下半身だけでなく、上半身にも障害がある方も利用できる電動車椅子。一口に電動車椅子といってもさまざまな種類、機種があり、多数のメーカーから販売されています。
本記事では、電動車椅子の説明をするとともに、おすすめのメーカーや値段、購入時の補助金制度などを紹介します!
目次
1.電動車椅子とは?
電動車椅子とは、電動モーターによって走行する、大小4個の車輪がついた車椅子のことです。モーターで動き、自力で操作する必要がないため、麻痺などで上半身にも障害がある方も使用することができます。
操作はジョイスティックレバーと呼ばれる手元のレバーで行います。前進・後進および左右への旋回ができ、狭い室内等でもスペースをとることなく、移動をスムーズに行うことが可能です。折り畳みができるものも多いため、持ち運びが簡単で外出にも便利と言えるでしょう。
電動車椅子とよく混同されるものに、シニアカー(電動カート)があります。シニアカーは、スクーターに似たハンドル付きの3輪、もしくは4輪の乗り物です。
操作はスクーターと同じようにハンドルとアクセルレバーで行います。また、機種や条件によりますが、シニアカーは連続走行距離が電動車椅子より長めで屋外で利用されることが多く、長距離移動に適しています。
一方で、小回りが利かないため屋内での利用は難しく、通路が狭い店舗などでは入店を断られる場合も。
値段は、電動車椅子は装備している機能によって変わってくるため、約10万円から100万円台までと価格に幅があります。一方のシニアカーも、10万円台前半から40万円台までの価格幅があります。
ご自身の利用目的や身体の状態によって、どちらを使用するか判断してみてくださいね。
2.電動車椅子の種類
電動車椅子は、ユーザー自身が操作できる「自操式」と、介助者の介助が必要な「介助式」の2つに分かれます。それぞれ説明していきます。
2-1.自操式 電動車椅子
自操式の電動車椅子のなかでも、標準型・簡易型の2種類に分かれます。
自操式電動車椅子の種類 | 詳細 |
標準型 | 「ジョイスティック型」とも呼ばれ、上下左右に動くジョイスティックレバーを自ら操作するタイプです。バッテリー内蔵でモーター駆動のため、ジョイスティックレバーを倒している間だけ、倒している方向に進みます。 |
簡易型 | 一般的に使用されている手押し車椅子にバッテリーとモーターを取り付けたものです。折りたたむことができる設計になっているものが多く、バッテリーがなくなっても手動で自走できます。 |
2-2.介助式 電動車椅子
介助式の電動車椅子は、介助者の介助が必要な車椅子です。上り坂ではモーター駆動でパワーアシストされたり、下り坂ではブレーキが働いたりと、介助者が車椅子を操作する際の負担を軽減させる工夫がなされています。
ご自身の身体の状態や生活環境、行動範囲などによってどの種類を使用するか決めましょう。
3.おすすめの電動車椅子メーカー8選
3-1.ヤマハ発動機株式会社
「行きたい時に行きたい所へ。」というキャッチコピーを掲げるヤマハ発動機株式会社。1989年に電動車椅子の開発に乗り出し、1995年にテスト販売を開始、翌1996年には本格的に販売をスタートしました。
「日経BP技術賞医療部門賞」や「通産省メロウグランプリ最優秀賞」などの名立たる賞を受賞し、現在も電動車椅子の開発・販売を続けています。
車椅子の多くは、フレーム部分はユーザーの体格や身体の状況、生活環境に合わせて1台1台オーダーメイドで設計・制作されています。ヤマハのJWシリーズは、このようなオーダーメイド車椅子の機能をそのまま生かし、駆動輪だけを交換することで電動化できる製品を販売。
もちろん電動車椅子本体も販売しており、こちらはオーダーメイドが必要ない方や、介護施設用などに販売しています。
そのほかにも、車椅子の車輪につけるカバーであるスポークカバーや床ずれ予防クッション、車体カバーもヤマハオリジナルで販売していますよ。
3-2.ペルモビール株式会社
スウェーデンで創業し、約50年以上に渡り電動車椅子のリーディングカンパニーとして発展を続けるペルモビール株式会社。現在では約70か国以上に事業展開をしています。物理学者で有名な故ホーキング博士も愛用したと言われています。
世界に先駆けて、長時間椅子に座り続ける方の心身機能や生活状況を考慮し良好な姿勢が確保できるように、また確かな医療・介護の学術的なエビデンスにも基づき椅子や背もたれなど様々なパーツを調整する“シーティングソリューション”技術を追求。
