障害者eスポーツとは、障害のある人が視線入力やアダプティブコントローラーといった支援機器を活用することで、障害のある人もない人も同じ土俵で対戦・交流できるeスポーツの取り組みです。
プレイヤーとしての参加だけでなく、大会運営や実況といった仕事につながる例も生まれています。ほかにも、プロのプレイヤーとしてだけでなく障害福祉としてもeスポーツが活用されています。
とはいえ「体を思うように動かせないけれど、本当に参加できるの?」「何から始めればいいのか分からない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
2026年9月19日に開幕する第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)では、eスポーツがメダル対象の正式競技として実施されます(eスポーツ競技自体は9月23日〜10月2日に行われます)。一方で、10月18日に開幕するアジアパラ競技大会の18競技にeスポーツは含まれていません。
この記事では、障害者eスポーツの始め方・使える機器・大会と支援団体・障害者雇用の事例までを、2026年9月時点の最新情報でわかりやすく解説します。
1.eスポーツとは?

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eスポーツとは、エレクトロニック・スポーツの略称であり、広義では電子機器を使用しておこなう娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉です。
また、コンピューターゲームやビデオゲームを用いた対戦を、スポーツ競技として捉える際にもeスポーツと呼ばれています。
1-1.eスポーツの歴史
eスポーツの歴史を紐解くと、古くは1972年に「スペースウォー!」の大会が開催されたのが最古といわれています。
1990年代に入ると、日本ではストリートファイター2を筆頭に格闘ゲームがブームとなり、欧米ではPGLやCPL等プレイヤーのプロ化が始まったのです。
また、1990年代にはインターネットが徐々に普及し始めたことで、ゲームのスポーツ化が加速化しました。
2000年には「eスポーツ」というフレーズが使用され始めて、10月にはWCGC (World Cyber Games Challenge)が開催されています。
2004年には、初めて韓国以外の開催地としてサンフランシスコが選ばれました。
2007年10月には、OCAが主催した第2回アジア室内競技大会において、eスポーツの正式種目としての採用が決定しています。
日本でも、eスポーツに対する理解と対応が進み、以下のイベント等がおこなわれています。
| 年月 | 内容 |
| 2007年6月 | 日本eスポーツ協会設立準備委員会発足 |
| 2011年11月 | 第1回eスポーツJAPAN CUP開催 |
| 2013年4月 | Japan Competitive Gaming(JCG)設立 |
| 2014年1月 | 「e-sports SQUARE AKIHABARA」開店 |
| 2015年4月 | 一般社団法人 日本eスポーツ協会(JeSPA)設立 |
| 2015年10月 | 一般社団法人e-sports促進機構設立 |
| 2016年3月 | 一般社団法人日本プロeスポーツ連盟設立(その後一般社団法人日本eスポーツ連盟に改名) |
| 2018年1月 | 一般社団法人日本eスポーツ連合設立 |
上記から、2014年あたりから急激にeスポーツに関する環境の変化が発生していることが分かります。
1-2.eスポーツはゲーム?それともスポーツ?
