ヘルプマークとは、外見からは判断しづらい障害や疾患を抱えている人が、周囲の人に支援や配慮を必要としていることを認知してもらうためのマークです。
2012年10月より、都営地下鉄大江戸線でヘルプマークの配布や優先席へのステッカー表示等が開始。その後、都営地下鉄や都営バス、都立病院などにも広がり、現在では全都道府県で導入されています。
今回は、ヘルプマークの概要についてや活用例、配布場所について解説していきます。
また、ヘルプマークをつけている人への支援事例や、ヘルプマーク以外のマークについても紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1.ヘルプマークとは?
ヘルプマークとは、東京都福祉保健局が2012年に作成・配布を開始したマークです。
外見からでは分からない疾患・障害を持つ人が配慮や支援を必要としていることを周囲に知らせることができます。
その後全国の自治体でも普及し始め、2022年3月末時点では、これまでに約465,000個のヘルプマークが配布されました。
ヘルプマークは「ヘルプ=普通の状態ではない」ことを示す赤い背景に、「✚」と「♥」という、誰もが知っているシンボルを組み合わせて作られています。援助や手助けが必要であるという意図があり、直感的にアクションを起こせるようなデザインです。
ヘルプマークをつけることにより、周囲の人は公共交通機関で優先席を譲りやすくなったり、声をかけやすくなったり、困っていたら手助けをしやすくすることができます。
2.どんな人がつけている?ヘルプマークの活用方法は?
東京都福祉保健局によると、ヘルプマークの対象となる疾患や障害の基準は次の通りです。
義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、妊娠初期の方など、援助や配慮を必要としている方
引用元:ヘルプマーク|東京都福祉保健局
ヘルプマークには、対象となる疾患や障害の基準は特に設けられていません。
つまり、外見から分からない疾患や障害を抱えていて、援助や配慮が必要であれば誰でも使用できます。
ただ、これだけの情報だと広義的で分かりづらいので、ヘルプマークの対象となる例を挙げてみましょう。
・義足や人工関節を使用している方
・内部障害のある方(心臓機能障害、免疫機能障害、肝臓機能障害など)
・妊娠初期の方
・知的障害のある方
・精神疾患のある方
・発達障害のある方
ごく一部の例ですが、上記のように見た目だけでは判断しづらいような疾患や障害のある方がヘルプマークの対象者です。
これらの疾患や障害を持っている人が、ヘルプマークを活用することにより電車で優先席に座りやすくなったり、困っている時に声をかけてもらいやすくなったりする効果があります。
ヘルプマークは、ストラップ型になっているのでバックやリュックなど周囲の人の目につきやすいところにつけるのがポイントです。
また、ヘルプマーク付属のシールに支援内容や必要事項を記入して裏面に貼ることで、より周囲の人がどのように手助けすれば良いのかを伝えられるでしょう。
裏面に記入する項目は、名前・疾患名・緊急連絡先・その他してほしいことなど自分に合った支援が受けられるような内容にしましょう。
3.ヘルプマークの配布場所
ヘルプマークの配布場所は、各自治体で異なりますが以下のような場所で配布されています。
・各都道府県・市区町村の窓口(福祉課など)
・保健センター・保健所
・障害者支援施設
・市民センター
・都営地下鉄・バス(東京都のみ)
各都道府県の詳しい配布場所については、以下のサイトから確認できます。
一部の自治体では郵送での配布を受け付けているので、配布場所に行けない人は郵送できるかについても問い合わせてみましょう。
また、郵送が難しいといった場合にはヘルプマークを自作することも可能です。
自作方法は、東京都福祉保健局ホームページ内の「ヘルプマーク作成・活用ガイドライン」に詳しくまとめられていますので、確認してみましょう。
参照:ヘルプマーク作成・活用ガイドライン|東京都福祉保健局障害者施策推進部計画課
4.ヘルプマークをつけている人を見かけたら
ヘルプマークを見かけたら、以下のような支援や配慮を行いましょう。
・電車・バスの中で、席を譲る
・駅や商業施設等で、声をかけるなどの配慮
・災害時は、安全に避難するための支援
電車やバスなどの公共交通機関では、席を譲るための声かけをしましょう。