また、安全で快適な移動を可能にする“モビリティーソリューション”技術の研究も進めてきました。日本には2003年に上陸し、現在も電動車椅子販売を続けています。
電動車椅子本体だけでなく、アシストデバイスの販売や、電子式クッションモニタリングシステム、背中を支えるクッションなど幅広い事業展開をしています。
それから、電動車椅子のレンタルも行っており、HPの紹介ページではユーザーが使える公費支給制度の診断もできますよ。
実際にペルモビールの商品を利用しているユーザーの声も紹介されていますので、ぜひ一度HPをチェックされてみてはいかがでしょうか。
参照:ペルモビール株式会社
3-3.WHILL(ウィル)株式会社
2012年に日本で設立されたWHILL株式会社。「すべての人の移動を楽しくスマートにする」というミッションのもと、個人向け・法人向け両方にさまざまなソリューションを提供しています。
個人向けには、スクーター販売、デザイン性の高い折り畳み式の電動車椅子販売、5cmの段差も楽々走行できる電動車椅子販売、そしてこれらのレンタルを行っています。
法人向けには、「自動運転タクシーサービス」として歩行困難な方の車椅子を押すサービスをロボット化・自動化するサービスを病院・空港向けに展開。
電動車椅子は、全国の取扱店で試乗できますので、気になる方はぜひ一度HPをのぞいてみてくださいね。(店舗がない都道府県もありますので、試乗されたい場合は事前に必ずHPにてご確認ください)
参照:WHILL株式会社
3-4.アビリティーズ・ケアネット株式会社
1966年、障害者中心に設立された日本アビリティーズ社(現在のアビリティーズ・ケアネット株式会社)。1978年には労働省(現厚生労働省)より、日本第1号の重度障害者多数雇用事業所に認定されました。
創始者である伊東弘泰氏は、身体障害を理由に100社以上の企業から就職試験を断られたそうです。この経験から、心身に障害のある人たちの自立生活と社会参加を実現する「アビリティーズ運動」に取り組み、日本アビリティーズ社を設立したのです。
1972年からは、海外諸国のトップメーカーと提携して、福祉用具の開発、販売、レンタル事業を開始し、現在もその事業を続けています。
提携先であるサンライズメディカル社は、ドイツに本社を置き、世界のほとんどの主要国で重度の障害者からアクティブな障害者(児)のための移動用製品全般、及び、シーティング向け製品全般を提供する世界トップレベルメーカーです。
パラスポーツの海外のトップアスリートをはじめ、世界中の障害者に、日常用からスポーツ用車椅子、電動車椅子まで利用されています。
アビリティーズ・ケアネット株式会社では、そんなサンライズメディカル社と、前述したペルモビール社の電動車椅子を扱っています。
立った状態を保つことのできるスタンディング電動車椅子や、アウトドアにも使用できるアクティブ電動車椅子など、多種多様な電動車椅子をラインナップ。
ほかにも、介護用品やリハビリ機器などを販売していますので、一度HPを見てみてくださいね。
3-5.株式会社 今仙技術研究所(イマセン)
電動車椅子や骨格構造型義足などの研究開発・製造販売を行う、総合福祉機器メーカー・研究開発機関である今仙技術研究所。
1971年に日本初となる電動車椅子を販売したことで有名です。
現在では普通型の電動車椅子に加え、車椅子ユーザーの座位を傾けることができる電動ティルト式、
ユーザーの目線の高さを変えられる電動リフト式、安全にリクライニングできる電動リクライニング式などさまざまな種類の電動車椅子を販売しています。
電動車椅子のほかにも、義肢や歩行支援機など、日本の生活様式に合うものをMade in Japanのクオリティで世に送り出しています。
3-6.日清医療器株式会社
1964年に設立され、翌1965年には車椅子の販売を開始した日清医療器株式会社。1999年には国内車椅子メーカーで初となる「国際品質規格(ISO9001)」に登録されました。
スポーツ用車椅子も製造販売し、数々のアスリートに提供しているのも同社の特徴です。
電動車椅子は、2分割にして折り畳みができる「NEO-PR」や、介助式電動車椅子の「軽e (かるいー)」、ユーザー自身でティルト・リクライニングの操作ができる「NAH-UC 電動」などさまざまな工夫が凝らされた商品が販売されています。
3-7.昭和貿易株式会社
