介護食とは?4つの種類や作り方のポイントを解説!障害者が食事を楽しむ工夫も紹介

様々な食材

年齢や障害のあるなしに関わらず、誰もが「いくつになっても美味しい食事を楽しみたい」と考えるのではないでしょうか。そしてそれは“食のバリアフリー”の考え方が必要とされるとも言えます。

嚥下障害のある障害者や高齢者など、噛む力や飲み込む力が低下している方は、安心・安全に栄養が摂れるよう工夫された「介護食」を食事に取り入れるとよいでしょう。

本記事では、介護食の作り方や、障害者が食事を楽しむためのポイントをわかりやすく紹介します。

1.介護食とは?

介護食とは、食べものを噛む力や飲み込む力が弱くなっている人に合わせ、食材を食べやすく調理した食事を指します。医療の現場では「嚥下調整食」と呼ばれることもあります。

本来食事には、食べものを噛み砕き、タイミング良く喉の奥に送り込むというパワーが必要です。しかし加齢に伴い、噛む力や飲み込む力は低下する可能性が高いもの。また難病や障害により、口腔機能や認知機能が低下することもあります。

介護食には、食べる人の噛む力や飲み込む力に合わせた調理方法があります。それは、「刻み食」「やわらか食」「ミキサー食」「ゼリー食」の4つです。(分類の仕方により呼び方が変わることもあります)それぞれの作り方によって、特徴や留意点も異なります。

2.介護食の4つの種類と特徴

料理をする女性

2-1.刻み食

刻み食とは、噛まなくても飲み込めるよう、5mm 〜1cmほどの大きさに刻んだ食事です。噛む力が弱くなっている方でも食べやすく、刻む大きさを調整できるのが特徴です。

通常食を刻んだ食事なので、香りや見た目が通常食と変わらず香りを楽しむことができ、食欲が高まりやすいのもメリット。

デメリットは、誤嚥のリスクがあることです。

口のなかで食べものがまとまりにくく、飲み込むタイミングがずれてしまうと気管に詰まる可能性があります。誤嚥を避けるためには、食べものをまとまりやすくする、喉を通りやすくするなどの工夫が必要です。

また、歯の間に食べものが挟まりやすく、虫歯が発生するリスクが高まるとも言われており、口腔ケアも重要となります。

2-2.やわらか食

やわらか食(ソフト食)は、食材を煮込んだりミキサーにかけたりしてペースト状にし、型に入れて成形したもの。噛む力や飲み込む力が弱くなっている方でも食べやすいのが特徴です。

歯ぐきや舌でつぶせるくらいのやわらかさで、食材そのものの香りや見た目も楽しめるのがメリットです。

一方で、食べる人に合ったやわらかさでないと誤嚥の可能性があるため、飲み込むときの様子をよく観察しましょう。

2-3.ミキサー食

ミキサー食は、食材に出汁などを加えミキサーにかけ、ポタージュ状にしたもの。噛む力や飲み込む力が低下しソフト食を摂るのが難しい方でも食べやすいのが特徴です。

ただし、液体状のものは喉の奥に流れ込みやすく、むせたり誤嚥したりする可能性があるため、とろみ剤やゼラチンを使い“とろみ”をつけることも大切です。

また、食材の色や形が残りにくいため、食欲を感じにくいという人も。盛り付けのときに彩りを意識するなど、可能な範囲で、“食べる楽しみ”を感じられる工夫もあるとよいでしょう。

2-4.ゼリー食

ゼリー食は、食材をペースト状にしゼラチンなどを使ってゼリー状に固めたもの。噛むことが難しく、飲み込む力が弱い方も食べやすいのが特徴です。

ミキサー食は液体状に近いため、誤嚥のリスクが高まるという方は、ゼリー食にすることで飲み込みやすくなります。

3.介護食の選び方の基準となる​​「ユニバーサルデザインフード®」

日本介護食品協議会(以下、本協議会という)では、食べやすさに配慮してつくられた食品を「ユニバーサルデザインフード®︎」と称しています。

本協議会が制定した規格をクリアした商品には、「UDF(ユニバーサルデザインフード)・ロゴマーク」とともに、食品の“かたさ”や“粘度”をパッケージに記載することで、消費者が食べる人に合った食事形態を選びやすいよう工夫されています。

かたさや粘度の区分は、以下の通りです。

ユニバーサルデザインフードの区分表
ユニバーサルデザインフードの区分表

こうした区分を参考にして、食べる人にあった食品を選ぶとよいでしょう。

4.農林水産省が定めた「スマイルケア食」

ユニバーサルデザインフード®︎の広がりなど、介護食品市場は今後ますます拡大していく見込みのもと、2013年、農林水産省は「スマイルケア食」という新しい枠組みを発表しました。