外見から分からなくても長時間吊り革につかまったり、同じ姿勢で立ち続けたりすることが困難な方もいます。
また、駅や商業施設など人の多い場所でヘルプマークを身につけている人が困っている様子であれば、優しく声がけをしてあげましょう。
そして、災害時には聴覚障害や身体障害などで素早く避難できない方もいます。災害時にヘルプマークを見かけた際には、安全に避難できるようにサポートしてあげましょう。
5.ヘルプマークをつけている人への支援事例3選
5-1.精神疾患を抱える人の事例
電車の運転が見合わせになってしまい、駅が混雑して立ち往生しているときに近くにいた女性に声をかけてもらって、座れる店舗まで案内してもらえたそうです。
この方は、イレギュラーな事態に対応できずに困っているときに「大丈夫ですか?」と優しく声をかけてもらえたことにホッとしたと語っています。
参照:ヘルプマーク・ヘルプカードエピソード集|東京都保健福祉局
5-2.難病を抱えている人の事例
電車に乗って立っている状態でも辛い状況の時に、ヘルプマークをつけていると周囲の人が気がついて席を譲ってくれるのはとてもありがたいそうです。また、自分の体調がいい時はヘルプマークを身につけている人に席を譲ることで、思いやりの心も持てたと言います。
参照:ヘルプマーク・ヘルプカードエピソード集|東京都保健福祉局
5-3.カテーテル(透析用)をしている人の事例
通勤ラッシュ時に透析用のカテーテルが外れてしまったことをきっかけにヘルプマークを身につけ始めた方は、バッグにつけるようになってからは快く席を譲ってもらうことが多くなったそうです。
カテーテルをつけていることは見た目では分からないため、ヘルプマークはとても役立っていると語っています。
参照:ヘルプマーク・ヘルプカードエピソード集|東京都保健福祉局
このように、ヘルプマークを身につけることで、さまざまな障害や疾患を抱えている人が支援を受けられる事例がたくさんあります。
また、自分が支援されることで他のヘルプマーク所有者にもしてあげたいという思いやりの輪が広がりやすいことが分かりました。
6.ヘルプマーク以外のマーク3選
6-1.マタニティマーク
ヘルプマーク以外にも、サポートが必要なマークが存在します。例えば、マタニティマークは妊娠または、出産間もない産婦であることを周りの人に知ってもらい配慮してもらうためのマークです。
特に妊娠初期は、つわりや体調の変化があっても、周囲の人は外見から妊娠中であると判断することが難しいでしょう。
また、タバコの煙が気になる・電車で席に座れないなどの悩みがあります。
マタニティマークを身につけることで、喫煙を控えてもらったり席を譲ってもらったりするなど配慮を受けやすくなります。
6-2.ハート・プラスマーク
ハート・プラスマークとは、特定非営利活動法人ハート・プラスの会が全国的に普及活動を行っているマークです。
外見では分からない内部障害者・内臓疾患者の存在を視覚的に示し、理解を深めてもらうために作成されました。
内部疾患・内臓疾患の例としては、以下のようなものが挙げられます。
・心臓機能
・腎臓機能
・呼吸器機能
・ぼうこう・直腸の機能
・小腸機能
・HIVによる免疫機能
・肝臓機能の障害
・その他身体障害者手帳の交付を受けられない内臓疾患
参照:「ハート・プラスマーク」利用方法及びデザイン|特定非営利活動法人ハート・プラスの会
6-3.サポートハートマーク
サポートハートマークは、手助けが可能な「支援者」が身につけることにより、支援が必要な障害者が助けを求めやすくするために考案されました。
このマークを身につけることにより「お手伝いします」「サポートできます」という意思表示になります。
ヘルプマークだけでなく、こうした支援者側のマークが広まることで助けを必要とする障害者も声をあげやすくなるでしょう。
参照:サポートハートマーク|サポートハートプロジェクト運営チーム
7.最後に
目に見えない障害や疾患を周囲の人に伝えるのは、とても難しいことです。
しかし、ヘルプマークによって障害が可視化されることにより、周囲の人に配慮や支援を受けることができます。
ヘルプマークを街中で見つけた際には、ぜひ席を譲ったり優しい言葉をかけてあげたりしてください。
この記事を読んで参考になったという方は、ぜひご家族や友人にもヘルプマークの存在を伝えて思いやりの輪を広げていきましょう!