eスポーツを語る上で、ゲームなのかスポーツなのかという議論が巻き起こることが多いです。
eスポーツとは、コンピューターゲームやビデオゲームを使用して、対戦をスポーツ競技として捉える際の名称です。
一般的に、スポーツと言えば自分の身体を駆使しておこなうことをイメージします。
一方で、eスポーツの場合は電子機器を使用するためどうしてもスポーツのイメージが持てないものです。
ただし、eスポーツと似たものとして囲碁やチェスを「マインドスポーツ」と呼ぶなど、広義な意味でのスポーツの定義は広がっている状況です。
国際オリンピック委員会(IOC)は2023年に「オリンピックeスポーツシリーズ」を立ち上げるなど、eスポーツのスポーツとしての認知拡大に取り組んできました。続く形で計画されていた本格的な「オリンピックeスポーツゲームズ」(サウジアラビアで2027年開催予定)は、2025年10月にIOCとサウジアラビア側の提携が終了したことにより、いったん開催中止となっています。
もっとも、IOCは今後新たなパートナーシップの形を模索する姿勢を示しており、eスポーツとオリンピックの関係は、これで終わりではなく、これからも形を変えながら続いていくことが期待されます。
1-3.主な種目
2023年6月にシンガポールで開催されたオリンピックeスポーツシリーズでは、以下の種目がおこなわれました。
| 種目 | ゲーム |
| アーチェリー | Tic Tac Bow |
| サイクリング | Zwift |
| セーリング | Virtual Regatta |
| ダンス | Just Dance |
| チェス | Chess.com |
| テコンドー | Virtual Taekwondo |
| テニス | Tennis Clash |
| モータースポーツ | グランツーリスモ7 |
| 野球 | WBSC eBASEBALLパワフルプロ野球 |
| 射撃 | フォートナイト |
さらに、エキシビジョンマッチとしてストリートファイター6の大会が開催されました。
オリンピックeスポーツシリーズ以外でも、個別のゲームを用いた世界大会が各地で開催されています。
2.【2026年最新】eスポーツの市場規模は161億円・競技人口419万人

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一般社団法人日本eスポーツ協会が発行する『日本eスポーツ白書2025』によると、2024年の国内eスポーツ市場規模は約161億円で、前年比9.9%の成長となりました。競技人口は推計419万人、ファン数は約967万人に達しています。2026年には市場規模200億円超、ファン数は約1,500万人に迫ると見込まれています。
市場が拡大するということは、プレイヤーとしての活躍の場だけでなく、大会運営・配信・実況・カスタマーサポートといった周辺業務の雇用も増えるということです。実際に、これらの業務を障害のある人に委託・雇用する形で就労機会を生み出している事業者が国内に登場しています。
参照:データ年鑑『日本eスポーツ白書2025』発売|一般社団法人日本eスポーツ協会
2-1.アジア競技大会2026でeスポーツが正式競技に
2026年9月19日から10月4日まで開催される第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)では、eスポーツがメダル対象の正式競技として実施されます。eスポーツ競技は9月23日から10月2日までの10日間、愛知県国際展示場(Aichi Sky Expo)展示ホールDで開催され、採用タイトルは過去最多の11種目13タイトルです。
「League of Legends、ポケモンユナイト、eFootball、グランツーリスモ7、ぷよぷよeスポーツ、Honor of Kings、PUBG MOBILE、Identity V、Mobile Legends: Bang Bang、NARAKA: BLADEPOINT、格闘ゲーム団体戦」などが実施されます。
eスポーツがアジア競技大会でメダル対象の正式競技となったのは2022年の杭州大会(2023年開催)が初めてで、愛知・名古屋大会は2大会連続の実施となります。
参照:第20回アジア競技大会(2026//愛知・名古屋)eスポーツ競技|一般社団法人日本eスポーツ協会
参照:第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)第5回アジアパラ競技大会(2026/愛知・名古屋)|スポーツ庁
一方、2026年10月18日から10月24日まで開催される第5回アジアパラ競技大会(2026/愛知・名古屋)では、実施競技は18競技502種目(2026年7月時点)で、この中にeスポーツは含まれていません。パラアーチェリー、パラ陸上競技、ボッチャ、車いすバスケットボールなど、身体を動かす競技で構成されています。