1877年に売薬事業を柱として創業された昭和貿易株式会社。現在は「包装分野」「食品分野」「海外ブランド分野」など、さまざまな分野の商品を取り扱っています。
電動車椅子は「ヘルスケア分野」として取り扱われており、インバケア社の商品を販売しています。
インバケア社は、アメリカのオハイオ州イリリアに本社をおく、1885年に創業された福祉機器専門メーカー。
昭和貿易株式会社では4つの製品を取り扱っており、そのうち2つはそれぞれの商品からさらに普通型や電動チルト式、電動リクライニング式などを選択可能です。
その中でも「AVIVA RX」というシリーズは、全幅56cmとコンパクトさを追求し、新型のモーターとサスペンションによる抜群の走行性と機能を備えています。高額ではありますが、その価値は十分にありそうですよ。
3-8.XSTO Co., Ltd.(XSTO社)
電動運搬車業界におけるリーディングカンパニーとして知られるXSTO社では、世界70カ国に全地形電動車椅子や電動階段運搬台車を輸出しています。
XSTO社の商品は、大手企業でも導入されているなど、高い注目を集めているのです。
独自開発されたM4電動車椅子は、自動バランス機能があるので上り坂や下り坂でも常に状態を並行に保つことができます。
また、座面の高さを535mmから730mmまで自分好みの高さに容易に調整可能です。折り畳み式となっており、簡単に分解して車に乗せて持ち運べるメリットもあります。
さらに、M4電動車椅子はスマートフォンアプリで操作でき、遠隔操作も可能となっています。
デザイン的にも、車椅子のイメージとは異なりシンプルで良い意味で目立ちにくいのも利用者にとって嬉しいですね。
3-9.【番外編】自走用車椅子に電動アシスト機能を追加できるSmartDrive(スマートドライブ)
自走用車椅子に取り付け、電動アシスト機能を追加できるSmartDrive。前述したペルモビール社が販売しています。簡単に着脱でき、装着することによって坂道を楽々登れたり、長時間移動でのユーザーの負荷を軽減してくれます。
下記記事で詳細を紹介していますので、ぜひご覧ください。
参照:【車いす利用者必見】坂道や普段の移動をサポートするスマートドライブを紹介!
4.車椅子の購入とレンタルではどちらがお得?
電動車椅子は、さまざまな会社でレンタルも多数されているため、どちらがお得か気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論から言うと、どちらがお得かは「使用期間による」と言えるでしょう。
電動車椅子の販売価格は冒頭でもお伝えしたように、約10万円から100万円台までと値段に幅があります。
一方、電動車椅子のレンタルでは、介護保険が適用されると自己負担額は1割(所得によっては2〜3割の場合もあり)で借りることができるため、月々1,000~4,000円程度でレンタル可能です。
たとえ10年借り続けたとしても、費用は12~48万円程度と、下限値であれば購入よりもレンタルのほうがお得と言えます。
しかし、これが30年間借り続けるとなると36~144万円程度になるため、購入するよりも高くなってしまいます。
ケガなどで一時的に車椅子が必要な場合はレンタルするほうがお得ですが、一生涯使うものとなると購入したほうがお得と言えるでしょう。
5.電動車椅子を選ぶときの5つのポイント
5-1.ユーザーの身体に合わせた設計か?
ユーザーの身体の状態に合わせた電動車椅子を選ぶことが重要なポイントです。その際、要介護度やユーザーの座位保持能力のほかに、介助者側の体の大きさも考慮しましょう。
どこまでの機能が必要か、どの程度のサイズが必要かなど、搭載されている機能をきちんと確認し、自分に合ったものを選択しましょう。
5-2主な使用用途は?
室内と屋外どちらで使用するかにより、選択する電動車椅子の種類が変わってきます。
屋外の移動時に主に使用したい場合は、サイズが多少大きくても不自由しないでしょう。それよりも、段差を超えられるかなどの機能面をチェックすることが重要です。
室内でも使用したい場合は、小回りの利くサイズのものを選びましょう。
5-3.折り畳みができるか?
電動車椅子の中には、折り畳みできるものと、できないものがあります。折り畳みができると移動がスムーズになり、外出のハードルも下がると言えます。
ただし、折り畳みができるものは機能が制限されるものもあるので、自分に必要な機能が備わっているか、きちんと確認しましょう。
5-4.リクライニングやティルトは付いているか?
