障害児の子育てには、お金がかかることが多いですよね。
たとえば、おむつの費用。健常児であればだんだんトイレを使えるようになりますが、障害があると「排泄の意思表示ができない」「自力でトイレまで行けない」などの理由で、いくつになってもおむつが必要な子も多いです。
それから、福祉機器の購入費用。車椅子、バギー、カーシートなどが必要な場合、購入費は数万円〜数十万円にのぼることも。
洋服も市販品では脱ぎ着がしづらいこともあるため、前開きなどの加工が必要だったり、専用のものを購入しなくてはならなかったり、といったケースもあります。
スペシャルニーズに合わせた用具や商品は量産できない分、高くつくことが多いです。受注生産であれば、さらに高くなります。
くわえて、障害児家庭が共働きするハードルは未だ高く、親どちらか一人の収入で家計をやりくりしなければならないことも多いため、苦しい財政事情になることもあるでしょう。
そんな課題を抱える障害児家庭が受けられるお金の支援制度には、どんなものがあるのでしょうか。
目次
1.障害児家族が受けられるお金の支援制度とは?
障害児家庭が受けられるお金の支援は、大きく分けて3つあります。
1.お金がもらえるもの(手当)
2.必要な費用の一部を補助してくれるもの(助成)
3.払った税金が返ってきたり、支払いが免除されたりするもの(税制優遇)
それぞれ、具体的に紹介していきます。
2.手当の申請をして支給を受けよう
2-1.手当の種類と支給条件・申請方法
まずは「もらえるお金」(手当)についてです。
2-1-1.特別児童扶養手当
「特別児童扶養手当」は、障害児の養育者に支給される手当です。
20歳未満の、精神もしくは身体に障害がある子どもの養育者に支給されます。子どもへの手当ではなく養育者への手当ですので、入金される口座も養育者の口座となります。
障害の程度によって金額が異なり、1級は53,700円、2級は35,760円が支給月額です。毎年4月、8月、12月の3回、前月分までの合計額が支給されます。(2023年4月現在)
申請は、必要書類をそろえてお住まいの市町村窓口に提出して行います。必要書類は自治体によって異なるようです。身体障害者手帳や療育手帳を持っていなくても医師の診断書で認定される場合もあるようなので、病気や障害があると分かった時点で各自治体の窓口に相談されるといいと思います。
審査基準をホームページに掲載している自治体もあるため、お住まいの自治体の審査基準について、一度検索してみてもいいかもしれません。
参照:特別児童扶養手当 障がい程度認定基準(特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令別表第3)|大阪府
2-1-2.障害児福祉手当
「障害児福祉手当」は、障害があり、在宅で介護を受けている20歳未満の児童に支給される手当です。
「在宅」が条件のため、施設に入るなど自宅で介護されない場合は対象外となります。
こちらは障害児本人の口座に入金となりますので、本人名義の口座が必要です。
支給月額は一律15,220円。毎年2月、5月、8月、11月に、前月までの合計額が支給されます。(2023年4月現在)
申請はお住まいの市町村窓口に。こちらは所定の様式での診断書が必要な自治体が多いようです。
参照:障害児福祉手当|横浜市
3.医療費助成制度の利用方法と注意点
つづいて、生活に必要な費用の一部を補助してくれる「助成制度」についてです。
こちらは自治体によってかなりばらつきがありますので、一例のみご紹介します。例を参考に、お住まいの自治体ではどんな制度があるのか、必ず直接ご確認くださいね。
まずは「日常生活用具の給付」という制度。おむつや医療機器など、日常生活に必要な物品の購入費用が助成される制度を多くの自治体で設けています。
次に、交通費の助成です。たとえば千葉県船橋市では、障害児が児童発達支援事業所や放課後等デイサービスなどに通所する際の交通費を助成しています。
障害者本人による運転、およびその家族による送迎も対象になる自動車燃料費助成を実施している自治体も多いようです。
参照:自動車燃料費助成|神戸市
参照:心身障害者自動車燃料費の助成|千葉県柏市
そして、多くの自治体で設けているのが医療費助成制度。
乳幼児の間は、子ども医療費助成制度で医療費が無料になるところも多いですが、その無料期間が終わった後の自己負担分を助成してくれる制度があります。
たとえば、愛知県名古屋市では、受診の際に窓口で「(障)医療証」を提出することで医療費の自己負担分が助成され無料となります。
こちらも各自治体で異なりますので、お住まいの地域の医療費制度を確認しておきましょう。
4.障害児家族が知っておきたい税制優遇制度とは?
