国内で2人しかいない病気を抱えながらも、毎日楽しく暮らす親子がいます。
今回は、希少染色体異常により様々な合併症を患うこうた君のママを取材しました。
頑張っているママさんと情報共有を行っているInstagramのアカウントは、障害の有無を問わずたくさんの方からフォローされています。
そんなこうた君ママが思う育児や、目指す社会について語っていただきました。ぜひ最後までご覧ください。
目次
1.障害児ママ、こうた君ママって?
こうた君の病気には、具体的な名前がありません。7番染色体の異常が見つかったものの、存在するどの病名にも当てはまりませんでした。
ほとんどの場合、産まれる前に亡くなってしまうからです。
そのため、調べるだけでは情報が全く得られず、苦労した経験も多々あるそうです。
しかし、こうた君ママは、7番染色体について研究する大学教授から直接情報を得たり、病名がないことで認定が難しかった障害者手帳について自治体に掛け合ったりと、こうた君を想ってパワフルに行動をしてきました。
1-1.こうた君ママが多くのママから支持を集める理由
こうた君ママのInstagramの投稿には、いつもたくさんのコメントが届きます。さらに、DMを通してフォロワーさんから直接相談されることもあるそうです。
Instagramの投稿や今回の取材を通して、筆者も感じたことがあります。
それは、こうた君ママの冷静さと想いやりの深さを兼ね備えている人間性です。
その人間性が溢れているからこそ、フォロワーの方達はただ情報を得るだけでなく、こうた君ママの感情が詰まっている生きた情報に触れることができるのです。
障害をネガティブなこととして捉えるのではなく、あくまで育児の一環として、明るく楽しく発信する様子が、たくさんの人から愛されている秘訣なのだと思います。
2.こうたが生まれて良かった
【インタビュアー(ライター):赤石/インタビュイー:こうた君ママ】
赤石:こうた君の生まれた時の様子を教えてください
こうた君ママ:お腹にいる時は病気が分からず、生まれてからもすぐには分からなかったんですよね。
ただミルクを全然飲まないから、上の子2人と何か違うと思っていて、産後2日目に心臓の病気が発覚しました。そこから検査を重ねて、染色体異常を知ることになります。
赤石:よろしければ、その時の心境を教えてください
こうた君ママ:「24時間人工呼吸器が必要かもしれない」と、最初は育児に少し不安を感じてましたが、ショックは全然なかったんです。周りのママさん達はご夫婦で落ち込んだりされる方もいますが、私達は全くありませんでした。
こうたの染色体異常は、本来生まれてこられないケースがほとんどだと聞いていたので、「生まれてきてくれたことが奇跡だね」と夫婦で喜びの方が強かったですね。
私自身あまり落ち込むことがなく、なんでもポジティブに捉えていることが多くて、だからこそ、こうたは私の元に生まれてきてくれたんだと思います。私なら育てられるだろうって。
不安はありませんが、できることは最大限しようと思っています。情報収集をはじめ、こうたのために全力を尽くそうと決めました。
3.何故Instagramでの発信を始めたの?
こうた君ママは、2020年3月にInstagramを開始しました。2022年現在のフォロワー数は1.3万人まで増え、障害児のママだけでなく様々な層の人から注目されています。
包み隠さず育児の日常を発信するこうた君ママが、SNSで発信する想いについて伺いました。
3-1.投稿を始めたきっかけは?
赤石:Instagramを始めたきっかけはありますか?
こうた君ママ:始めたきっかけは、私自身が情報を求めていたからです。同じ病気の人はいないけれど、同じ感情を抱くママさんと繋がりたいと思って始めました。
見るだけではなく、段々とこうたのことを投稿していくうちに、いつしか私が発信側になっていたという感じです。
3-2.投稿を続けてきた周りの反響や葛藤
赤石:実際に反響を受けてどうでしたか?
