくる現実に耐えられず、モニターをつけないお母さんもいるそうです。それでも、ゆずちが生きたいと思うのであれば無事に産まれると信じて「どんなことがあってもモニターは付けます」と答えました。

そして、2020年9月27日。18トリソミーのゆずちは18時18分に生まれてきてくれました。本当に奇跡ですよね。

3.医療的ケア児の娘から学んだこと

笑顔のゆずちちゃん

赤石:医療的ケア児支援法などで支援が行われてはいるものの、自宅で育てるには、まだまだ不安なことが多いと思います。それでも、ゆずちちゃんを自宅で育てようと思われた1番の理由は何ですか?

ゆずちママ:本当にいろんな景色を見せてあげたい。この一択ですね。生まれる確率が低かったのに生まれてきてくれたからには、この世界をたくさん味わってほしいなと思います。

ただ、生まれてから1年4ヶ月経って退院した当初は、不安でいっぱいでした。旦那さんの仕事は夜勤があるため、1人でゆずちをみなくてはいけないことが多く、孤独と不安で押しつぶされそうな毎日でした。

そのころ、ゆずちも突然体調を崩すようになり、日に日に悪化して、ついには入院するまでになったんです。

赤石:原因は何だったんでしょうか?

ゆずちママ:それが、検査をしても特定できなかったんです。でも、主治医の先生には「お母さんの一生懸命さが、ゆずちちゃんのプレッシャーになってる」と言われました。

ゆずちの体調を崩している原因は、私だったんです。

思えば、ゆずちを1人でみるというプレッシャーから、全て完璧にしなくてはいけないと感じ、育児というよりも患者のように接していました。娘の様子よりもモニターの数字にとらわれて、過剰に反応してたんです。

幼い頃から親に褒められる経験が少なかったからか、人に認められたい思いが人一倍ありました。だから「娘のために睡眠不足が続いても頑張らなきゃ」って思っていたものの、身体は限界を迎えてしまいました。

そのとき初めて、「頑張り続けるって無理なんだ」って気づいたんです。私は誰かに認められるために生きているのではなく、自分が思い描く幸せを求めてもいいのかなと、気づくきっかけになりました。

それから、娘を見守ることを意識して過ごしていると、嘘みたいに回復していったんです。

少しのことで命に直結する医療的ケア児だからこそ、孤独がとても怖くてたまりませんでした。でも、娘と向き合ったことで、ありのままの自分自身を見つめ直すことができ、ネガティブな日常すらも受け入れることで、前向きになれた

ゆずちが生まれてきてくれたおかげで、本当の自分を取り戻せたんです。

4.医療的ケア児の子育ての様子をInstagramで発信し続ける理由

横になっているゆずちちゃん

赤石:Instagramでの発信で大切にしていることを教えてください。

ゆずちママゆずちと私の日常を正直に載せることを大切にしています。

SNSをしていると、フォロワーの多さがその人の価値と捉えられることがあります。

私も、最初はフォロワー数を気にしていたことがありました。ありがたいことに、たくさんの方に見てもらう機会は増えたものの、私自身は何も変わってませんでした。大切なのは、フォロワー数より、自分がどういう想いで発信しているかだと気づいたのです。

もともと自分に自信がなくて、常に誰かと比較し劣等感を抱いていましたが、それって本当に苦しいんです。でも、ゆずちのおかげで、ありのままの、等身大の自分でいいと思えてから、生きるのがとても楽になりました。

「誰にどう見られるか」より「自分がどう思うか」の方が大切だと感じているからこそ、ありのままの私たちの日常を残せるような発信をしています。

良いところだけでなく、ネガティブな部分も包み隠さず出すことで、同じ境遇のママさんに共感していただいたり、1人じゃないと感じてもらえるのかなと思いますね。

5.医療的ケア児の家族に伝えたいこと

赤石:医療的ケア児がいるご家族へ伝えたいことはありますか?

ゆずちママ医療的ケア児を自宅でみることは当たり前ではなく、すごいことだと思っています。小型の呼吸器を自宅に置いて、免許も経験もなかったお母さんがみるって、本当にすごいことなんです。

周産期医療が発達してたくさんの子どもの命が救われる一方で、障害福祉はお母さんが頑張る前提で考えられていると感じます。命を救った先の選択肢がより増えるといいなと思います。

すぐ命に直結する医療的ケア児のお母さんは、無意識でもたくさんのプレッシャーのなか、日々を過ごしているんです。だからこそ、自分自身を信じて、自分にとっての居心地の良さを大切にして欲しいと思います。

医療的ケア児は言葉が発せなくても、五感で人の感情を察する力が強いので、お母さんたちの不安や苛立ちはすぐに伝わってしまいます。そのため、お母さん自身のメンタルを大切にして、「かわいいね」とか「ありがとう」という言葉を投げかけて欲しいですね。

6.最後に

ゆずちママは自身の弱さを、ゆずちちゃんによって見つけることができたといいます。

誰かと比べるのではなく、ありのままの自分を発信し続けるからこそ、障害児ママのみならず、多くの人から支持されているのだと筆者は感じました。

インタビューの最後に、これからゆずちちゃんと叶えたいことを聞くと、「当たり前の日常をゆずちと共に過ごしていきたい」と仰っていました。四季を味わったり、公園を散歩したり、こうした何気ない日常の一つひとつが奇跡の連続なのです

気になった方は、ぜひゆずちママのInstagramをご覧ください。

Instagram:https://www.instagram.com/happiness_yuz927/

Ayumiでは、障害児ママのコウタくんママも取材しています。コウタくんは国内で2例しかない染色体異常を抱えていて、コウタくんママも日常をインスタグラムで発信されています。ぜひこちらの記事もご覧ください。

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