この取り組みは、①介護食品を3つに分類し、②食品を選ぶ際の目安となるマークを設定、③「スマイルケア食」という愛称をつけることでさらに多くの人に認知され、食べる人に合った食生活を維持できることを目標としています。

農林水産省のホームページには、以下の通り記載があります。

「スマイルケア食」は、健康維持上栄養補給が必要な人向けの食品に「青」マーク、噛むことが難しい人向けの食品に「黄」マーク、飲み込むことが難しい人向けの食品に「赤」マークを表示し、それぞれの方の状態に応じた「新しい介護食品」の選択に寄与するものです。

引用元:スマイルケア食(新しい介護食品)|農林水産省


また、2016年には「そしゃく配慮食品の日本農林規格」(JAS規格)が制定されました。

この規格制定により、スマイルケア食「黄」マーク表示のためには、「そしゃく配慮食品のJASマーク」の付与が条件に加わるなど、スマイルケア食の品質向上につながる取り組みも行われています。

参照:そしゃく配慮食品の日本農林規格|農林水産省
参照:スマイルケア⾷の取組について|農林水産省


このように、介護食に関連する制度の整備なども介護食の広がりを後押ししています。

5.レトルト介護食品のメリット

噛む力や飲み込む力に合わせた食事づくりが重要であるとお伝えしてきました。食べる人に合わせることと同じくらい、介護食を作る人の負担を軽減させることも重要です。

ここでおすすめするのは、市販のレトルト介護食品の活用。介護食を作る時間の確保や調理器具の用意を最小限にし、食べる人に合った食事を提供できます。

また、必要な栄養素や不足しがちな栄養素に焦点を当てて作られたものもあるため、ぜひ参考にしてください。

・キューピー「やさしい献立」 シリーズ
食べる人の噛む力や飲み込む力に合わせて食品を選べるよう、4段階に分けて商品を展開しています。

参照:やさしい献立|キューピー株式会社


・株式会社吉野家「吉野家のやさしいごはん®︎ 」シリーズ
「吉野家のうまさを介護食でも再現したい」という想いから、味にこだわった商品です。

参照:吉野家のやさしいごはん®︎ |株式会社吉野家の牛丼


6.介護食の作り方のポイントと注意点

6-1.食材選び

介護食を作るとき、どんな食材がいいか?と迷う人もいるかもしれません。介護食は、誤嚥を防止することが重要です。そのため、栄養の摂取だけではなく、誤嚥につながりにくい食材を選ぶこともポイントとなります。

ミキサー食やゼリー食など水分を多く含むものはかさが増し、栄養が摂りにくくなっているため、効率的に栄養が摂れる食材や食品を考慮する必要があります。

介護食に活用しやすい食材は、やわらかいものや、食品そのものにぬめりのあるものなどが挙げられます。

タンパク質を摂る場合には、卵や魚類、豆腐や納豆などが、やわらかく調理しやすいでしょう。チーズやバターなどの乳製品も、加工しやすく脂質も摂りやすい食品です。

ただし運動が難しい方や、高血圧や糖尿病などの疾病がある方は、医師と相談し、摂取量に留意が必要です。

野菜や果物から食物繊維やビタミンを摂りたいときは、旬のものを選ぶと栄養が効率的に摂取できるでしょう。例えば、春にはキャベツ、夏にトマト、秋にはなす、冬は大根などが挙げられます。

6-2.調理・加工方法

食べる人によって作り方もさまざまです。やわらかく調理するためには、煮込む・蒸す、豆腐や出汁、牛乳でのばすといった工夫が有効です。圧力鍋や炊飯器を活用するのもよいでしょう。

野菜などは皮を剥く、タネやヘタを取り除くなど、できるだけ飲み込みやすく工夫しましょう。

今、介護食をより簡単に作れるよう、調理器具も発展しています。ここで、おすすめの調理器具を紹介します。

・ギフモ株式会社「デリソフター」
とんかつや唐揚げなど「美味しいけどやわらかく調理しにくい」料理も、刻んで圧力を加えることで、形を残したままやわらかく仕上げることができます。

参照:デリソフター|ギフモ株式会社


・robot coupe ®︎「ペースト作り専用マシン  ブリクサー」
ナッツ類や繊維の多い野菜なども短時間でペースト状にできる調理機器。

参照:ペースト作り専用マシン  ブリクサー|株式会社エフ・エム・アイ


6-3.味付け

適切な塩分量や糖分量に配慮した食事づくりが大切です。特に高齢者の場合、味覚を作る細胞が再生しにくいことで、味覚を感じにくくなり濃い味付けになりがちです。

塩分や糖分が過剰にならないよう、出汁をよく取ったり、ハーブやスパイスなどの香りのある食材を使ったりすることも、食欲が高まる美味しい食事づくりにつながるでしょう。

6-4.盛り付け

食事を楽しむのには、見た目も大切なポイントですよね。やわらか食では、なるべく元の食材の形に近い型で成形したり、ミキサー食でも食品の色を生かしたり、食用のお花やパセリを添えたりするなどの工夫ができます。

