障害者の性に関する情報はまだまだ少なく、誰にも相談できずに1人で抱え込んでしまう方もいるのではないでしょうか?
今回は、一般社団法人輝き製作所代表の小西理恵さんを取材させていただきました。
小西さんは、障害者の性の問題に真正面から向き合い、障害当事者やそのご家族や支援者が、性の悩みを気軽に相談できる環境作りに取り組まれています。
障害者専門風俗店で働かれていたことから、現在も障害者専門風俗店として障害当事者の元へ赴きサービスを提供されています。
心や身体に障害のある方々の性の悩みに寄り添い続けることができるのか?
障害者の性に誰よりも向き合っている小西さんが描く未来について迫りました。
目次
1.一般社団法人輝き製作所ってなに?
一般社団法人輝き製作所は、心からの支えを提供しています。「障がいと性をもっと明るく」とのコンセプトのもと、障害当事者やご家族に寄り添った性の悩みに関する事業を展開しています。
カウンセリング事業では、障害者が利用できる性サービスの提案や性の介助に関する支援、マスターベーションに関する悩みなど、障害の種類に関わらず、幅広い困りごとに寄り添います。障害当事者の抱える問題に真摯に向き合い、解決への道を見つけるお手伝いをしています。
そして、輝き製作所の活動はご家族や支援者向けにも力を発揮しています。講演活動を通じて、障害と性に関する正しい知識や情報を提供し、福祉従事者としても大きな影響力を持っています。
また、性教育の実施にも力を入れており、性サービスの提供者としての経験を活かして、障害者やご家族にとって有益な情報を発信しています。
私たちは、一般社団法人輝き製作所の取り組みを通じて、障害のある人々が性に関する悩みから解放され、障害者やご家族の心の支えとなり、より良い人間関係を築くための礎となるでしょう。
参照: 一般社団法人輝き製作所
1-1.障害者の性の悩みに寄り添う事業を展開
【インタビュアー(ライター):赤石/インタビュイー:小西さん】
赤石:カウンセリングでは、どういった相談が多いですか。
小西さん:本当に人それぞれですね。ご家族に対して理解が得られにくいという悩みや、必要なサービスにお繋ぎするケースもありますし、ときにはただただお話をずっと聞くこともあります。
中々周りの人には話しにくい悩みでも、ちょっと距離が離れてる私だからこそ、打ち明けていただけることもあるようです。
相談件数は、メールも含めると月に30件ほど。北海道から沖縄まで、全国の方からご連絡いただいています。でも、それだけ相談窓口が少なく、近くで相談できる環境がないのだと改めて感じています。
赤石:相談を受ける中で、大切にしていることはありますか?
小西さん:やはり相談者さんのニーズや課題をしっかり聞くことは意識しています。その中で、どうやって補っていけるかを一緒に考える必要があると思っています。
また、私が「こうするべき」とは言わないようにしていますね。やはり障害当事者の方とそのご家族でも、ニーズは異なるため、お互いのお話を聞き、お互いが納得できるよう、私が橋渡し役になれればと思っています。
1-2.障害者の性について語りあえる「輝きのすてっぷ」プロジェクトとは
赤石:「輝きのすてっぷ」とはどんなプロジェクトですか?
小西さん:岡山を中心に活動されている支援者さんが性の活動を始めることとなり、その熱意や想いに共感したのがプロジェクトスタートのきっかけです。
プロジェクトの内容は大きく3つあります。
1つは障害者の性の実態とニーズを調査し、広く知ってもらうこと。2つ目は性に関するイベントを実施し、気軽に相談できる環境作り。3つ目は障害福祉に関するポータルサイトを作り、相談窓口を作成することです。
クラウドファンディングにも挑戦し、ご支援頂いた資金をもとに実現していく予定です。
赤石:情報ポータルサイトでどんなコンテンツを発信していきたいと考えていますか?
小西さん:もちろん性にまつわる情報は発信していきたいです。加えて、ユーザーの地域で行われている福祉活動についても発信できればと思います。
また身体障害の方だけでなく、知的障害や精神障害の方にも使いやすいサイトにするため、現在メンバーと共にコンテンツを考えているところです。
今回のプロジェクトは岡山が中心ですが、輝きのすてっぷをモデルケースとして、全国にこうした活動が広まると嬉しいですね。
2.小西理恵さんってどんな人?
子供の頃は、音楽が好きでエレクトーンを演奏していたという小西さん。
親代わりだった祖母の介護をきっかけに、福祉を意識するようになったといいます。
なぜ、障害者の性に関心を持ったのでしょうか。ここからは小西さんのルーツに迫っていきます。
2-1.障害者専門の風俗嬢でもある小西理恵さんの過去に迫る
赤石:夜の世界に入ったきっかけを教えてください。
小西さん:最初は本当に軽い気持ちで始めました。抵抗はなかったのですが、サービスや接客をわかっていなかったので、言い方は良くないですが、適当に済ませてお客さんを大切にしていなかったですね。
真剣に取り組むようになったのは2店舗目のときです。すごく教育に厳しいお店で、人と関わるということを1から教えてもらい、初めて本気で夜の仕事に向き合いました。
今考えると、しんどかったこともたくさんありましたが、その分お客さんから喜んでもらえることや、報酬も大きかったので、親代わりで育ててくれた祖母に金銭的援助もできていました。
2-2.祖母の死で感じた想い
赤石:介護を意識したきっかけについて教えてください。
小西さん:おばあちゃんが認知症とパーキンソン病を発症して、施設に入所したときに、初めて介護という仕事を目の前で見ることになりました。
私が実際におばあちゃんの介護をしたのは、亡くなるまでの少しの間でしたが、支援者さんにたくさん助けていただいて、存在の大きさを改めて感じたんですよね。
こうした支援者さんに出会えるかどうかで、その家族の環境がかなり変わると思ったのです。
おばあちゃんが亡くなって、これからの人生を考えた時、私には介護しかないと思い、福祉の専門学校に通いました。
2-3.母親が障害のある息子の性欲を処理する現実を知った
赤石:なぜ障害者専門風俗店で働こうと思ったのですか?
