制度情報 障害者手帳の申請方法や取得するメリット・デメリットを徹底解説!

障害者手帳の申請方法や取得するメリット・デメリットを徹底解説!

障害者手帳は、当事者の障害を客観的に証明するものとして重要な役割を担うものです。

しかし、手帳の申請方法、種類や等級などがよくわからないという方も多いのではないでしょうか?

そこで、本記事では障害者手帳の種類や申請方法、取得することでどのようなメリット・デメリットがあるのかなどを徹底解説しています。

特に、障害者手帳の取得を検討されている方にとっては必要な情報ですので、ぜひ最後までご覧ください。

1.障害者手帳とは?

障害者手帳とは、障害がある方に対して各自治体から交付される手帳です。

身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種の手帳を総称した呼び方が一般的です。

障害者手帳を取得することで自身の障害を証明できるほか、さまざまな自治体や事業所が独自に提供するサービスを受けられることがあります。

厚生労働省の調査によると、障害者手帳を所持している障害者は、全国で​​610万人にものぼります。(2022年12月1日時点)

ただし、この数字は複数の障害を抱えている人も含まれているので、正確な数字ではありません。

しかし、障害があっても手帳を申請していない未申請の人も含めると、統計上に現れていない障害者は多くいると推測されます。

参照:令和4年生活のしづらさなどに関する調査 (全国在宅障害児・者等実態調査)結果の概要|厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部


2.障害者手帳の種類や等級について

障害者手帳 等級や種類について

障害者手帳には、それぞれ基になっている法令があり、等級についても異なります。

ここでは、障害者手帳の種類や等級について詳しくみていきましょう。

2-1.身体障害者手帳

身体障害者手帳は、​​昭和24年に制定された「身体障害者福祉法」に基づいて交付されています。

取得条件としては、障害が一定以上で永続することが要件となり、対象となる障害の例は以下の通りです。

  • 視覚障害
  • 聴覚または平衡機能の障害
  • 音声機能、言語機能またはそしゃく機能の障害
  • 肢体不自由
  • 心臓、じん臓または呼吸器の機能障害
  • ぼうこうまたは直腸の機能の障害
  • 小腸の機能障害
  • ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能の障害
  • 肝臓の機能障害

参照:身体障害者手帳制度の概要|厚生労働省


等級については、身体障害者福祉法施行規則別表第5号「身体障害者障害程度等級表」において、交付対象が1〜6級に区分されています。

7級の場合は、単独では手帳の交付対象とはなりませんが、7級に該当する障害が2つ以上重複する、または6級以上の障害と重複している場合においては交付の対象となる可能性があります。

参照:身体障害者手帳制度の概要|厚生労働省


身体障害者手帳には、原則として有効期限がないため更新の必要はありません。

ただし、障害の程度が改善・軽減される可能性のあるものについては、更新や再認定が必要です。

また、新たに別の障害の発生や重症化した場合にも再認定が行われ、等級においても変動する可能性があります。

2-2.精神障害者福祉保健手帳

精神障害者福祉保健手帳は、​​昭和25年に制定された「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に基づいて交付されています。

取得条件としては、精神疾患による初診日から6ヶ月以上継続して通院していることや、日常生活や社会生活に制約が生じていることなどが条件になります。

取得対象となる、精神疾患例については以下の通りです。

  • 統合失調症
  • 気分(感情)障害(うつ病・そううつ病など)
  • 非定型精神病
  • てんかん
  • 中毒精神病(アルコール・薬物などの中毒症)
  • 器質性精神障害(高次脳機能障害を含む)
  • 発達障害(自閉症・アスペルガー症候群・学習障害・注意欠陥多動性障害など)
  • その他の精神疾患(ストレス関連障害など)

参照:障害者手帳について|厚生労働省


精神障害者福祉保健手帳の等級は症状によって異なり、1〜3級までに分類されています。

等級の判断基準は、精神疾患(機能障害)の状態や能力障害(活動制限)の2つによって、総合的に判定します。

参照:精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について|厚生労働省


有効期限については、2年ごとの再認定が義務付けられており、申請受理日から2年間有効です。

更新は、既存手帳の有効期限の3ヶ月前から行うことができます。

2-3.療育手帳

療育手帳は、昭和48年に行われた各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生事務次官通知によって各自治体が制定した手帳です。

