障害や病気などによって、見た目やデザインよりも、着やすさを重視してファッションを選んでいる方もいるのではないでしょうか?
「誰でも当たり前に、ファッションを楽しみたい」
そんな想いに応えてくれる企業があります。
今回は、株式会社コワードローブ代表の前田さんを取材させていただきました。
障害者800人に調査を行い、服の選択肢がない現状を知ったことで、服のお直しサービス「キヤスク」をリリースされました。
服のバリアフリーに真正面から向き合う前田さんのルーツや、事業を通して創る未来についても迫っていきます。
目次
1.株式会社コワードローブってなに?
株式会社コワードローブは、2021年に創業され「障害や病気を抱える人々の悩み解決を起点に、ユニバーサルな社会作りに貢献する」ことをミッションに掲げて、服のお直しサービス「キヤスク」を展開しています。
ワードローブとは、クローゼットの中の服を指す言葉です。すべての人にとって、洋服の種類が同じになる社会を実現したいとの想いから、コワードローブと名付けられたそうです。
ロゴにも、たくさんのファッションが入ったクローゼットが描かれていて、ファッションのバリアフリーを目指す前田さんの強い想いが込められています。
1-1.株式会社コワードローブが目指す選択肢のある社会
【インタビュアー(ライター):赤石/インタビュイー:前田さん】
赤石:選択肢のある社会とは、具体的にどういった社会なのでしょうか?
前田さん:大きく3つあります。1つは、障害や病気の有無に関係なく、全員の洋服の選択肢の数が全く同じである社会を目指して活動していきたいと思っています。
2つ目は、障害者の方の悩みを解決する中で、すべての人にとって役立つ商品やサービスを作っていきたいですね。
障害や病気を抱えている方自身の悩みが社会を良くしている、役立っていると常に実感できるよう、社会に貢献していきたいです。
最後は、こうした社会が実現できたときに、健常者が障害者に自然と目を向け、関心を持つ社会です。そういう思いやりや優しさが溢れる社会作りを目指して、活動しています。
1-2.身体の不自由な人への服のお直しをするオンラインサービス「キヤスク」とは
赤石:キヤスクとは、どんなサービスですか?
前田さん:キヤスクは、お客様の身体に合わせて、既成服をお直しするサービスです。
前開きにしたり、ボタンをマジックテープに変えたり、褥瘡予防にズボンの素材を変更するなど、専門のキャストが一人ひとりのご要望を伺いお直しを行っています。
また、そのままのデザインで洋服を着ていただけるよう、お直しを目立たせないことを意識しています。
赤石:お直しをして欲しい時は、どのように依頼すれば良いでしょうか?
前田さん:全てオンラインで完結します。
キヤスクのサイトから注文画面に進み、メニューとお直しをするキャストを選択していただくと料金が確定します。その後、洋服の発送をしていただき、通常10〜14日でお直しした洋服をお返しいたします。
サイト内には専用のチャットルームがあり、キャストと直接お直しについてご相談できますので、ご安心ください。
着たいと思う服を諦めて欲しくない、安心してお好きなファッションを楽しんでいただきたいという想いで「キヤスク」を作りました。
参照:キヤスクHP
2.代表 前田さんってどんな人?
ファッションに興味がなかったという前田さん。
大学卒業後は銀行に就職しましたが、株式会社ファーストリテイリングのビジョンと柳井社長の考え方に強く惹かれ、入社を決意されました。
業界最大手のユニクロで働くなかで、自然とファッションへ興味が湧いてきたとのこと。
これまで障害者との関わりは全くなく、バリアフリーについて考える機会もなかったそうですが、なぜ起業へ至ったのでしょうか。
2-1.経歴と実績
【経歴】
引用元:株式会社コワードローブ
1994年 福岡県立筑紫丘高等学校卒業
1998年 早稲田大学政治経済学部経済学科卒業
1998年 株式会社福岡銀行に入行し、営業店勤務
2000年 株式会社ファーストリテイリング(ユニクロ)に入社し、店舗運営・新規事業開発・販売計画・生産計画・経営計画・EC運営に従事。
▶︎2018年から2020年の3年間に、800人を超える障害や病気を抱える人々にヒアリングを実施し、服に関する様々な工夫や悩みを知る。
▶︎2020年9月にユニクロが販売した前開きインナー商品開発プロジェクトを主導し、その中でも特にSNS・Webニュース・TVなどで大きな反響を呼んだ「子供用ボディスーツ」の商品化を発案。
▶︎また、全国のユニクロ店舗で障害者や高齢者がより買物しやすい環境改善に取り組む全社プロジェクトを立ち上げた。
2021年 株式会社コワードローブを設立、現在に至る
2-2.聴覚障害者の同僚と出会い、人生に転機が訪れる
赤石:なぜ、服のバリアフリーに興味を持たれたのですか?
