外出には欠かせない、電車や路線バス、タクシーなどの交通手段。
しかし、障害者や高齢者など身体が不自由な方にとっては、交通手段が限定され、自由に外出することが困難な場合があります。
そんな障害者の移動をバリアフリーにするサービスが、福祉タクシーです。
好きなときに好きな場所へ行き、楽しく暮らすためには欠かせないサービスです。
実は、福祉タクシーが提供するのは「移動」だけではありません。
今回は、そんな福祉タクシーについて分かりやすく解説していきます。
目次
1.福祉タクシーとは?

1-1.サービス内容
福祉タクシーとは、身体の不自由な方が乗降時の介助を受けながら移動ができるサービスを指します。
車椅子のまま乗車できる車両なので、身体の負担が少なく、いつもの姿勢で安心して移動ができます。
初任者研修を終了したドライバーに依頼をすれば、ヘルパーとして直接的な介護も受けることが可能です。
一般的なタクシーとは異なり、外出準備に伴う移乗や、通院の同行、日用品の買い物も依頼することができます。
また、車椅子やストレッチャーの貸し出しも行なっている事業者もあり、長時間歩くことが難しい方でも、レンタルすることで自由に外出を楽しめます。
1-2.福祉タクシーの利用料金
福祉タクシーの料金は、運賃と介護費用を合わせて計算されます。
運賃には、距離計算と時間計算の2パターンあり、それぞれ事業者によって異なります。
また、介護費用は外出準備や乗降時の介助の費用であり、通院や買い物は追加の費用が必要な場合がありますので、ご注意ください。
車椅子やストレッチャーなどを借りる場合は、レンタル費用も追加されます。
一般的なタクシーと比べて料金が高くなるため、経済的な理由で頻繁に使えない障害者もいらっしゃるのではないでしょうか。
ただ、福祉タクシーは障害者手帳を提示すると、全国一律で利用料金から1割引されます。
また、福祉タクシー券を配布する自治体もあります。
たとえば、筆者が暮らす広島市では、下記に該当する障害者を対象としています。

上記に該当する身体障害者と知的障害者は、1枚500円の券を52枚、精神障害者は58枚受け取ることができます。
自治体と契約しているタクシー事業者に限り使用できますので、詳しくはお住まいの自治体でご確認ください。
1-3.利用条件と利用方法
福祉タクシーは、要支援、要介護が必要な高齢者や障害者が利用できます。障害者手帳の有無に限らず利用できるのでご安心ください。
また、骨折などの怪我や病気を抱える人でも利用が可能です。
ただし、完全予約制なので、街中を福祉タクシーが走っているのを見かけても、その場で利用することはできません。
事前に電話などで目的地と時間、必要な介助を伝えて予約が必要です。
2.福祉タクシーを利用する上でよくある疑問
2-1.福祉タクシーと介護タクシーの違いは?
福祉タクシーと似たサービスに、介護タクシーがあります。
介護タクシーは「通院等のための乗車または降車の介助(通院等乗降介助)」と呼ばれている、訪問介護サービスの1つです。
要介護と認定されている高齢者が対象で、利用するには介護保険によるケアプランの届出が必要です。そのため保険が適用されるケースもあり、自己負担額を少なく利用できることがあります。
また、自治体によっては通院の同行が認められないなど、厳しいルールがある場合がありますので、確認した上での利用をおすすめします。
2-2.家族も同乗できるの?
介護タクシーは、原則家族の同乗が認められていません。また、プライベートな目的による利用も認められておらず、経済的負担は少ないものの、自由度も低い印象です。
一方で、福祉タクシーは家族の同乗はもちろん、友人、ヘルパーなど、同乗者に制限はありません。
家族との外出や友人と遊びに行くなどの目的でも、体に不自由がある人であれば、自由に利用ができるのが特徴です。
3.福祉タクシーの利用シミュレーションをする
福祉タクシーを探す方法は、ケアマネージャーや相談支援専門員に相談すると良いでしょう。
または、Googleマップで「福祉タクシー」と検索すると、登録されている事業者が見つかる場合があります。
利用する前に、身体状況や必要な介護、車椅子のサイズなど、ご自身の状況を伝える必要があります。
そして、時間と目的地、乗車人数など、当日の利用に必要な情報を伝えれば、予約完了です。
指定した時刻になると、福祉タクシーが到着し、外出の準備を進めてくれます。
この際、ベッドから車椅子の移乗や、排泄介助など、出発に向けて必要な介助も行なっていただける場合があるので、一人暮らしの方でも安心して利用ができます。
4.福祉タクシーを運営するプロに聞いた!利用する上で事前に知っておきたいこと

