制度情報 【車椅子の購入に補助金が出る?】補装具費支給制度の判定基準や支給までの流れをどこよりも分かりやすく解説!

【車椅子の購入に補助金が出る?】補装具費支給制度の判定基準や支給までの流れをどこよりも分かりやすく解説!

補装具費支給制度

車椅子・義足・白杖などは、身体に障害のある人にとって日常生活で欠かせない補装具です。

こうした補装具の購入には、補助金が支給されることをご存知でしょうか?

この記事では、補装具支援制度の概要や判定基準、申請手続きの流れなどについて解説しています。

これから補装具を購入しようか検討している人は、必見の制度です。

1.補装具費支給制度とは?

補装具支給制度とは、障害者の身体機能を補完または更生するための補装具の購入にかかる費用の一部を補助する制度です。

この制度は、障害者総合支援法の自立支援給付に基づいており、市町村が主体となって実施しています。

補助金の対象となる補装具には、車椅子はもちろんのこと、電動車椅子も含まれています。

詳しい種目一覧については、厚生労働省の「補装具種目一覧」をご確認ください。

参考:補装具種目一覧|厚生労働省


補装具は障害者総合支援法施行規則の中で、以下のように定義されています。

(1)障害者等の身体機能を補完し、又は代替し、かつ、その身体への適合を図るように製作されたものであること。
(2)障害者等の身体に装着することにより、その日常生活において又は就労若しくは就学のために、同一の製品につき長期間にわたり継続して使用されるものであること。
(3)医師等による専門的な知識に基づく意見又は診断に基づき使用されることが必要とされるものであること。

引用元:障害者総合支援法施行規則第六条の二十より|e-Gov法令検索


補装具支給制度は、身体障害者福祉法と児童福祉法を2006年に障害者自立支援法によって一元化された制度で、その後2013年4月に施行された現在の「障害者総合支援法」に基づく制度です。

障害者総合支援法は、定期的に改正されており2024年にも新たな内容が施行されています。

詳しい改正内容を知りたいという方は、こちらの記事を参考にしてください。

一元化されたことによって大きく変わった点は、補装具の制作事業者を障害者自らが選択できるようになったことです。

これまでの補装具の支給は、市町村と補装具製作業者及び販売業者が契約を結び、支給される仕組みでした。

しかし、購入業者を直接選べないのは、障害者の適合やニーズが十分に補装具に反映されないといった問題点があります。

そこで障害者のニーズや個別の状況を考慮し、補装具製作事業者と直接契約を結べるようになったことで、幅広い選択肢を確保することが可能になりました。

2.補装具費支給制度の対象者となる判定基準は?

丸三角バツの記号と指さし棒)

補装具費支給制度の対象者は、補装具を必要とする障害者、障害児、難病患者等です。

難病患者等については、厚生労働省が定める疾病に限ります。

参考:障害者総合支援法の対象疾病(難病等)|厚生労働省


また、補装具費支給制度は身体障害者手帳を取得していることを前提としており、難病において手帳を所持していない場合は申請時に医師の意見書が必要です。

制度の判定方法は「来所判定」と「書類判定」の2つがあります。

来所判定は、身体障害者更生相談所や巡回相談会会場へ申請者が来所し、直接判定を受ける方法です。

対象装具には、義肢・座位保持装置・電動車椅子などがあります。

一方で、書類判定は申請時に提出する補装具費支給意見書により判定する方法です。

対象装具には、補聴器・車椅子(オーダーメイド)・重度障害者用意思伝達装置などがあります。

上記2つの判定は、身体障害者更生相談所の判定により市町村が判定します。

また、医師の補装具費支給意見書により市町村の判定のみで決定する装具は以下の通りです。

  • 義眼
  • 眼鏡(矯正眼鏡・遮光眼鏡・コンタクトレンズ・弱視眼鏡)
  • 車椅子(レディメイド)
  • 歩行器
  • 盲人安全つえ
  • 歩行補助つえ

引用元:補装具費支給の判定について(現行)|厚生労働省


補装具の種類によって判定方法や基準が異なるので、注意が必要です。

判定基準は、対象となる補装具が必要な正当な理由があるかや、自立した生活が送れるかがポイントになります。

例えば、電動車椅子の場合「手動車椅子でも通勤はできるけれど、電動だったら便利だから」という理由だけでは支給されることは難しいでしょう。

しかし、通勤路に傾斜があり手動車椅子では通勤が困難で、一人では通勤ができないといった場合には、電動車椅子の支給対象と認められる可能性は高いです。

判定基準は各自治体によって異なりますが、国立障害リハビリテーションセンターが作成した「補装具費支給判定マニュアル」に基本的な事例が掲載されているので、参考にしてみてください。

参照:補装具費支給判定マニュアル|国立障害リハビリテーションセンター


3.補装具費の自己負担金額と所得制限について

3人の男女とそれぞれの所得を表すドルマーク

補装具費の自己負担金額は、原則購入費の1割です。

自己負担上限については市町村民税課税世帯の場合、月額37,200円になります。

また、市町村民税非課税世帯や生活保護受給者の自己負担額と月額上限は、ともに0円です。

ただし、障害者本人又は世帯員のいずれかが一定所得以上の場合(本人又は世帯員のうち市町村民税所得割の最多納税者の納税額が46万円以上の場合)には、補装具費制度の支給対象外となります。