前田さん:ユニクロで働いているときに、聴覚障害の同僚がいました。彼と話しているときに、障害者の服の選択肢がないことを初めて知ったんですよ。
というのも、ユニクロでは「あらゆる人のための洋服」というコンセプトで活動していたので、「まだ届いていない人がいる」ということにかなりの衝撃を受けました。
それからなぜかその事が気になって、障害者団体に問い合わせて障害当事者のお話を聞いてみたら、たくさんの課題が見えてきたんですよね。
赤石:それが、起業へ繋がったのですね。
前田さん:そうですね。お話を伺う中で、服をデザインではなく「着やすさ」で選んでいて、世の中にたくさんある洋服の中から選ぶ事が叶わないという現状を知りました。
そこから、どうやったら同じ選択肢を提供できるかを考えたんです。
同じ病気でも、一人ひとりお身体が違って着やすいポイントが違うんですね。なのでユニクロの中で障害者向けの服を作っても、選択肢を同じにすることは叶わないのかなと思いました。
あらゆるブランドの既製服に対してお直しすることの方が、たくさんの人に喜んでいただけるかなと思い、独立を決断しました。
僕も、まさか起業するとは思ってもいませんでしたね。
2-3.大切にしている信念・想いとは?
赤石:挑戦するうえで、大切にされている想いはありますか?
前田さん:勝負は事前の準備で決まるということですね。
起業前には、800人の当事者へ服のお悩みに関する調査を行いました。「課題を知りたい」という想いで聞いていたら、いつの間にか800人に到達していたという感じです。
実は、お直しするキャストは一度も募集してないんですよ。
サービスを始める前にクラウドファンディングで資金を集めていて、そのプロジェクトに共感してくださった方の中に、「キャストとして参加したい」との声をあげてくれた方がいらっしゃいました。
みなさん、自分の技術で何かお役に立ちたいと思ってくださる方ばかりだったんですよね。
当事者への調査から想いが生まれ、そこに仲間が集まってくれたのはすごく嬉しかったですね。
3.キヤスクを通して伝えたいこと
赤石:キヤスクのサービス名につけた想いはありますか?
前田さん:このサービスで実現したいことは、やはり「自由に選んだ服を着やすくすること」なので、わかりやすくキヤスクと名付けました。
それと「安心していただきたい」という想いもあります。障害や病気を抱えられている方にとって、一般のお直し屋さんへ気軽に依頼できない環境があるのではないかと思います。
そういった気持ちの面から考えても、キヤスクが一番合っていると思いました。
赤石:キヤスクを通して、社会へ伝えたいことはありますか?
前田さん:サービスを開始してから、たくさんの声をいただきました。
たとえば、障害児と健常児のお母さんは、お揃いの洋服を着せたいという夢があったそうです。キヤスクをご利用いただき、夢が叶ったと聞いたときは、とても嬉しかったです。
残念ながら、こうした取り組みが一般の洋服ブランドでは全然対応できていないのだと感じます。
その理由として、困りごとがあるという認識はあるもののアプローチの仕方がわからず、思考停止になっているのだと思うんですね。
キヤスクとして、もちろんお直しサービスも提供しますが、蓄積したノウハウを世の中へ無料で発信して、すべてのブランドに参考していただきたいと思っています。
お身体の不自由な方への対応は、決して特別なものではありません。
世の中におしゃれで着やすい洋服が溢れる、キヤスクはそんな未来への起点となれれば嬉しいです。
4.事業を通して目指す未来
赤石:事業を通して、どんな未来を描いていきたいですか?
前田さん:キヤスクがなくなっている社会です。
すべてのファッションブランドが、障害者のための服作りをするのではなく、障害者にも目を向けながら服作りをするようになれば、健常者にも障害者にも着やすくておしゃれな服が世の中に溢れるようになると思います。
そういう社会では、キヤスクのサービスがなくても、すべての人が着たい服を着られるはずです。
いずれ、キヤスクが不要になる社会を目指して、キヤスクの活動をしていきます。
赤石:最後に、これから挑戦する人へメッセージをください。
前田さん:成功よりも成長が大事です。挑戦すれば、成功しても失敗しても必ず成長できます。
失敗を恐れて挑戦しないことは、成長できないままと同じことです。なので、思う存分挑戦してください。
みなさんの挑戦を応援しています。
5.最後に
前田さんは、選択肢があることの大切さを教えてくださいました。
選択肢がないから諦めるのではなく、どうやったら選択肢が持てるかを常に考える事が大切だと筆者は感じました。
皆さんもファッションに関して困りごとがあれば、ぜひキヤスクを使ってみてください。キャストの方がきっと解決してくださると思います。
株式会社コワードローブ:https://co-wardrobe.com/
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