そのため、自治体によって呼び方が異なる場合があります。

例えば、東京都や横浜市では「愛の手帳」、青森県や名古屋市では「愛護手帳」など、呼び方もさまざまです。

療育手帳の対象者は、18歳未満のうちに児童相談所または知的障害者更生相談所から「知的障害」であると認定された人です。

また、18歳以上でも幼少期から知的障害があったと認定されれば取得できます。等級については、基本的に重度のAとそれ以外のBに区分されますが、自治体によって以下のようにさらに細かく分類される場合もあります。

大阪府の等級区分
等級区分
A重度
B1中度
B2軽度

参照:大阪府|療育手帳について

愛知県(名古屋市)の等級区分
等級区分
1度最重度
2度重度
3度中度
4度軽度

参照:愛護手帳|名古屋市



上記のように、自治体によって等級や区分が異なるのが療育手帳の特徴です。

また、療育手帳の判定基準は、厚生労働省によって以下のように定められています。

重度(A)の基準

① 知能指数が概ね35以下であって、次のいずれかに該当する者
食事、着脱衣、排便及び洗面等日常生活の介助を必要とする。
異食、興奮などの問題行動を有する。

② 知能指数が概ね50以下であって、盲、ろうあ、肢体不自由等を有する者
それ以外(B)の基準
重度(A)のもの以外

引用元:療育手帳制度の概要-3.障害の程度及び判定基準|厚生労働省

3.障害者手帳の申請の流れと必要書類

書類に記入しようとしている人

障害者手帳を取得するには、どのような流れで申請をしていけばいいのでしょうか?

ここでは、それぞれの障害者手帳の取得までの流れと必要書類について解説しています。

3-1.身体障害者手帳

身体障害者手帳の申請の流れは、以下の通りです。

  1. 市区町村の福祉窓口に相談し、交付申請書と診断書の用紙を入手
  2. 診断書を指定医に書いてもらう
  3. 窓口に交付申請書と診断書を提出する
  4. 都道府県で交付及び等級判定を行う
  5. 身体障害者手帳が交付される


身体障害者手帳を申請するには、まず福祉窓口にて申請書と医師に記入してもらうための診断書を入手します。

診断書に記入できるのは、各都道府県知事が指定する「指定医」のみなので、かかりつけ医が指定医に該当するか事前に福祉窓口で確認しておきましょう。

そのほかに、申請時の必要書類は以下の通りです。

  • 申請書
  • 診断書
  • 本人の証明写真(縦4cm×横3cm)
  • マイナンバーカード


上記の書類提出後、取得の可否や等級が審査で決定し約1ヶ月ほどで手帳が発行されます。

3-2.精神障害者福祉保健手帳

精神障害者福祉保健手帳の申請の流れは、以下の通りです。

  1. 精神科の初診から6ヶ月以上経過
  2. 市区町村の福祉窓口に相談し、交付申請書と診断書の用紙を入手
  3. 主治医に診断書を作成してもらう
  4. 窓口に交付申請書と診断書を提出する
  5. 都道府県で交付及び等級判定を行う
  6. 精神障害者福祉保健手帳が交付される


手帳の申請に有効な診断書は、発行から3ヶ月以内のものに限るので、注意しましょう。

また、申請が可能になるのは、精神科の初診から6ヶ月以上経過してからです。

申請に必要な書類は、身体障害者手帳と同様に、申請書・診断書・証明写真・マイナンバーカードなどがあげられます。

書類提出後は、手帳が発行されるまでに約2〜2ヶ月半程度かかります。

3-3.療育手帳

療育手帳の申請の流れは、以下の通りです。

  1. 市区町村の福祉窓口に相談後、申請書を記入し提出
  2. 判定機関から電話や手紙で連絡を受け、面談の日程を決める
  3. 面談
  4. 手帳に該当した場合は交付される