リクライニングやティルト機能は、車椅子ユーザーにとって非常に重要な機能となります。
電動車椅子のリクライニングやティルト機能は、下記の効果が期待できます。
- 長時間の座位姿勢による身体の負担を軽減する。
- 背ずれや床ずれを防ぐ。
- 背中や腰への圧力を分散させ、姿勢を維持するための筋肉の緊張を軽減する。
- 外出先でも休息や睡眠をとることができる。
- 寝たきりのユーザーでも移動に利用することができる。
自分の身体の状態や生活環境、利用シーンに合わせてリクライニングやティルト機能がついているものを選びましょう。
5-5.各パーツのサイズ
電動車椅子の仕様は、ユーザーの体の大きさに合わせ、座面や背もたれなどの各パーツのサイズを決めます。
座面の横幅は、お尻の幅よりも約3〜5cmの余裕があるサイズが適していて、奥行きは、車椅子に深く腰掛けたときに、膝の裏から座面のエッジまで指3本分ほどの余裕があるサイズが安定するとされています。
高さについては、座面は車椅子に座り足台に足を置いたときに膝が90度に曲がる高さ、背もたれは脇の下の高さに合わせると楽に座れるでしょう。座面のクッション性や背もたれの柔軟性は、ユーザーの背骨や骨盤の曲がり方から選択しましょう。
ただし、こちらで紹介した数値はあくまでも目安となりますので、実際に試乗して自分に合ったものを選んでくださいね。
また、障害の種類によっては既存の電動車椅子のサイズでは座れないこともあります。その場合は、体のサイズに合わせて工務店が調整してくれることもあります。
ふらっと。でも工務店さんを紹介しているので、ぜひ下記記事をご覧ください。
参照:【社会のバリアを失くすものづくりを目指す】有限会社であい工房 代表 矢賀優さんが描く未来とは?
6.電動車椅子を購入するときの補助金について
電動車椅子を購入する際に高いハードルとなる購入金額。自分の身体に合っているものが欲しいけれど、高価すぎて買えないと諦めてしまう方ももしかしたらいらっしゃるかもしれません。
しかし、電動車椅子を購入する際は「補装具費支給制度」という補助金制度を利用でき、自己負担額が少なくなる場合があります。
補装具費支給制度とは、障害者が日常生活や就労・就学のために必要な用具を購入・修理する費用を支給する補助金制度です。
必要な用具とは、身体の失われてしまった機能を補完・代替するもので、車椅子も含まれます。対象となる障害は、下肢機能障害、体幹機能障害、平衡機能障害、心臓機能障害、呼吸器機能障害です。
このうち、電動車椅子購入の際の支給対象者となるのは、歩行が困難で、上半身にも障害があり手動式車椅子を自走することが難しい場合です。利用シーンに坂や砂利道が多く、手動での車椅子移動がかなりの負担になってしまう場合など、地理的環境による理由も含まれます。
支給の対象者は、身体障害者手帳を所持していることが必要ですが、障害者総合支援法で定めている指定難病患者で、補装具が必要と判定される場合も支給対象となります。この場合は、身体障害者手帳を所持していなくても対象です。
肝心の支給額は、基本的に購入費用の9割となります。つまり、自己負担額は1割です。ただし、所得に応じて月額の上限が設定されているので、必ずお住まいの市町村にお問い合わせください。
また、住民税の所得割額が46万円以上の方がいる世帯の場合は、補装具費支給の対象外となってしまいます。一方で、低所得(住民税非課税)の障害者については、利用者負担額が無料です。
申請は、市区町村の障害福祉窓口で行います。必要書類は自治体によって異なり、指定フォーマットや身元確認書類が必要な場合もあります。
また、自治体によっては制度がない可能性もあるため、まずは各自治体のホームページでの確認や、窓口へ連絡をするなどして、必要書類について事前確認をしましょう。
7.まとめ
今回は、電動車椅子の種類やおすすめのメーカー、選ぶ際のポイントなどを紹介しました。
上半身、下半身に障害を持つ方にとっては非常に大切な電動車椅子。折り畳みの可否やリクライニング・ティルト機能の有無、各パーツのサイズなど紹介したポイントをおさえて選びましょう。
「補装具費支給制度」という補助金制度もあるので、値段が気になってレンタルか購入で迷っていた方も、電動車椅子の購入を考えてみてはいかがでしょうか?