障害と向き合う挑戦者 【障害者の就労課題を解決するため特別支援学校の教師に】キャリア形成支援PJ TUCURU 石井代表が創る好きや得意を活かす社会とは?

【障害者の就労課題を解決するため特別支援学校の教師に】キャリア形成支援PJ TUCURU 石井代表が創る好きや得意を活かす社会とは?

キャリア形成支援PJ TUCURU 石井代表とメンバー3人

障害者の就労課題に対して、教育から向き合う方がいます。

今回はキャリア形成支援PJ TUCURU代表の石井恒平さんを取材させていただきました。

現役の特別支援学校の先生でもある石井さん。障害者雇用を促進するために設立された特例子会社で管理者として働かれていた時に気づいた就労課題を解決するため、教師になったとのこと。

また、就労支援事業所と障害者雇用をする企業、そして教育機関の架け橋となれるようTUCURUを立ち上げられたそうです。

TUCURUと教育を通して創る石井さんの未来に迫りました。

1.キャリア形成支援プロジェクトTUCURUってなに?

TUCURUでは、岡山県を中心にメンバーの好きを活かした居場所「つなぎBA」と、就労移行支援事業所の紹介や教育・福祉現場に向けた情報を発信する「想い場メディア」を運営しています。

石井さんは障害者雇用に携わる中で、教育機関と就労支援事業所、そして雇用企業がもっと密接に連携することが必要と思い、それら3つを繋げる環境としてTUCURUを立ち上げたとのこと。

ビジョンである「多様性のある人たちが活躍できる社会」を必ず創るという思いを込めてTUCURUと名付けたそうです。

参照:つなぎBA 〜想い場メディア〜|キャリア形成支援PJ TUCURU


1-1.多様性のある人たちが活躍できる社会

【インタビュアー(ライター):赤石/インタビュイー:石井さん

赤石:多様性のある人たちが活躍できる社会とは、具体的にどんな社会ですか?

石井さん:僕の活動は障害者に限定していません。

障害の有無に関わらず、様々な背景を持った人が自分の好きなことや得意なことで、自分の存在意義を見出せるような社会になってほしいと思っています。

好きや得意を活かせる居場所が必要だと思っていて、こうしたストレスが少ない環境を多くの人が選択できるような社会を目指しています。

赤石:石井さんにとって居場所とは、どういったものですか?

石井さん:やっぱり相談できる場所や安心できる場所も、居場所の役目の一つかなと思います。

加えて僕が目指しているのは、そこに行くと自分の得意なことが誰かの役に立っていると実感でき、社会の構成員としてみんなが受け入れてくれるような居場所作りです。

1-2.一人ひとりの好きを活かす「つなぎBA」とは

キャリア形成支援PJ TUCURU 石井代表と友人たち

赤石:「つなぎBA」とはどういった活動でしょうか?

石井さん:障害を持つ当事者と、支援者、学校や福祉事業所などの関係機関は、お互いに連携しているものの利害関係が原因で、本音が言い合えない関係にあると感じています。

つなぎBAは、利害関係が全くない第3の場所を提供することで、それぞれが歩み寄れるような関係を目指しています。

その居場所として、当事者自らがプロジェクトを起こして、やりたいという気持ちを叶えられるようなサポートをしています。

赤石:プロジェクトはどのように生まれるのでしょうか?

石井さん:様々なパターンがあるのですが、一番多いのは雑談がきっかけです。

毎週金曜日に行っているオンライン雑談会の中で、参加者が「こんなことに興味がある」と言ったことに対し、一緒にやりたいと思った仲間がジョインして始まっていくことが多いです。

実際、特別支援学校出身のメンバーは、プロジェクトをリーダとして運営することで、最初は悩むことも多くありましたが、ITスキルを身につけたり、相手の視点で考えられるようになったりと、想像以上に大きな変化が現れています。

赤石:プロジェクトを進める際に大切にしていることはありますか?

石井さん:必ず「無理はしないでほしい」とプロジェクトメンバーに伝えています。

自分たちの生活の質を上げることが一番の目的です。使命感でやるのではなく、自分の心の中がワクワクして思わず動いちゃうような感覚で、プロジェクトを進めてほしいですね。

2.石井恒平さんってどんな人?

キャリア形成支援PJ TUCURU 石井代表のプレゼンの様子

活発でサッカー少年だったという石井さん。

中学生の時にサザンオールスターズに憧れ、以来ドラムに熱中していたそうです。大学卒業後の進路では、教師かミュージシャンになるか悩み抜いた結果、10年後に後悔しないためにとドラマーとして28歳まで活動していたとのこと。

ここからは、そんな石井さんのルーツに迫っていきます。

2-1.ミュージシャンから特例子会社へ転職

赤石:なぜミュージシャンを辞めたのですか?