療育手帳の場合、各自治体によって申請方法は異なるものの、大まかな流れとしては、上記のように申請したのちに面談というかたちになります。

また、申請者が18歳未満の場合は児童相談所、18歳以上の場合は知的障害者更生相談所によって判定が行われます。

判定を受ける際には、幼少期の頃を知る保護者の同伴が必要です。

療育手帳の申請に必要な書類は、各自治体によって変わりますが一般的には以下の通りです。

  • 申請書
  • 印鑑
  • 本人の証明写真(縦4cm×横3cm)
  • マイナンバーカード
  • 母子手帳や診断書(必要な場合がある)


母子手帳や医師の診断書については、提出を求める自治体もあるので事前に確認しておくようにしましょう。

申請後に手帳が交付されるまでには、面談を受けてから約1〜2ヶ月程度かかります。

4.障害者手帳を取得するメリット

メリットという吹き出しが出ている人形

障害者手帳を取得するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?

ここでは、以下の5つを紹介していきます。

  • 障害者雇用への応募が可能
  • 税金の減免
  • 公共施設・交通機関の割引
  • 保育・教育
  • 福祉・医療


4-1.障害者雇用への応募が可能

障害者手帳を取得することで、一般の求人に加えて「障害者雇用」の求人に応募ができるため就職口の幅が広がります。

障害者雇用では、職場に障害をオープンにしての就労が可能なので、自身の体調を考慮しながら働くことができます。

また、就職する際にも、障害者雇用に向けた職業訓練や就労支援など、利用できる支援制度の幅が広がるのがメリットです。

4-2.税金の減免

障害者手帳による税金の減免には、以下のようなものがあります。

  • 所得税の控除
  • 相続税の控除
  • 自動車税の減免


上記の他にもさまざまな税金の減免があり、障害の種類や等級によっても該当するものが異なるので、住んでいる自治体のホームページなどで調べるのがおすすめです。

4-3.公共施設・交通機関の割引

障害者手帳では、美術館などの公共施設の入場料、電車やバスなどの公共交通機関の料金が割引になります。

携帯電話料金やNHKの受信料など、一部の企業が独自に提供している割引サービスもあるのが特徴です。

また、遊園地やテーマパークなどの入園料が割引される場合もあります。

参照:障害者手帳アプリ「ミライロID」が使えるおすすめのテーマパーク5選


4-4.保育・教育

障害者手帳を取得することで、個人の特性にあった保育や教育を受けることができます。

例えば、公立保育園へ入園する際に療育手帳があれば優先順位が高くなったり、特別支援学校への入学が可能になったりします。

また、障害児福祉手当や特別児童扶養手当などの各種手当てを受けることができるのも特徴です。

参照:【保存版】障害児家族必見!障害児が受け取れる手当制度やお金を紹介します


4-5.福祉・医療

障害者手帳によって、通院にかかる医療費や居住地のバリアフリー化に伴うリフォームなど、さまざまな経済的助成が受けられます。

特に、各自治体では「重度障害者医療費助成」が設けられており、医療費の負担を軽減する仕組みに力をいれています。

福祉や医療面での恩恵を受けるために、障害者手帳はさまざまな場面で活躍するといえるでしょう。

5.障害者手帳を取得するデメリット

デメリットという吹き出しが出ている人形

障害者であると認められることへの抵抗感や、周囲から理解されづらいといったネガティブな気持ちを抱えている人も少なくないでしょう。

しかし、障害者手帳を取得することで生じるデメリットは、社会的にほぼありません。

また、手帳を持っていても活用するかどうかは、本人次第です。

障害者手帳は、あくまで障害当事者が選択肢や優遇の幅を広げることを目的としているので、精神的なデメリットさえ克服できれば、メリットの方が何倍も大きいといえるでしょう。

6.障害者手帳に関するよくある質問・疑問

クエスチョンマークが出ている人形たち

6-1.障害者手帳を取得したら会社に報告しなければなりませんか?

結論から言うと、障害者手帳を取得しても会社に報告する義務はありません。

また、過去に障害者雇用で就労していて一般雇用に転職をする場合の面接においても、伝える必要は基本的にありません。

つまり、障害者手帳を取得して報告するかどうかは、当事者の判断に委ねられますし本人がカミングアウトしない限り周りにもバレることはありません。

ただ、障害が原因で担当できない業務や配慮してもらう事項がある場合は、会社に報告した方が良いでしょう。

6-2.保険に加入できなくなるって本当ですか?

