キヤスクとは「着たい服を着る日常を、すべての人に。」を掲げ、身体のに合わせて既製服を加工し、着やすくするお直しを簡単に依頼できるオンラインサービスです。
今回はそんな服のバリアフリーを進めているキヤスクについて、詳しく紹介します。
着られない服があり困っている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.服の選択肢に限りがある障害当事者たち
障害を持つ方にとって、おしゃれや服の組み合わせなどの選択肢が少ないのが現状といえます。例えば麻痺や関節の拘縮がある場合は、着やすく、脱ぎやすい伸縮性がある服が中心となるので、似たり寄ったりな服装になってしまうことがあるでしょう。
また、一括りに障害と捉えても、一人ひとり体の可動域や変形も異なります。
既存の介護服は着脱がしやすいもののデザイン性に欠けるものが多く、自分が好きなデザインの服を着ることが難しい現状があります。
全ての服をあなたの服に。こうした当事者の困りごとを解決するために、既製服のお直しサービス「キヤスク」が始まりました。
2.身体の不自由に合わせて服を直す日本初のオンラインサービス「キヤスク」って何?
キヤスクでは、病気・障害・怪我など、様々な理由で着られなくなってしまった思い入れのある服を再び着られるように加工してくれます。
前開きにしたり、ボタンをマジックテープに変えたりするなど、その服で不自由に感じている点に合わせてお直しすることが可能です。
実際に利用した身体障害者からは「おしゃれができるようになった」「家族の介助なく自分で着脱することができた」などという声があがっています。
2-1.キヤスク開発の背景
キヤスク開発の背景には、キヤスク代表の前田哲平さんの熱い想いがあります。
2018年に前田さんは前職で聴覚障害者の同僚と出会い、障害者の服について興味を持つようになりました。それから約3年に渡って、約800名の障害当事者に意見を伺い、服の選択肢が少ないと悩んでいる方が多いことを知ったそうです。
参照:身体の不自由な人への服のお直しをする日本初のオンラインサービス「キヤスク」 3月1日提供開始。|株式会社 PR TIMES
そして「障害や病気など様々な状況にある人が、もっと自分の好みの服を自由に選んで着て毎日を過ごしてほしい」という思いを抱き、前職を退職してキヤスクの発足に至りました。
2-2.キヤスクにかける想い
キヤスクのお直しメニューは、多種多様な服を一人ひとりに適した服に変えられるよう、70種類以上用意してあります。
具体的な要望は、注文サイトのチャットルームから直接相談が可能です。
またお直しを行うスタッフは、障害当事者のご家族も多く、お客様に徹底的に寄り添いながら、既製服のデザインを守ったお直しを提供しています。
障害者やその家族が服を諦めることがないように、という前田さんの強い想いが込められたキヤスクは、2022年にグッドデザイン賞とグッドフォーカス賞を受賞され、福祉業界以外からも高い評価を受けています。
2-3.キヤスクのサービス内容
画像元:キヤスク
キヤスクでは、Tシャツ、ポロシャツ、トレーナー、スウェット、ワンピースやデニム素材パンツなど幅広く加工することが可能です。お直しメニューより、詳しいサービス内容を見ることができます。
メニューにない加工を希望している場合も、まずは問い合わせしてみると良いでしょう。
お直しの流れとしては、
1.会員登録を行い、お直ししたい服を準備する
2.依頼したいお直しの内容を選ぶ
3.キャスト(お直しスタッフ)を1名選び依頼する
4.サイト内のコミュニケーションルームで選んだキャストと詳細な打ち合わせをする
5.お直しする服をキャストに送る
6.料金支払い後、キャストがお直しをする
7.お直し完了後、コミュニケーションルームより仕上がりを相互確認。その後、依頼主へ配送
となっています。
2-4.キヤスクが多くの人から受け入れられる理由
画像元:キヤスク
キヤスクを利用した方の60%以上は半年以内にリピートされています。
キヤスクが多くの人から受け入れられる理由として、子供からご年配の方まで幅広い方が利用することができ、様々な素材に対しても対応、加工してもらえることがあげられます。
諦めかけていた服を再び着られるという嬉しさは、たった一言では表しきれないでしょう。
また、キヤスクではお直しした服の返却とともに、必ずスタッフから手書きのメッセージカードが添えられています。
お客様とスタッフの関係である一方、同じ悩みを共有できる人の存在が感じられるのも、お客様が安心して利用できる理由のひとつだと思います。
2-5.キヤスクの歩み
2022年3月からキヤスクを初めて、1年間で350着もの服をお直ししてきたそうです。
日常的に着用する服から、外出用のおしゃれ着、水着やレインコートなど、あらゆる服を諦めず着れるようサービスを提供してきました。
中には、兄弟で同じ服を着ることを夢見ていたお母さんもいたそうです。キヤスクを通じて服のお直しだけでなく、お客様に感動を与え続けることができるのは、障害当事者の視点に立ってサービスを提供するキヤスクだからではないでしょうか。
2023年1月から新規プロジェクト「青春のキヤスク」を開始しました。
学校で指定されている制服を着ることが難しいため、みんなと同じ服装で学生生活を送ることができないという当事者の声をもとに、企業や行政と連携し課題解決に取り組むプロジェクトです。
着たい服を毎日着る。こうした当たり前が実現できる社会を目指すキヤスクの今後により一層注目です。
3.キヤスクを通じて描く社会とは?
キヤスクは既製服をお直しするサービスです。それは一般の洋服ブランドでは、服の選択肢が限られているということです。
前田代表が描く理想の未来は、キヤスクがない社会とのこと。
障害者の服作りではなく、障害者にも目を向けた服作りをすることで、メンズやレディースと同じように、障害者にとってもおしゃれで着やすい服が増えてくると言います。
そのために、キヤスクの経験を社会へ還元し、すべてのブランドが障害者にも目を向けるきっかけとなれるよう、障害当事者とその家族の服の困りごとを解決するために活動されています。
前田さんについては、下記のインタビュー記事をご覧ください。
【800名の障害者の元へ動き、サービスを通じて服の選択肢の未来を変えた】株式会社コワードローブ 前田代表に迫る!
4.最後に
外に出ると少しずつですが、障害を持っている人も、持っていない人も当たり前のように生活ができるためのバリアフリー化が進んできています。キヤスクは障害の有無に関係なくおしゃれを楽しめる、服のバリアフリーを実現してくれるでしょう。