見て楽しむ気持ちを忘れないよう、工夫が必要です。

7.障害者が食事を楽しむための工夫

様々な野菜や果物

7-1.本人の「食べたい」という気持ちを大切に

どんな人にも好きな食べ物があったり、食事に関する思い出があったりするでしょう。本人の「食べたい」気持ちをいかに大事にするかを考える必要があります。

「食べたい気持ち」が沸き起こりにくいと、食欲や食事量の低下につながり栄養不足となる可能性もあるためです。

食べたい気持ちを維持・向上させるため、例えば、イベントや季節にちなんだメニューを取り入れる、好きな食べ物を家族と近い形態で食べられるよう調理する、美味しそうな見た目になるよう盛り付ける、香りにこだわるなどできる工夫はさまざまです。

本人の身近な人々で、「食べたい」気持ちに寄り添うための工夫や知恵を出し合えるとよいでしょう。

7-2.食べやすい食器を使う

食べる人が「自分で食べられた」という成功体験をつくることは、食べたい気持ちの維持にもつながります。

そのためには、本人の身体状況に合わせたお皿やお椀、スプーン・フォークなどの食器を使うことも、食事を楽しむために必要です。

例えば、片手のみを使って食事をする人の場合は、スプーンなどがすくいづらいため、多くは通常のお皿より深めに設計されています。

反対に、握る力が弱い人の場合は底が浅めになっているものがおすすめです。

このように、食べやすいように作られた食器も多く販売されていますので、ぜひリサーチしてみてください。

7-3.できるだけ「寝食分離」を心がける

「寝食分離」とは、寝る場所と食べる場所を分けることです。広いスペースではなくても、キッチンなど食べる場所へ移動することで、気分転換や食事が楽しみになる気持ちが生まれやすくなります。また、寝たきり防止にもつながります。

寝食分離を心がけることが、生活の質の維持・向上につながるのです。

7-4.コミュニケーションをとりながら食事を楽しむ

食事は、栄養を摂るためだけのものではありません。家族をはじめとする大事な人たちとともに食卓を囲み、適度な会話をしながら食事を楽しむ場面が、より満足感のある食生活につながることもあります。

また、あまり言葉が話せないという方でも、親しい人の会話や音楽を聴きながら食べることも心地よいでしょう。

8.飲食店にも広まりつつある「食のバリアフリー」

「食のバリアフリー」とは、規律や健康上の理由で食事の摂り方に制限がある人も充分に食事を楽しめるよう、食の多様化に配慮しようという考え方です。近年、さまざまな飲食店や宿泊施設で「食のバリアフリー」に共感するお店が増えています。

具体的には、介護食の食事に必要な食器を揃えている、介護食の調理・加工が可能であるなど、お店によってさまざまです。

例えば、東京ディズニーリゾート®︎では、園内の一部店舗が「レトルト食品の湯煎が可能な店舗」「きざみ加工対応店舗」「ペースト加工対応店舗」となっていて、ホームページにもわかりやすく記載されています。

参照:お食事に制限のある方へ|東京ディズニーリゾート®︎


また、当サイトで掲載している「バリアフリー認証店」のなかにも、介護食への理解が深い店舗もありますので、併せてご紹介します。

・おむすびカフェにこり(愛知県半田市)
嚥下障害のある方に限り、レトルト食品の持ち込み可能。ブレンダーやキッチンバサミなど、調理器具の貸し出しも行なっています。

参照:【半田】おむすびカフェにこり – 0〜120歳すべての人が来やすい設計を、母の想いがカタチになったお店


・和食鉄板 朔月(東京都中央区銀座)
とろみ・刻み食への対応が可能。

参照:【銀座】障害者も堂々と食事ができるような店舗を目指す和食鉄板 朔月


・九一門(くいもん)(神奈川県横須賀市)
事前に連絡をすれば、とろみ食・刻み食の持ち込み可能。

参照:九一門 – 誰でも安心して楽しめるバリアフリー店舗


9.最後に

「障害のあるなしに関係なく、美味しく食べたい」「何歳になっても、食事を楽しみたい」という想いは、多くの人がもっているでしょう。

その想いの実現のため、作る人も食べる人も安心して楽しめる食事を続けられるよう、食品や調理器具、理解のある飲食店など、介護食に関連するさまざまなサービスや商品を幅広く活用することをおすすめします。

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