「障害者手帳を持っていると、保険に入れなくなるから取らない方がいい」と聞いたことはありませんか?

結論から言うと、障害の種類と加入保険の内容によっては入れない保険もあるというのが正しいです。

例えば、視覚障害や聴覚障害など健康状態に大きな影響を与えない障害は、生命保険や医療保険の審査も通りやすいです。

しかし、保険に加入する際には健康状態の告知義務があるので、障害の種類や補償内容によっては加入できないケースもあります。

ただ、最近では障害があっても加入できる保険も増えてきており、一概に障害者だからといって保険への加入を諦めることはないでしょう。

6-3.障害者手帳の等級は誰が決めているのですか?

各障害者手帳の該当対象や等級を決めている機関は、以下の通りです。

  • 精神障害者福祉手帳・・・都道府県知事よって指定された指定医
  • 身体障害者手帳・・・各自治体の精神保健福祉センター
  • 療育手帳・・・児童相談所又は知的障害者更生相談所


決定された等級に不服がある場合は、市町村の福祉窓口に「審査請求書」を提出することで、不服申し立てを行うことができます。

6-4.障害者手帳を持っていれば障害年金を受給できるようになりますか?

障害者手帳と障害年金はそれぞれ別の制度なので、手帳を持っていても申請手続きをしなければ年金は受給できません。また、障害年金は手帳を取得していなくても申請が可能です。


障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)とは、病気や怪我で障害を負って日常生活に支援が必要となり、働けなくなった方に対して給付されるお金のことです。

障害年金を受給するためには、以下3つの条件を満たす必要があります。

  • 初診日要件
  • 保険料納付要件
  • 障害認定基準要件


障害年金の申請手続きは、以下の流れで行います。

  1. 初診日を調べる
  2. 保険料納付要件を満たしているか調べる
  3. 初診日を証明する書類を作成してもらう
  4. 医師に診断書を作成してもらう
  5. 病歴・就労状況等申立書を作成する
  6. その他必要な書類を揃える(あれば障害者手帳のコピーも含む)
  7. 年金事務所かお住まいの市区町村の国民年金課に提出する


なお、障害者手帳の等級が2級だからといって、2級の障害年金が受け取れるわけでもありません。

障害者手帳と障害年金については、受給するための審査の参考にはなりますが、直接は関係ないということを把握しておきましょう。

障害年金については、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。

参照:【社労士法人監修】​​障害年金の申請まるわかりガイド:必要な書類やつまずきやすいポイントについて解説


6-5.障害者手帳を取得すると運転免許が取れなくなるのは本当ですか?

障害者手帳を取得していても、運転能力に問題ないと判断されれば、運転免許の取得は可能です。

運転免許は、安全に運転する能力があり、試験に合格することができれば、障害の有無に関係なく運転できます。

ただし、運転免許が取得できない一定の病気については、警察庁交通局が下記のように公表しています。

  1. 認知症
  2. アルコール・薬物などによる依存症・中毒者
  3. 幻覚の症状を伴う精神病
  4. 発作を伴う意識障害又は運動障害をもたらす病気
    (てんかん・失神・低血糖症など)
  5. 自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気
    (躁うつ病・睡眠障害など)

参照:運転免許の拒否等を受けることとなる一定の病気等について|警察庁


障害者手帳を持っていなくても、上記の病気や症状に当てはまる場合には、運転免許の取得及び更新ができなくなる可能性があります。

その他身体障害などで運転免許の取得に不安がある場合には、全国統一の専用相談ダイヤル(#8080)に電話すると、運転免許に関する相談ができるのでぜひ活用してみましょう。

参照:安全運転相談窓口について|警察庁


7.まとめ

今回は、障害者手帳の種類や等級、申請方法などについて解説してきました。

障害者手帳の取得は任意ですが、自身の障害を公的に証明できるだけでなく、税金の減免や公共施設・交通機関の割引などさまざまなサービスやメリットが受けられる有効的なひとつの手段でもあります。

ぜひ、手帳の取得を検討して、自分に合った支援制度やサービスを知って正しく利用していきましょう。

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