小西さん:一緒に学んでいた友達に誘われてグループホームに見学に行った際、「毎日が楽しくない」と訴える利用者さんに出会いました。
障害があってもみんなと同じように、男女の遊びを経験できないのかなと思い調べてみると、障害者専門の風俗店の存在を知りました。
これまで障害当事者さんと関わる機会はなかったのですが、障害者の性の現状を知りたいと思い、介護士の仕事と共に障害者専門の風俗嬢として働き始めたんです。
「自分みたいな人を相手にしてくれて、ありがとう」とお客さんに言われることもあり、こうした経験をできる人がとても少ないと感じましたね。またお客さんは自分で連絡ができる方ばかりだったので、自分で調べることが難しい人はどうするんだろうと考え始めました。
赤石:それが起業のきっかけなのでしょうか?
小西さん:それもあります。私が障害者の性に関する活動を始めようと思い、支援者さんとコンタクトを取っていたとき、現実にあった悲しいエピソードを聞きました。
知的障害のある息子さんの性の相手をお母さんがされていたのです。息子さんが犯罪を犯さないようにと、お母さん自らが相手となって、息子さんの子供を妊娠するというケースがあったそうです。
衝撃でした。なんでお母さんだけで考えないといけないんだろうって。
そのお母さんは本当に誰にも相談できない環境だったとのことで、今現在も相談できないお母さんがどれくらいいるんだろうと考えた瞬間、活動を行おうとより強く決心しました。
3.小西理恵さんが輝き製作所の活動を通して伝えたいこと
赤石:輝き製作所の活動を通して、伝えたいことはありますか?
小西さん:ご家族に対しては、ご家族だけで抱えて頑張らなくてもいいと伝えたいです。思っていることを我慢しないで、周りの人の力を借りて良いと思います。私たちもサポートさせていただきますので、ぜひ相談していただけたらと思います。
当事者の方に対しては、どんな風に生きたいかという自分の気持ちをもっと正直に言ってもいいと思います。
私たちの活動もコツコツ続けて、少しづつ知っていただける機会も増えているので、障害を理由に諦めることを無くしていきたいですし、もっと当事者さん自身が自由に生き方を選べるようになったらいいなと思います。
4.「性を今よりも身近に」人として当たり前の想いを支えていける社会
赤石:これから描いていきたい未来について教えてください。
小西さん:性に関する知識や情報がなくて困ってらっしゃる方がたくさんいます。そのため、小さな頃から性を当たり前に学べるようになったら良いなと思っています。
性教育を踏まえた上で大人になり社会に出られるよう、今後は性教育に関する発信活動にさらに力を入れていきたいと考えています。性について、一緒に学んで一緒に考える輪がもっと広がると嬉しいですね。
そうすることで、障害者の性についても明るく話せる世の中になると思います。
「この人には難しい」とか「この人には必要ない」と周りが決めるのではなく、ご本人が生き方を自由に選べる、人としての当たり前の想いを支えていける社会をみなさんと一緒に作っていきます。
5.「障害のある○○さん」と捉えることのない社会の実現を支援したい
小西さんとしては、障害があることは一つの特性であって、その方の一部分であると語っています。
「“障害がある○○さん”ではなく、“○○さんにはこういう一面もあるんだ”と捉えていただきたい」と発言されており、強みに変えていける活動を進めているのです。
「障害者に性欲はあるんですか」と驚かれることがあると、小西さんはいいます。それだけ障害者のイメージから性がかけ離れているのだと思います。
ヨーロッパでは、「排泄も射精も同じ、介護者が介助するもの」という考え方があります。
一方で、日本では障害者の方々に対する性欲についての理解が、まだ一部では十分でないことが、小西さんのお話からも伺えます。しかし、障害者も当然、同じ人間であり、性欲は自然なことです。
小西さんが行っている活動は、障害者の方だけでなく、そのご家族にも希望になると感じています。
日常生活において、性に関する悩みを抱える障害者・障害児たちに対して、親御さんがどう対処すべきかわからない場合も多々あるでしょう。
インタビューの中のエピソードのように、性の悩みを相談できない方は多くいらっしゃるのではないでしょうか?
そんな時は1人で悩まず、ぜひ輝き製作所を訪れていただきたいと思います。ぜひ公式サイト・Twitterもご覧ください。性に関する悩みも、仲間や専門家と共に、解決に近づく一歩に繋がると考えています。
公式HP:https://www.kagayakiseisakusho.com/
Twitter:https://twitter.com/kagayaki_fac
またAyumiでは、障害者が安心して利用できる風俗情報も発信しています。以下の記事もぜひご覧ください。