最後に、払った税金が戻ってきたり、税金の支払いが免除されたりする制度(税制優遇)です。
4-1.障害者控除
扶養家族が障害者の時に、一人当たり27万円、40万円、75万円のいずれかが所得金額から差し引かれる「障害者控除」が利用できます。
たとえば、1級の障害者手帳を持つ子どもと同居して育てている場合は、75万円が控除されます。
参照:障害者控除|国税庁
どの区分に該当するかは、障害の程度や同居の有無によって異なりますので、国税庁のホームページか、管轄の税務署に確認しましょう。
年末調整か、確定申告の際に申請することで控除が適用されますので、手続きを忘れずに。
4-2.自動車税減免
障害児の通学や通院などで家族が運転する自動車がある場合、自動車税が減免になることがあります。
手帳の種類や障害の級によって基準が異なりますので、こちらも県や市町村のホームページなどで確認してください。普通自動車は県、軽自動車は市町村が窓口です。
4-3.障害者等の少額預金の利子所得等の非課税制度(通称「マル優」)
今は預金金利がとても低く、金融機関に預けていても利子がほとんどつかないのでメリットは少ないですが、利子にかかる税金が非課税になる「障害者等の少額預金の利子所得等の非課税制度(通称「マル優」)」という制度があります。
障害者手帳を持っている方など所定の条件を満たすと、預貯金の元本350万円までの利子が非課税になります。
子ども名義の口座にお金を預けておく場合には、検討してもいいかもしれません。
ただし、金利が高い傾向があるネット銀行ではマル優の取り扱いがないこともあるため、注意が必要です。
5.まとめ
これまでの内容を一覧にしてみました。
種類 | 詳細 | |
手当 | 特別児童扶養手当 | 20歳未満の、精神もしくは身体に障害がある子どもの養育者に支給 |
障害児福祉手当 | 障害があり、在宅で介護を受けている20歳未満の児童に支給 | |
助成 | 日常生活用具の給付 | おむつ、医療機器など |
交通費助成 | 燃料費、公共交通機関割引、タクシー券など | |
医療費助成 | 自己負担分の助成など | |
税制優遇 | 障害者控除 | 一人当たり27万円、40万円、75万円のいずれかが障害者控除として 所得金額から差し引かれる |
自動車税減免 | 障害児の家族運転の場合など | |
マル優 | 預貯金の元本350万円までの利子が非課税 |
障害児のお金についての支援制度は、自治体によって基準や内容が異なるため、ここで詳しく全てを記載することができません。
もれなく、速やかに申請・請求できるようにするには、面倒でも自治体に問い合わせるのが一番正確です。
身体障害者手帳の交付を受ける時などに丁寧に教えてくれる場合もありますが、手当制度があるということすら教えてもらえないこともあるようです。
申請前から受給資格があったとしても、遡って支給を受けることはできないので、まずはお子さんの状態を伝えて、どの制度が当てはまるのかを知ることから始めてみましょう。
自治体の窓口のほか、ソーシャルワーカーなど福祉の専門家に聞くこともできます。
経済的に不安になることが多い障害児の子育て。使える支援制度はしっかり使っていきたいですね。
Ayumiには、障害児家庭が経済的不安を感じる一因にもなっている「保育園に入園できない問題」を取り上げた記事もありますので、こちらからどうぞ。