「今の職場から転職したいけど障害者雇用だと難しいかな?」
「障害者でも採用してくれる転職先なんてあるの?」
障害者にとっての転職は、健常者よりもハードルが高く、難しいと思われがちです。
そのため、今働いている職場が自分に合わなくても、転職は大変だと思って我慢して働いている人も多いのではないでしょうか?
しかし、障害者の転職は、正しい準備と方向性で就活を進めていけば自分に合った職場で働くことができます。
今回は、障害者の転職が難しいと言われてしまう理由や、転職を成功させるための対策、準備について解説していきましょう。
目次
1.転職は難しい!?障害者の転職の現状を調査
令和4年度に厚生労働省がとりまとめた「ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況」を見てみると、新規求職申込件数は 233,434件で、前年(223,985 件)と比較すると4.2%も増加しています。
また、就職件数は 102,537件で、前年度(96,180件)と比べて 6.6%上昇しています。
過去のデータを見てみても、障害者の求人件数は、コロナ禍の時期を除いて年々増加傾向にあり、障害者雇用の転職は売り手市場です。
そのため、職種にもよりますが、障害者にとって転職環境は良くなっているといえるでしょう。
また、障害者の職場定着状況を障害別に見てみると以下のようになります。
障害の種類 | 3ヶ月後の定着率(%) | 1年後の定着率(%) |
身体障害 | 77.8 | 60.8 |
知的障害 | 85.3 | 68.0 |
精神障害 | 69.9 | 49.3 |
発達障害 | 84.7 | 71.5 |
参照:図表 概-2 障害別にみた職場定着率の推移と構成割合(障害者求人または一般求人に就職した者)|障害者の就業状況等に関する調査研究
障害の種類によって、それぞれ定着率は異なりますが平均で3ヶ月後で約2割、1年後では約4割程度の方が離職していることがわかります。
つまり、障害者にとって離職は珍しいことではなく、転職も売り手市場なので、きちんと準備をして転職活動をすれば、自分らしく働ける職場はきっと見つかるはずです。
2.障害者の転職が難しいと言われている理由
2-1.障害者雇用の求人数が少ない
障害者雇用の求人数は年々増加傾向にあるものの、やはり一般雇用の求人数よりも少ないのが現状です。
この一般求人数との差が、障害者雇用の転職が難しいと言われている理由です。
また、障害者雇用の求人は事務や軽作業が多く、一般雇用と比較して職種にも偏りがあります。
しかし、先ほども解説したように、障害者の雇用状況は年々増加傾向にあるため、転職自体はしやすいといえるでしょう。
2-2.未経験の職業を希望している
未経験の職種を希望している場合、転職活動は難航します。
なぜなら、採用する企業側は即戦力になる人材を求めている場合が多く、求職者がこれまで経験してきた職種を加味するからです。
たとえば、事務職を経験している人としていない人では、圧倒的に前者の方が企業側としては即戦力になるので、採用したいはずです。
ただ、希望する職種の経験がない場合でも、資格やスキルがあれば採用される可能性はあります。
2-3.障害と仕事内容がマッチしていない
障害者が転職を繰り返さずに職場に定着するには、仕事内容が自分に合っているかどうかが大切です。
自身の障害と仕事内容がマッチしていないとモチベーションが続かず、すぐに離職してしまう原因になります。
事前に詳しい仕事内容や業務範囲を把握しておくことで、仕事内容と障害のミスマッチは防げるでしょう。
2-4.企業側が障害を理解していない
平成28年4月に施行された改正障害者雇用促進法では、事業主は障害がある人への合理的配慮の提供が義務付けられています。
職場での合理的配慮とは、障害者が働く上で直面する困りごとや障壁を取り除くための調整、ルール変更を行うことです。
たとえば、雇用者の疲労面を考慮して、働く時間を短縮する、休憩時間を増やすなどの調整例があります。
また、障害の特性を考慮して仕事内容や配置の変更などをすることもあるでしょう。
合理的配慮で難しいのは、障害の程度や種類によって求められる配慮が変わるということです。
そのため、企業側が障害を理解しないまま採用してしまうことで、雇用のミスマッチが起こりやすくなります。
2-5.体調面での懸念
障害者の転職で難しいのは、やはり体調面です。
障害が安定していない状態で転職活動をしていると、当然ですが採用されにくくなるでしょう。
企業側は、障害者雇用であってもなるべく「長く安定して働けそうな人」を率先して採用します。
