障害と向き合う挑戦者 見えない障害に悩んだ私だから、生きづらさを抱える人を応援したい。声帯萎縮症を抱えるのんさんが伝えたい想いに迫る!

見えない障害に悩んだ私だから、生きづらさを抱える人を応援したい。声帯萎縮症を抱えるのんさんが伝えたい想いに迫る!

声帯萎縮症を抱えるのんさんの笑顔

あなたの身近に障害者はいますか?

内閣府によると国内に約964万人の障害者がいるといわれています。これは身体障害者、知的障害者、精神障害者を合計した数値で、複数の障害を持つ方もいるため単純な合計にはならないですが、国民の7.6%が何らかの障害を抱えているということです。

参照:障害者の状況|内閣府

そこには目に見えない障害も含まれています。

今回は声帯萎縮症の当事者である、のんさんを取材させていただきました。

のんさんは、ある日突然声が出しづらくなったものの、声帯萎縮症と診断を得るまでに長い時間を要したそうです。

さらに、身体に変化が見られないことから、周囲の理解を得られにくく、生きづらさをとても感じたといいます。

見えない障害を抱えるのんさんが目指すバリアフリーな社会とは、そして同じ境遇の人へ伝えたい想いについて伺いました。

1.声帯萎縮症とは?

声を出す際は、声帯を閉めた状態で振動させることによって声が出ます。

声帯萎縮症とは、加齢などにより筋肉が痩せ細ってしまうことで、発声時に声帯が適切に閉まらず、隙間が生まれてしまう障害です。

高齢者に多く発症するそうですが、喋らないことでも発症する可能性があるとのんさんはいいます。

未だ原因は明らかとなっていないものの、幼少期に家族が離婚したことにより、家庭内での会話が極端に減ったそうで、声を発さないことで段々と声帯の筋肉が弱まり、声帯萎縮症を発症したのではと考えているそうです。

それにより、声がかすれたり震えるといった症状があり、加えて、のんさんは言葉に詰まる症状もあるそうです。

身体障害と比べて、見た目で判断が難しいからこそ、私たちはどんな配慮をしたら良いのでしょうか。

【インタビュアー(ライター):赤石/インタビュイー:のんさん

赤石:のんさんにとって、どんな配慮があれば嬉しいですか?

のんさん:人って悪気がなくとも見た目で判断してしまうことがあると思うんです。

声帯萎縮症は見た目ではわからないからこそ、いざ話した時に言葉が出ないと、私の想いとは違うネガティブな印象を持たれることがあります。このときはとても悔しいですね。

なので、もう少しだけ寄り添いの気持ちを持っていただけたらと思います。その一瞬で判断して、自分の中にしまうのではなく、気持ちを直接ぶつけてもらえると、事情も説明できるので、嬉しいです。

2.のんさんってどんな人?

声帯萎縮症を抱えるのんさん

活発で正義感あふれる子供だったと、のんさんは自身を振り返ります。

中学校からはバドミントンに熱中し、もっと上手くなりたいと思っていた高校でのある日、のんさんの身体に異変が起きました。

突然胸が苦しくなり、声が出しづらいと感じたため、その日は部活での声出しを休んだそうです。次の日も、そしてその次の日も。

数日経ったとき、あることに気づきました。

「あれ、どうやって声を出すんだっけ

以前のような大きな声を出すことができなくなっていました。その後病院に行くも原因がわからず、段々と声を出すこと自体が怖くなったといいます。

そこから、のんさんが見えない障害に葛藤する毎日が始まったのです。

2-1.見えない障害があるからこそ感じた悩み

パソコンで仕事をする声帯萎縮症を抱えるのんさん

赤石:声が出ないことで、どんなことに困りましたか?

のんさん:困ったことしかないというのが正直な気持ちです。

声が出しづらくなって改めて声の大切さに気づいたんですよ。というのも、学校生活や就活を経験していく中で、コミュニケーションは声の印象が大きいと痛感させられました。

特に就活では、面接が重要視されるので、声を出しづらい私にとっては、とても不安でした。

インターンシップに参加したときも、成長したいという気持ちはあるものの、グループディスカッションで周りの声で自分の声がかき消されることも多く、本当に自己否定の毎日でした。

赤石:就職してから声を出しづらいことは伝えたのですか?

のんさん:伝えられませんでした。

声帯萎縮症と診断されたのは最近なので、当時はどう説明したら良いかわからず、自分の中で緊張からくるものだと言い聞かせていました。

当時は新入社員で、電話対応も多くありましたが、これも私にとっては負担の大きい業務でした。

「はい、○○会社です」と言わなければならないのですが、頭の中ではわかっていても会社名がうまく言葉にならず、毎回止まっていたんです。

当時の上司も気にかけてくれてたのですが、うまく説明できなかったのと、声のことを伝えたらクビになるかもと思ってしまい、1人で乗り切ろうとしていました。

2-2.障害の悩みを誰にも言えなかった人生に転機が訪れる

赤石:一時は適応障害にもなったそうですが、よろしければ経緯を教えていただけますか?