筆者が利用している福祉タクシ一事業者に、利用する上でのポイントを伺いました。
福祉タクシーを探すうえで、何を基準に探せば良いのか気になりますよね。
とくに料金については事前に確認しておくべきだそうです。
福祉タクシーの運賃は、距離もしくは時間計算され、そこに介護費用が加算されます。
しかし、料金に関しては事業者によっても大きく異なるとのこと。
特に介護料金については大きく異なるとのことで、利用した後に多額の請求をされる場合もあるそうです。
事前に大まかな料金を聞き、場合によっては相見積もりを取ることも、トラブルを避けるためには大切です。
また、介護サービスの内容も事業者によって異なるそうなので、必要な身体介護を受けられるかを事前に確認しましょう。
通院や買い物の動向も、同様に異なるため、サービス提供の有無と、1時間あたりのサービス料金も合わせて聞く必要があるとのことでした。
5.全国展開している福祉タクシー・ユニバーサルデザインタクシー業者2選!
5-1.第一交通産業株式会社
第一交通産業株式会社は、 34都道府県で8,000台以上のタクシーを保有しているタクシー業者です。
また、北九州を中心として、以下の福祉車両を利用可能です。
車両 | 車椅子台数 | 付き添い人数 | 特徴 |
大型福祉車両 | ストレッチャー1台(または車椅子2台) | 3名 | ヘルパー2名で対応し、遠方への患者輸送も可能 |
中型福祉車両 | 車椅子1台(大きめの車椅子も対応可能) | 4名 | 車椅子貸与は無料 |
小型福祉車両 | 車椅子1台 | 1名 | スロープがあり車椅子のまま乗り降り可能 |
タクシー認可運賃と介助料金がかかりますが、病院への通院や入退院時、冠婚葬祭や同窓会の出席時などで活用できます。
また、エレベーターがない市営団地や玄関まで階段がある住宅環境において、車椅子のまま昇降をサポートするなどのサービスも提供しています。
参照:介護タクシー・介護サービス| 第一交通産業
参照:第一あんしんサービス
5-2.日本交通株式会社
日本交通株式会社は、創業95年以上と老舗であり、グループ売上高は日本最大のタクシー業者です。
東京を中心として、首都圏や関西圏各地で9,000台程度のハイヤーやタクシーを運行しています。
CSR活動やサステナビリティに関する取り組みにも積極的であり、誰もが快適に移動できる社会を目指していることで有名です。
その一環として、EDS(エキスパート・ドライバー・サービス)®を展開しています。
EDSは、”タクシーだからこそ実現できる歓びや楽しさ、日々の安心・安全を提供するサービス”であり、車椅子での移動に便利な「サポートタクシー」を展開しています。
JPN TAXI(ジャパンタクシー)という車種は、車椅子利用者1名と同行者1名の計2名まで利用可能です。
また、ユニバーサルデザインタクシーとして以下の装備を兼ね備えています。
- 左側・乗降用アシストグリップ
- 右側・吊り革タイプのアシストグリップ
- シートバックアシストボード
- チャイルドグリップ
- 車椅子乗降用スロープ
さらに、EDSでは日常生活の移動を介護職員初任者研修を修了した乗務員が付き添いサポートしてもらえるのも便利です。
サポートタクシーは事前予約が必要で、時間貸切制となっています。
気になる料金は、最初の1時間が7,360円(運賃:5,360円、サポートチャージ料:2,000円)、 追加料金は30分ごとに2,950円(運賃:2,450円 サポートチャージ料:500円)かかります。
明確にはサポートタクシーは福祉タクシーとは異なり、通常の福祉タクシーでは付加サービスに応じて介助料がかかりますが、サポートタクシーは運賃とサポートチャージ料のみです。
また、ワンボックスやワゴンの福祉車両はなく、介助は乗務員1名のみで行う点にご注意ください。
6.福祉タクシーの利用以外の移動方法 | 車椅子で福祉車両をレンタルする
福祉タクシーを利用せず移動する方法として、福祉車両をレンタルする方法があります。
以下の大手レンタカー会社では、ユニバーサルカーやウェルキャブなどの名称で、福祉車両を提供しています。
- トヨタレンタカー
- ニッポンレンタカー
- オリックスレンタカー
- タイムズカーレンタル
- スカイレンタカー
- カースタレンタカー
- イフレンタカー
- バジェット・レンタカー
上記以外でも地域限定で福祉車両をレンタルしている業者も存在します。
福祉車両の利用時には、一般的なレンタカーを借りる際の準備以外にも介助において必要な車椅子や杖などを準備してください。
また、福祉車両は台数が限られており、基本的に事前予約が必須となるので、予定が決まり次第すぐにレンタル予約しましょう。
福祉車両のレンタルについては、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
参照:車椅子で福祉車両をレンタルする方法!全国展開する福祉車両のレンタカー会社も紹介します
7.まとめ
一般的なタクシーは利用者の身体に触れることができず、介護が必要な人は利用できないという課題がありました。
福祉タクシーは、介護資格者が行うことで、移動におけるバリアフリーを実現しました。
ときにはヘルパーとして、ときには一緒に買い物に出かける。
運送サービスだけでなく、地域で暮らす強い味方として、障害者をはじめ高齢者や怪我をした人などに必要なサービスなのです。
この記事をきっかけに、ぜひ福祉タクシーを利用して、公共交通機関では行けない場所へお出かけしてみてください。
Ayumiでは、バリアフリーなお出かけスポットにぴったりな記事も掲載しています。
関東にお住まいの方は、ぜひ以下の記事もご参照ください。