体調面や症状で不安を抱えている人は、まず治療や療養に専念し、働ける状態を目指してから転職活動を行いましょう。
2-6.面接でのコミュニケーション不足
障害者雇用に限ったことではありませんが、面接時にコミュニケーションが上手くとれていないと、転職活動は難航します。
たとえば、面接官の目を見て話しているか、質問に対しての答えがズレていないかなどです。
また、障害者といえど、最低限のビジネスマナーは見られています。
採用時の判断材料となるのは、基本的に履歴書と面接です。
特に、面接での印象は、企業側にとって採用を決定づける重要な判断材料になります。
3.障害者が転職を成功させるための対策や準備を解説
3-1.主治医やカウンセラーとの相談
まずは、主治医に相談して転職活動ができる状態かどうか客観的に判断してもらいましょう。
働ける状態にあるということを証明するものとして、診断書を発行してもらう方法や、セカンドオピニオンで多方面から診断してもらう方法などがあります。
また、メンタル面で不安がある場合は、資格をもったカウンセラーに相談するのもおすすめです。
主治医やカウンセラーからアドバイスを受けることで、客観的に自分の体調面を知ることができます。
3-2.自己分析
自己分析をすることは、自分にできることとできないことを明確にし、企業や仕事内容とのミスマッチを防ぐことに繋がります。
自身の持っているスキルはもちろんのこと、障害によってできないことや苦手なことを洗い出し、書き出してみましょう。
そうすることで、自分の障害の特性や得意なことに合った転職先を絞ることができるはずです。
3-3.障害者雇用に特化した転職サービス・制度を利用する
ハローワークは、一般職の他に障害者雇用に特化した専門の相談窓口を設けています。
そして、障害者の就労支援の制度として、原則3ヶ月の「障害者トライアル雇用事業」やハローワークを中心とした「チーム支援」などさまざまな制度があります。
また、民間企業では障害者雇用専門の転職エージェント「ウェブサーナ」や「クローバーナビ」などが有名です。
こうした国の機関や民間企業の転職サービス、制度を利用することで、自分に合った求人が見つかりやすくなります。
この他にも、Ayumiでは障害者雇用を中心とした就職・転職サイトをまとめた記事がありますので、ぜひこちらもご覧ください。
関連記事:障害者の就職先・転職先の探し方は?どうやって情報を取得すればいい?
3-4.スキルアップのためのスクールや職業訓練に通う
未経験の求人に応募する場合や、スキルや資格を身につけたいという方には、ハローワークの職業訓練や民間が運営するスキルアップスクールに通うのがおすすめです。
ハローワークでは、一般の公共職業能力開発校に加えて「障害者職業能力開発校」という職業訓練があり、さまざまな科目の訓練が受けられます。
また、民間の企業でもオンラインで受講できる障害者のためのスキルアップスクールがあります。
参照:障害者特化キャリアアップスクール|株式会社RESTA
職業訓練やスクールで、即戦力となるようなスキルを身につけることで、未経験の職種でも採用される確率は上がるでしょう。
3-5.職場見学をさせてもらう
職場見学をすることは、企業の雰囲気を肌で感じることのできるまたとないチャンスです。
転職活動をしていると、多くの求人や企業のホームページを目にする機会があります。
しかし、いくら情報を調べたとしても実際に見学してみないと分からないことが多いため、転職してからはじめて「こんなはずではなかった……」となる可能性もあるでしょう。
面接前に職場見学をさせてもらうことで、働く意欲も企業側に伝わりますし、好印象です。
転職を成功させるためにも、面接に応募する前に職場見学を希望することをおすすめします。
3-6.面接シーンでのビジネスマナーや会話術を勉強する
採用の合否を左右する面接では、最低限のビジネスマナーや会話術が必要とされます。
たとえば、ビジネスマナーでは清潔感のある身だしなみや、面接での入退室の仕方などです。
また、会話術では言葉遣いや相手に伝わるような話し方を勉強しましょう。
少しの知識や面接のコツを押さえておくだけでも、採用率はぐんと上がるはずです。
4.最後に
今回は、障害者の転職の現状や転職を成功させるための対策や準備を解説してきました。
障害者雇用の求人や就職状況は、年々良くなっています。
それでも、障害者の方が転職を難しいと感じてしまう理由は、事前にできる準備の不足や、利用できる便利な制度を知らない可能性があるからです。
自分に合った転職先を見つけるためにも、自己分析やスキルアップ、そして体調管理に気をつけながら、焦らず就職活動を進めていきましょう。