石井さん:そもそもドラムをやっていた理由は、関わった人や子供達に夢を与えたいという思いが強くありました。

ただ実際に活動をしていても、具体的に誰かを幸せにしているっていう感覚がなかったんですよね。理想だけを追い求めるのではなく、社会の中で役に立てるポジションになりたいと思うようになったんですよね。

大学で特別支援学校の免許をとっていたこともあり、障害者の雇用を広げていきたいと考え、障害者雇用を促進をしている特例子会社へ就職しました。

赤石:障害に興味を持たれたきっかけを教えてください。

石井さん:教育実習で支援学校に行った時に初めて障害を持った子供たちと関わりました。

その時に頭から血を流した子供がいたんですよ。その子は自傷行為があって、頭を床や壁にぶつけて意思を伝えていました。

その出会いがかなり僕にとってはかなり衝撃的で、この子たちは将来どうなっていくんだろうという疑問がずっとあったんです。

ドラムの仕事でも特別支援学校に訪問することもあったのですが、関わっていく中でその疑問は日に日に大きくなりました。実際に調べてみると就職先がないことや、かなりの低賃金という社会的な問題を初めて知ったんです。

何か僕にできることはないか。そう思い、障害者雇用を専門にしている特例子会社へ、初めての就職活動をしました。

2-2.障害者雇用の最前線で気づいたこと

赤石:特例子会社では、どのような障害を持たれている方が多かったですか?

石井さん:ほとんどは重度身体障害の方が多く、在宅で勤務をしていました。

初めて障害を持つ方と働いてみて、すごく自己肯定感が低い方が多いと感じたんですよ。

でもこれって障害の有無は関係ないなと思ったんです。確かに障害によってできないことはあっても、できることに目を向けて、自分が何をできるのか前向きに捉えることが苦手な社員が多かったですね。

赤石:なぜ特別支援学校の教師に転職されたのですか?

石井さん:社員の自己肯定感の低さに疑問を持ち、ヒアリングをしていくと学生時代に挑戦をさせてもらえなかったことが大きいと気づきました。

学生時代に教師から「障害があるから無理しないでいいよ」と、教師側の主観で判断しているケースが多かったんです。

対照的に、自分を持って主体的に学生生活を送ってきた方は、すごく明るくて前向きに仕事に取り組んでいました。

そこで、教育現場に障害者の就労を広げるための課題があると考えました。僕が培った特例子会社の経験を学校に持っていくことで、障害を持つ方と社会の接続がもっと上手くできると思い、教師へ転職しました。

2-3.特別支援学校の教師として大切にしている想い

赤石:教師として日々学生と接する中で、意識していることはありますか?

石井さん答えを教えるのではなく、気づいてもらうことを特に意識しています。指示をするのではなく、生徒自身で考えられるよう投げかけながら授業をしています。

加えて、つなぎBAと同じく、思わずやりたいと思えるような環境を作って、生徒の中にある好奇心を育てることを意識しています。

赤石:やりたいと思える環境は、授業の中で具体的にどう実践されているのでしょうか?

石井さん:僕は知的障害や発達障害の生徒の授業をしています。

生徒の中で、日々好きでやっていることがあるんですよ。例えば1人の生徒はエレベーターが大好きで、扉が閉まる瞬間をYouTubeでよく見ています。

その生徒に対しては、教材の中にエレベーターのイラストを混ぜてみるなど、生徒の興味関心を捉えて、授業に活かすことは常に行なっていますね。

3.好きや得意を仲間と共に発揮できる未来とは

キャリア形成支援PJ TUCURU 石井代表とメンバーたち

赤石:石井さんが今後創っていきたい社会について教えてください。

石井さん:つなぎBAとして、自分の好きなことや興味のあることを形にして、好きなことで仲間と繋がることができる場所を増やしていきたいです。

具体的には2025年を目処に全国に拠点を作っていきたいと考えています。最終的には自治体とも連携して運営ができればと思っています。

オンラインも最大限に活用して、岡山にいながら北海道や東京の仲間と、お互いに好きなことでプロジェクトが起こせると最高ですね。

赤石:最後に、挑戦へ戸惑っている方に対してメッセージをお願いします。

石井さん:一歩踏み出せないという方がいれば、無理をしなくて良いと思っています。

いつか必ず自分のタイミングで動いてみようという感覚が生まれます。その時に、インターネットで調べたり、コミュニティに少し参加したり、自分のペースで進めていってもらえると嬉しいです。

無理に焦らず自分の感覚を大切にしてほしいですね。

4.まとめ

石井さんは、ワクワク感を常に大切にされています

苦手な事に無理に挑戦しなくても良い。自分の強みや好きという感情を大切に、できることを前向きに捉え、仲間と共に成長し支え合える世界、それが「つなぎBA」なのです。

就労支援に興味がある当事者やご家族など、興味を持たれた方は、ホームページからぜひお問い合わせください。あなたの好きや得意を活かせる居場所がきっと見つかります。

公式HP:https://sites.google.com/view/tunagiba/
Twitter:https://twitter.com/CareerTucuru

今回は当事者向けのコミュニティを運営している石井さんを紹介しました。Ayumiでは、医療的ケア児の家族のためのコミュニティも紹介しています。気になった方はぜひこちらもご覧ください。

関連記事:『【医療的ケア児のいる家族必見!】オススメする家族同士の繋がりを生むコミュニティ』

Facebook
Twitter
LinkedIn

シェアお願いします( ´ ▽ ` )

▼おすすめ記事

この記事のライター

運営にご協力いただいている企業様