のんさん:適応障害は声帯萎縮症だけが原因ではないんです。

自分自身のキャリアを考え転職をしたのですが、そこでの労働環境がとても過酷なもので、精神的にも肉体的にも疲弊していた時にチョコレート嚢胞という病気が発覚しました。

卵巣に血液が固まってしまう病気なのですが、悪化すると不妊のリスクがあるというものです。

今のままだと、将来子供ができなくなる可能性があることにとてもショックを受けましたし、これまでの生きづらさも合わさって、精神的にとても落ち込みました。

その後、心療内科で適応障害と診断されることになります。

赤石:前向きに生きられるようになったきっかけを教えてください。

のんさん:やはり適応障害になった時に、変わる必要があると思ったんです。その方法を模索している時に素敵なブログに出会ったことが、立ち直る大きなきっかけとなりました。

そこで自己肯定感について語った記事がありました。声帯萎縮症が原因で、これまで自己否定ばかりしていたので、自己肯定感という言葉と出会って、初めてありのままの自分で良いと思えたんです。

マイナスだった自己肯定感をフラットにして、ようやく自分の人生について冷静に考えることができました。今のまま働くのではなく、一度心身と向き合い新たな生活を送るために、休職を決意できたのです。

そこからSNSやセミナーなどたくさんの人と関わっていくうちに、自分のやりたいことが見えて、心地よい生活が送れるようになっていきました。

2-3.生きづらさを抱える人の支えになりたい

声帯萎縮症を抱えるのんさんと友人

赤石:生きづらさを感じている人をサポートしたいと思うようになったきっかけはありますか?

のんさん:やはり自分自身の経験から、同じような想いをする方を救いたいというのが一番の理由です。

また車椅子トラベラーの三代達也さんに出会ったこともきっかけの一つです。知り合いの紹介で、三代さんとお話しさせていただいたのですが、三代さんのオーラに驚きましたね。

車椅子を利用している方と初めてお話ししたのですが、障害に関してマイナスな印象は全くありませんでした。自分の中で障害に対して感じていたものが壊れたんです。

そこから、こうした気持ちを世の中へもっと広げていけるような活動がしたいと思うように変わりました。

関連記事:『あなたの勇気ある一歩で自らの環境が変わる-車椅子トラベラー三代達也』

赤石:どんなサポートをされているのですか?

のんさん:今はSNSでの発信がメインになります。声帯萎縮症の情報を発信したり、見えない障害を抱える方へ経験や情報を伝えています。

また同じような悩みを抱えている方へのコンサルティングも行っています。

今の症状を治したいと相談を受けることも多いのですが、私自身が心と向き合ったことで心地よく生きれるようになったので、治すことにフォーカスするのではなく、自己肯定感を理解して、その方にとって心地よい生活を考えるお手伝いをしています。

赤石:のんさんにとって心地よいとは何でしょうか?

のんさん人生にモヤモヤとか生きづらさがない状態ですね。

人生は一度きりなので、今この瞬間を笑顔で楽しく過ごせることがベストだと思っています。

私は自分を否定してきた時期が長かったので、自己肯定感をフラットにし、自分らしく心地よく生活できることが理想ですかね。

3.声帯萎縮症ののんさんが届けたい言葉とは

声帯萎縮症を抱えるのんさんのプレゼンテーション

赤石:これからどんなバリアフリーな社会を目指していきたいですか?

のんさん:心のバリアフリーがとても大切だと感じています。

障害は確かに生きづらい要因かもしれません。しかし、相手次第で障害が生きづらさにならない場合があるんです。

インターネットが普及して便利になった反面、リアルな人との触れ合いが少なくなったと感じています。街中で困っている人を見かけても他人事と捉えることが当たり前になりつつあると思うのです。

温かい人が増えるためには、もっといろんな価値観や人に触れる機会を増やしていきたいと考えています。

今ある生活だけではなく、さまざまな人に出会い、人生に向き合っていくことは、自分自身が成長する上でとても大切だと思うので、こうした強い気持ちを社会に伝えていき、寄り添える人を増やしていきたいです。

赤石:生きづらさを感じている人へメッセージをお願いします。

のんさん:まず自己否定をする必要はないよって伝えたいですね。

例えば、生きづらさがあるって気づいた時に、我慢や頑張る必要は全くありません。それは、自分自身と向き合うタイミングなのです。

そのときに1人で一歩踏み出すことが難しいのであれば、近くの方へ相談したり、私に相談していただけると嬉しいです。

あなたは1人ではないし、環境も選ぶことができます。だから一歩だけ勇気を踏み出してほしいと伝えたいですね。

4.最後に

のんさんは、これまで声に悩まされてきました。

しかし今、のんさんにとって声は「自分を表現するツール」と感じているそうです。高い声や低い声、落ち着く声や抑揚のある声など、本当に魅力が溢れるものといいます。

そう思えるようになったのは、自分自身と向き合い続けたからこそだと筆者は感じます。

のんさんのように見えない障害を抱える方は沢山います。

この記事をきっかけに、少しでも心のバリアフリーを意識していただけると嬉しいです。

のんさんの活動はInstagramからご覧いただけます。また公式LINEでは、同じ悩みを抱える方へ個別相談も実施されていますので、気になった方はぜひお問い合わせください。

Instagram:https://www.instagram.com/seitailov_non/
公式LINE:https://line.me/R/ti/p/@310ikgil

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