障害と向き合う挑戦者 「人の身体と行動から考える建築へ」Somato一級建築士事務所 渡邉純矢さんが描く、人と建築の新しい関係

「人の身体と行動から考える建築へ」Somato一級建築士事務所 渡邉純矢さんが描く、人と建築の新しい関係

渡邉 純矢さん

スポーツ施設から大学施設といった中大規模から、個人住宅といった小規模な建築まで、幅広い建築設計の経験を持つ渡邉純矢さん。

「建築は全て人間の身体に結びつく」という考えのもと、人の行動や体験を大切にした建築設計に取り組んでいます。

利用する人の目線に立ち、地域の特性や文化まで深く調査する。そんな丁寧な設計プロセスを大切にする渡邉さんに、建築に込める想いについて伺いました。

【インタビュアー(ライター):赤石/インタビュイー:渡邉さん

1.渡邉純矢さんってどんな人?

赤石:建築士を目指されたきっかけを教えていただけますか?

渡邉さん:高校生の頃、表参道を歩くのが大好きだったんです。ちょうどその頃、様々な建築家が手掛けたブティック建築が話題になっていて、高校生ながら買いもしないブランドものを見ながら建築見学をさせてもらいました。

それぞれのブランドの個性が建築に表現されている。「こんな考え方で、こんな建築ができるんだ」という発見がきっかけで建築の道を進むことにしました。

建築の持つ影響力やそれを実現する技術力に圧倒され、その真相を学びたくなりました。

赤石:組織設計事務所での経験もおありなんですよね?

渡邉さん:はい。11年ほど組織設計事務所で働いていました。大学の施設や市の体育館、アリーナなど、中・大規模な建築物の設計に携わってきました。

今は3人のスタッフと小さな事務所ですが、その経験を活かして小規模な建築から大規模なものまで、幅広く手掛けることができています。

2.Somato一級建築士事務所とは?

2-1.「人」を大切にする建築事務所

赤石:事務所名の「Somato」には、どのような想いが込められているのでしょうか?

渡邉さん:「Somato」はギリシャ語の”Somatos”「身体の」から由来しており、使い手の身体の触感や経験を大切にしながらデザインすることを心がけています。

建築を考える上で、大きい建物も小さい建物も、全て人間の体に結びつくんです。人の行動や体験によって作られるのが建築であり、建築によって人の行動が生まれると考えています。

2-2.お客様と地域の理解から始まる設計

赤石:設計を始める際に、特に大切にされていることはありますか?

渡邉さん:インタビューやリサーチを非常に大切にしています。

お客様の要望を聞くだけでなく、その地域のことを知るために、実際に街を歩いたり、地域の図書館で資料を参照したりします。

一つの区画のための建築であっても、その街の文化や歴史を知ることで、ここにはどんな建築が必要なのかが見えてきます

例えば、大学の施設を設計する際は、その大学の創始者の思想を理解することから始めます。地域に開かれた大学もあれば、独自の発展を遂げてきた大学もある。

それぞれの大学らしさを建築にどう反映させるか、丁寧に考えていきます。

赤石:デザインはどのように決めていくのでしょうか?

渡邉さん:デザインはお客様との対話や、その場所の持つ文脈の中から生まれてきます。

最初から「こういうデザインにしよう」と決めるのではなく、プロセスの中で形づくられていくんです。

オーダーメイドの建築なので、一つひとつのプロジェクトで違う答えが導き出されます。

2-3.バリアフリーリノベーションへの挑戦

赤石:車椅子利用が必要となったリノベーションプロジェクトにも取り組まれたそうですね。

渡邉さん: 60歳のご夫婦のお宅で、奥様が階段から落ちてしまい、突如、車椅子生活を余儀なくされたということでご相談がありました。

赤石:プロジェクトは具体的にどのように進められたのでしょうか?

渡邉さん:まずは、私たちも実際に車椅子に乗って、家のどこが不便なのかを体験しました。

特にトイレや廊下の出入り口など、日常生活での困りごとを一つひとつ確認していきました。

車椅子ユーザーの視点で見ると、住宅は住むための家ではなくなり、ストレスをため込むための凶器になってしまう場合があることを改めて感じました。

元々の建物の構造をいじるのは限界があり、あらかじめユーザーがどんな状態になりえるか想定する必要があるということを実感させていただきました。

このプロジェクトを通じて、バリアフリー設計の難しさと重要性を改めて実感しましたね

3.未来を担うこどもたちのための新しい建築への挑戦

赤石:これから特に力を入れて取り組まれていることはありますか?

渡邉さん未来を担うこどもたちのための建築環境をつくっていきたいと思っています。

木造・木質を使った建築を積極的に活用し、こどもたちや地域の方々が木材に触れてその可能性を体験できる場所を作りたいと思っております。

日本には素晴らしい森林資源があり、木造技術があるため、積極的に利用し、かつ海外にも伝統文化を発信していきたいです。

木育施設としての製材工場の提案も自治体さんへご提案させていただいたこともあり、活動を積み重ねていきたいと思っております。

4.挑戦を悩む人たちへのメッセージ

赤石:挑戦したいけれど、一歩踏み出せない人に向けて、メッセージをお願いできますか?

渡邉さん行動しなかった後悔ほどつらい経験はないと思っています。

挑戦する気持ちをもっているだけでは、何も価値がなく、外に出て初めて価値が現れるものです。

小さなことでもいいので一歩一歩ずつ始めることが重要です。

そして、その過程を必ず見ている人がいて、一所懸命やると必ず応援してくれる人が現れます。

人と会って、対話することの大切さも忘れないでほしいですね。

そこから大きな勇気をもらえたり、新しい知見を得られたりすることがたくさんあります。必ず感謝の気持ちを忘れてはいけないのと、自分でも相手にとって何かできることを探しましょう。

5.まとめ

取材を通じて印象的だったのは、渡邉さんの「人」を中心に考える姿勢です。

建築のプロとして培った技術や知識を持ちながらも、常に使う人の目線に立ち、丁寧な対話を重ねていく。そんな謙虚な姿勢が、多様な建築の可能性を広げているのだと感じました。

「建築は人の体験によって作られ、また人の行動を生み出していく」という渡邉さんの言葉には、建築と人との深い関係性があるという想いが込められています。

これからも、人々の暮らしに寄り添った新しい建築の形を追求し続ける渡邉さんの挑戦から、目が離せません。

公式HP: Somato一級建築士事務所株式会社

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