同じ愛知・名古屋で、同じ年に開かれる2つの国際大会のうち、eスポーツが実施されるのはアジア競技大会だけ、という状況です。eスポーツは『障害の有無を超えて同じ土俵で競える』という点で注目されてきましたが、国際的なパラスポーツの枠組みの中では、まだ正式な居場所を持っていないのが2026年98月時点の現在地といえます。
参照:実施競技及び競技会場|第5回アジアパラ競技大会(2026//愛知・名古屋)
参照:愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会|日本パラリンピック委員会
2-2.障害者eスポーツの始め方4ステップ
【STEP1】プレイする環境を決める PC・家庭用ゲーム機・スマートフォンのいずれか。スマートフォンは追加投資が不要で、Identity VやPUBG MOBILEなどアジア競技大会の採用タイトルにもモバイル作品が含まれています。まずは手元の端末で試すのが現実的な入口です。
【STEP2】自分の操作方法に合うデバイスを選ぶ 手指の操作が難しい場合でも、視線入力やアダプティブコントローラーといった選択肢があります(詳細はH2-5)。
【STEP3】操作負荷の軽いタイトルから始める 同時入力が少ない、時間制限が緩やか、1人でも練習できる——この3つを満たすタイトルは、身体的な負荷を抑えて始めやすい傾向があります。パズル系やレーシング系がその一例です。
【STEP4】大会・コミュニティにつながる バリアフリーeスポーツの大会・イベントを運営する事業者や、自治体が実施する交流イベントがあります。日本eスポーツ協会は2025年3月に「eスポーツを通した障がいを持つ方の社会参加支援啓発動画」と「eスポーツイベント運営マニュアル」を公開しており、支援者側の情報も整いつつあります。
参照:eスポーツを通した障がいを持つ方の社会参加支援啓発動画およびeスポーツイベント運営マニュアルを公開しました|一般社団法人日本eスポーツ協会
2-3.障害者eスポーツを支えるアクセシビリティ機器と貸出制度
2-3-1.視線入力 視線の動きでカーソルを操作する入力方式。手指を動かすことが難しい重度の肢体不自由がある人でも、画面上の操作が可能になります。東京都のeパラスポーツ事業では、PC用ソフトウェア「UD-eSports」を用いた取り組みが行われています。
2-3-2.アダプティブコントローラー MicrosoftのXbox Adaptive Controller、ソニー・インタラクティブエンタテインメントのPS5用Accessコントローラーなど、大手プラットフォーマーが障害のある人向けのコントローラーを販売しています。
外部スイッチを接続してボタン配置を自由に組み替えられるのが特徴です。2025年にはXbox Adaptive Joystickも発売され、片手での操作に対応しています。
2-3-3.自治体・団体による貸出制度 東京都は「eパラスポーツ事業」として、障害のある人が操作できるよう改良されたコントローラー(ボタン型スイッチ、押す力が不要な静電気式スイッチなど)を、障害者福祉施設等に約6か月間無償で貸し出しています。貸出施設同士のオンライン交流会も実施されており、機器を購入せずに試せる仕組みです。
参照:デジタル技術を活用したパラスポーツ(eパラスポーツ)事業|スポーツTOKYOインフォメーション
3.eスポーツで広がる障害者の可能性

UnsplashのStem Listが撮影した写真
eスポーツは、オンラインでいつでも気軽に参加できるため、障害者にとっては出会いが広がる場としても注目されています。
また、障害の有無に関係なく同じ土俵で勝負できるため、活躍できるチャンスが増えるのです。
実際に、競技力の向上とスポーツ精神の普及を目的として、一般社団法人障がい者e-スポーツ協会が設立されました。
海外では、格闘ゲームの大会で活躍したBrolylegs氏(2024年3月に35歳で逝去)のような選手が知られています。国内でも、愛知県名古屋市を拠点とするNPO法人p」「e-sports Barrier Break-Cuが、障害の有無を問わず参加できるeスポーツ大会を定期的に開催しています。
4.eスポーツ×障害者雇用促進に取り組む企業を3社紹介

4-1.就労支援を目的にしたeスポーツ大会「ePARA(イーパラ)」
ePARAは、バリアフリーeスポーツのニュースサイトとして、様々な情報を提供しているサイトです。
また、同時にeスポーツを通じて障害者が自分らしく、やりがいを持ちながら社会参加する支援をおこなっています。
その一環として、バリアフリーeスポーツ大会の企画運営を担当しているのです。
バリアフリーeスポーツは、参加するプレイヤーが障害者というだけではありません。
バリアフリーeスポーツ事業における様々な業務を障害者に委託、もしくは雇用の形で参画することで就労支援しています。
この理念や活動には、Yogiboやジョイサウンドなどの企業が支援しており、各方面から高く評価されています。
4-2.eスポーツの障害者雇用推進サービス「GROW-GAMING.」
