「全国に約2万人」と聞いて、どれだけ希少な存在なのか想像がつくでしょうか。
この人数は、全国にいる医療的ケア児の数です。
現在日本の人口は、1億2,485万人(2022年11月時点)。割合にしてみると、約0.016%というとてもマイノリティな存在です。
人工呼吸器や経管栄養などの医療的ケアを日常的に必要とする医療的ケア児の数は、医療の進歩で助かる命が増えたことに伴って増加していると言われています。
それでも、まだまだマイノリティな存在がゆえ、医療的ケア児とその家族が感じる「孤独感」が大きな問題となっています。
参照:人口推計(令和4年(2022年)6月確定値、令和4年(2022年)11月概算値)|総務省統計局
目次
1.医療的ケア児のいる家族が抱える悩みとは?
「子育てに悩んだら、ママ友に相談する。」
そんな普通のことが、医療的ケア児の親にはできません。前述の通り、マイノリティな存在のため、周りに同じような子育てをしている人が見つからないのです。
その数の少なさゆえに、保健師、子育て支援センターなど、地域の子育て支援を担うプロでさえも接する機会が少なく、その悩みを理解して支援することが難しいようです。
では、孤独を抱えた医療的ケア児の親が、悩みを共有できる場はあるのでしょうか。
実際のオフラインの世界で見つけるのは難しくても、オンライン上にはあります。
今回は、そのなかから2つのコミュニティをご紹介しましょう。
2.似た悩みを持つ家族同士が繋がるコミュニティの紹介!
2-1.子育て中のパパママが参加する「ツイオフ」
まずは、気軽に覗けて参加もできるSNSからご紹介します。
Twitter上では、「難病児ツイオフ」という交流の場が、年に数回開催されています。ツイオフとは「Twitterオフ会」の略称で、通常のオフ会と違いオフラインで会うことはありません。Twitter上だけで会話を行います。
アカウントさえ持っていれば誰でも匿名で手軽に発言できる点や、「閲覧のみ・会話に参加する」など、自分なりのスタイルで関われる点が大きなメリットですね。
難病児、障害児や医療的ケア児の場合、周りに同じような子供を持った家族が少ないので、情報収集や交流を求めてSNSを活用する親御さんが多くいます。
その方たちに、共通のハッシュタグを使って交流の場を提供するのが「難病児ツイオフ」です。
2022年9月に開催された際には、300人以上もの方が参加されたとのこと。
参加方法は共通のハッシュタグをつけてツイートするだけです。ハッシュタグは目的に合わせていくつか用意されています。
たとえば、仲間を見つけたいときや、交流がしたい時には「#難病児ツイオフ自己紹介」をつけて、困っていることや疑問に思うことを、障害児・難病児ママパパに聞きたい時は「#難病児ツイオフ質問」をつけてツイートをします。
決められた期間内に、こうしたハッシュタグつきでツイートすることで仲間を見つけ、そこからリプライ、DMなどをして交流を楽しむことができるのです。
運営されているのは団体や法人ではなく、一人の難病児ママ。まるでママ友とお話ししているように、同じような境遇のパパママたちと交流できる貴重な機会を、ボランティアで提供してくださっています。
個人が運営されているため、今後必ずしも継続されるとは限りません。ご興味のある方は開催されている期間に、ぜひ参加をしてみてください。
ハッシュタグ検索をするとこれまでの開催時の会話も見られるので、それらを見るだけでもとても参考になるはずです。
2-2.食事支援が必要な子供がいる家族のためのコミュニティ「スナック都ろ美」
特定の障害にフォーカスしたコミュニティもあります。
そのひとつである「スナック都ろ美」は、食事をうまく食べられない、飲み込めないといった嚥下障害のある子供を持つ親たちが作ったオンラインコミュニティです。
ホームページを覗いてみると、少しレトロな雰囲気を感じるデザインに、スナックらしく「あら、いらっしゃい」の文字が出迎えてくれます。
ページではママたちが写真付きで紹介されていて、それらを見るだけでもとっても親しみを感じることができます。
申し込みをして「常連」になれば、ざっくばらんにお話しする場やセミナーなどのzoomイベントに参加できるそうです。
仮想だからこそ、実際にスナックの扉を開けるよりも気軽に訪れることができそうですね。
有益な情報もたくさん掲載されていて、嚥下障害を持つ親御さんがおすすめする市販の食品紹介は必見です。食事のレシピ紹介も近日公開予定とのことでした。
3.医療的ケア児とその家族が生きやすい社会にするためには?
オンラインコミュニティは、ここで紹介したもの以外にもたくさんあります。
法人や団体が行っているものをはじめ、個人がボランティアでやっているものも少なくありません。前述のツイオフがその例です。
個人の場合、運営者の事情や何らかの理由で開催・継続が難しいこともあります。
もしあなたが出会ったコミュニティが個人運営だった場合、継続のためにもぜひ周りに広める活動をしてみてください。Twitterでリツイートをしたり、自分のSNSで紹介したり、お友達に紹介したり、自分ができる手軽な方法でよいのです。
参加し、広めて、継続の力になる。
一人ひとりの小さな行動から、社会により浸透して輪が広がることによって、少しずつ医療的ケア児の認知度が上がるかもしれません。
そこから問題が認識されやすくなれば、医療的ケア児やその家族が生きやすい社会作りにも繋がるのではないでしょうか。
他にも2021年9月に「医療的ケア児支援法」という医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律が施行されましたが、こう言った法律の観点からも生きやすい社会作りが必要だと言えます。医療的ケア児支援法の詳細はこちらの記事から確認できます。
4.最後に
困ったことがあったら「誰かに話したい」「相談したい」と思うのは当然の欲求だと思います。マイノリティな存在でもそれは同じ。むしろ身近に同じ境遇の人がいないからこそ、人との繋がりや情報をより切実に望むこともあるかもしれません。
難病児・障害児の親の会がある場合もありますが、地域によっては存在しないこともありますし、すでに構築されたコミュニティに入るのは勇気がいるときもありますよね。
「私が参加して大丈夫なのかな?」「人見知りだから会話ができるか心配‥」など人付き合いに不安を覚える方も、オンラインで、匿名なら、ハードルが下がるのではないでしょうか?
少しでも興味をお持ちになったら、まずは覗いてみることから始めてみてください。「悩んでるのは自分だけじゃない」という気持ちになれるはずです。