こうた君ママ:実は、障害児のママさんはフォロワーさんの1割しかいないんです。
ただ単にこうたを可愛い赤ちゃんと見てくれる方も多くいて、コメントの中には「普通学校の教師を目指していたが、こうた君を知り特別支援学校へ就職したいと思った」という声もたくさん頂いています。
こうした人たちに、障害児や障害児のママの想いを知ってもらえるのがとても嬉しく思います。
赤石:発信していく中で、葛藤はありませんでしたか?
こうた君ママ:ありますね。たとえば、自分の子供の方がこうたよりも重度で「こうた君はなんでもできる」と思われる人もいて、直接DMを頂くこともあります。
ただ障害者と一括りにしても、みんな状態が違うので、比べること自体がおかしいと思っていて。
私は障害の有無に関わらず、同じ境遇のママさん達に向けて、少しでも明るくなれるようなきっかけを発信できればと思っています。
4.Instagramを通してみんなに伝えたいこと
赤石:こうた君ママにとって「障害」とはなんでしょう?
こうた君ママ:身体障害や知的障害など、それ自体が問題なのではなく、それらに対する理解がないことが障害だと思っています。
多くの人は、小さい頃から障害者と接することが少ないので、距離をとりがちですが、みんなが障害について知っていれば「障害」は無くなるという考え方です。
こうたは普通の保育園に通っていますが、先生が言わなくても、お友達はこうたのために手伝ってくれていて。このように触れ合える機会がもっと増えればいいなと思います。
赤石:それが、Instagramでの発信につながっているということでしょうか?
こうた君ママ:そうですね。たとえば、こうたの車椅子はベビーカーに見えるのですが、車椅子の機能について投稿したところ、「街で見かけた」「車椅子を意識するようになった」というコメントも頂きました。
きっかけは何でも良いから、少しずつ知ってもらえたら嬉しいです。
5.こうた君ママが願う未来
赤石:これからどんな社会になって欲しいと思いますか?
こうた君ママ:「障害者だからかわいそう」みたいなイメージがありますが、私自身全然そんなことないのにって感じます。
こうたにとって、障害があることが普通です。それをかわいそうって親が思ったら、誰が認めてあげるんだって思っちゃうんですね。
だから、障害がある子供を比較するのではなく、受け入れて認めてあげて欲しいです。
なかには、目に見えない障害で生きづらさを感じている人もいます。その違いを比べるのではなく、障害ごとその人を受け入れられるような社会になればいいなと思います。
6.こうたにはずっと笑って明るく生きていて欲しい
赤石:こうた君の名前の由来はなんですか?
こうた君ママ:こうたは漢字で「航詩」と書きます。
私が新婚旅行で世界一周した時に、いろんな景色を見たんですよ。だから、こうたもいろんな景色を知って、広い世界でも迷うことなく、まっすぐ自分の道を突き進んで欲しいという想いから「航」という字を付けました。
音楽は「詩」をつけることで、より人の心に響くようになります。強い芯を持ちながらも、癒したり勇気づけたりと、人の気持ちを考えられる優しい男になって欲しくて「航詩」と名付けました。
赤石:こうた君に、これからどんな生き方をして欲しいですか?
こうた君ママ:助けてもらえる人になって欲しいと思います。助けてもらわないと生きていけない人ではなく、周りに「協力しよう」と思わせられるような大人になって欲しいですね。
そのためには、こうた自身の人間性がしっかりしていないといけないと思います。
困っていたら助けてあげたいと思わせられる生き方をして欲しいです。
7.最後に
筆者は、障害そのものを受け入れるこうた君ママの姿勢に感動しました。誰かと比べるのではなく、その人ごと包み込んでしまう優しさがあるからこそ、こうた君はいつも笑顔なのだと思います。
最後に、こうた君ママにとって幸せな瞬間を聞くと、全力で楽しそうな笑顔を見せてくれた時なのだと、こうた君と同じ満面の笑みで答えていただきました。
こうた君ママのInstagramでは、そんなこうた君の笑顔と家族の日常を見ることができますので、皆さんもぜひご覧ください。
Instagram:https://www.instagram.com/kota_191108/