GROW-GAMINGは、ESJコンサルティングが運営しているサービスの名称です。
法人向け障害者雇用ソリューションサービスがメイン事業となり、eスポーツの障害者雇用推進にも積極的です。
障害者雇用サイクル形成を見込み、eスポーツだからこそできる多様な人材確保や職場定着を実現するサービスとして注目されています。
また、障害者に対しても企業や支援機関と連携して、夢や希望に向かい長く働けることを目指しているのが特徴です。
4-3.eスポーツ専門の就労移行支援事業所「ACADEMIA」
ACADEMIAは、株式会社ACADEMIAが運営しているサービスです。
ACADEMIAは今までにない、障害者とeスポーツを組み合わせた、新しい障害者福祉事業所として誕生しました。
eスポーツで好きを仕事にするをコンセプトに、プロゲーマーやゲーミング関連会社への就職などをサポートしており、eスポーツに対して専門知識をもった講師が講義、実習などを担当している点が魅力的です。
就労までのカリキュラムを確立して、利用者がどの分野に進みたいかという気付きを与え、目指す道に沿って個別にサポートしています。
2年間の支援を受けられ、最終的にはビジネスマナーや面接対応などのスキルも習得できます。
参照:就労移行支援事業所ACADEMIA|株式会社ACADEMIA
障害者雇用・就労移行支援事業所の活躍場所として、eスポーツは広がりを見せています。就労移行支援の利用中は原則として副業はできませんが、こうした支援を経て障害者雇用枠で正式に働くようになった人が、本業とは別にeスポーツを副業として手がけるケースも今後増えていくことが期待されます。
参照:障害者雇用で働きながら副業はできる?おすすめの副業8選!|一般社団法人Ayumi
5.障害者eスポーツの課題とこれから
【課題1】機器と環境のコスト、そして情報格差 視線入力機器やアダプティブコントローラーは、誰もが気軽に購入できる価格帯ではありません。また、貸出制度や大会の存在自体が当事者に届いていないという情報格差も残っています。
障害者プレイヤーの競技レベルの向上が挙げられます。障害者でもeスポーツの分野で活躍
できるものの、すべての障害者が平等に活躍できるわけではありません。
あらゆる人がeスポーツをプレイできるように、ソフト・ハード両面で工夫や配慮が必要となっています。
【課題2】収益構造がスポンサー収入に依存している eスポーツ産業の収益構造は、スポンサー収入に大きく依存しています。
といっても、2018〜2019年頃の国内市場では、スポンサー収入が売上全体の75%前後を占めていましたが、直近(2024年)のデータでは、大会・チームへの「スポンサー費用」と「イベント運営」がそれぞれ全体の35%以上を占める構成に変化しており、依存度はやや分散してきています。今後は、入場料や放映権料、グッズ販売などの比率をさらに高めていくことが、業界全体の収益基盤を強化するうえでの課題です。
【課題3】国際的なパラスポーツの枠組みにおける位置づけ アジアパラ競技大会にeスポーツは採用されていません。競技としての国際的な位置づけは、まだ定まっていない段階です。
6.障害者eスポーツに関するよくある質問
Q1. 障害があってもeスポーツの大会に出られますか? 出られます。障害の有無を問わず参加できる一般の大会に出場する道と、バリアフリーeスポーツの大会・イベントに参加する道の両方があります。まずは自分の操作環境で無理なく続けられるタイトルを見つけ、オンラインのコミュニティから始めるのが現実的です。
Q2. 手や指を動かすことが難しくてもeスポーツはできますか? 視線入力や、押す力を必要としないスイッチ、アダプティブコントローラーなど、身体の状況に合わせた入力機器があります。東京都のeパラスポーツ事業のように、機器を無償で貸し出す取り組みも行われています。
Q3. eスポーツを仕事にすることはできますか? プロプレイヤーだけが仕事ではありません。大会運営、配信、実況、機材サポートなど周辺業務は幅広く、これらの業務に障害のある人が携わる形で就労機会をつくっている事業者があります。eスポーツに特化した就労移行支援事業所も国内に存在します。
Q4. 障害者eスポーツの大会や仲間はどこで探せばいいですか? バリアフリーeスポーツを扱うメディアや運営事業者の情報発信、自治体のパラスポーツ担当部署、日本eスポーツ協会が公開しているイベント運営マニュアルなどが入口になります。お住まいの自治体の障害者スポーツセンターに相談する方法もあります。
7.まとめ

eスポーツでは、視線入力やアダプティブコントローラーなどの支援機器を活用することで、障害者であっても平等にプレイできる場合があり、既にeスポーツプレイヤーとして活躍されている方もいます。
また、eスポーツの分野で障害者の就労の機会を作っている企業や団体があり、eスポーツを仕事にしている障害者も少しずつ増えています。
この記事で紹介した内容が、今後のeスポーツ業界の動向を追ううえでの参考になれば幸いです。