区分条件月額上限
一定所得以上本人又は世帯員の納税額が46万円以上制度対象外
一般市町村民税課税世帯37,200円
低所得市町村民税非課税世帯0円
生活保護生活保護世帯に属する者0円

しかし、いくら所得が高いとはいえ高額な電動車椅子の購入や障害児の成長に合わせて補装具を頻繁に新調しなければならない家庭もあります。

そこで、2023年12月11日に開催された「こども未来戦略会議」にて、「障害を持つ子供向けの補装具費の所得制限の撤廃」について以下の通り言及されました。

補装具については、障害のあるこどもにとって日常生活に欠かせないものであり、成長に応じて交換が必要なものであることを踏まえ、保護者の所得にかかわらずこどもの育ちを支える観点から、障害児に関する補装具費支給制度の所得制限を撤廃する。

引用元:「第8回こども未来戦略案」|内閣官房

今後も制度の改善がなされ、補装具を必要としている子どもたちにとって利用しやすくなることが期待されています。

参照:補装具費支給制度の概要|厚生労働省


4.補装具費支給制度を利用して車椅子を購入するまでの申請手続きの流れ

デスクの上での書類のやり取り

補装具費支給制度における申請は補装具の種類によって異なりますが、今回は車椅子を購入するまでの申請手続きの流れについて解説していきます。

4-1.市町村窓口に相談・申請書類の受け取り

まずは、市町村の障害福祉窓口にて制度の対象となるか相談し申請書類を受け取ります。

申請書類は、市町村のホームページからもダウンロードできる場合があるので、直接窓口に出向かなくても書類の入手は可能です。

4-2.医師に「補装具費支給意見書」を作成してもらう

補装具費支給制度の申請書類の中には、医師が作成する「補装具費支給意見書」が必要なので、依頼します。

なお、補装具費支給意見書を作成する医師は、以下のように専門的な知識 ・ 経験を有することを求めています。

ア 補装具費支給意見書により更生相談所が判定する場合のこれを作成する医師は、身障法第 15 条第1項に基づく指定医又は障害者総合支援法施行令第1条第2項に基づく医療を行う機関(いわゆる「自立支援医療機関」)において当該医療を主として担当する医師である専門医又は国立障害者リハビリテーションセンター学院において実施している補装具関係の適合判定医師研修会を修了している医師であること。
イ 補装具費支給意見書により市町村が判断のうえ決定する場合のこれを作成する医師は、上記アと同等と認められる医師であること。
ウ 難病患者等の場合は、アに示す医師に加え、都道府県が指定する難病医療拠点病院又は難病協力医療機関において難病治療に携わる医療を主として担当する医師であって、所属学会において認定された専門医であること。又、身体障害児の補装具費支給申請における補装具費支給意見書は、原則として指定
自立支援医療機関又は保健所の医師の作成したものであることとしています。

引用元:4 補装具費支給意見書の作成について|補装具費支給事務ガイドブック


補装具費支給意見書を作成してもらう際には、担当医が上記の条件を満たしているか確認してみましょう。

また、事前にどのような医師に作成してもらうのがいいのか市町村窓口に相談するのもひとつの方法です。

なお、意見書の作成費用は病院によって差はありますが3,000〜4,000円程度で、全額利用者の自己負担となります。

ただ、障害者手帳で補装具が必要であると確認できる場合は、意見書の作成を省略できることもあるので医師や市町村窓口に事前に確認するようにしましょう。

参照:補装具費支給事務ガイドブック17p|厚生労働省


4-3.市町村窓口にて申請書類を記入・提出

補装具費支給意見書を医師から作成してもらったら市町村窓口にて、申請書類を記入し提出します。

申請書類の様式は、市町村によって異なりますがマイナンバーカードや免許証など身分を証明するものの提示が必要な場合があるので、忘れずに持参しましょう。

また、申請の際には身体障害者手帳や印鑑(認印)が必要です。

市町村によって必要なものが異なるので、事前に確認することをおすすめします。

例として、愛知県岡崎市の申請に必要なものを以下に抜粋しました。

  • 身体障がい者手帳
  • 印鑑(認印)
  • マイナンバーの確認書類(個人番号カードまたは、通知カード等)
  • 見積書(内訳書)
  • 医師意見書
  • 印鑑(認印)
  • 処方箋 など

引用元:障がい者への補装具費の支給|岡崎市


4-4.​​補装具費支給決定

市町村は、身体障害者更生相談所等の意見を参考に補装具費の支給を行うことが妥当であるか判断します。

申請された補装具の種類によって判定方法は異なりますが、オーダーメイドの車椅子の場合は身体障害者更生相談所の書類判定の対象です。

電動車椅子の場合は、巡回相談等含む直接判定によって審査されるので、利用者が指定された日時に身体障害者更生相談所に来所し判定を受けます。

また、レディメイド(既製品)の車椅子の場合は、市町村による書類判定のみです。

車椅子の種類によって判定方法が異なるので、事前に福祉窓口に確認しておくようにしましょう。

4-5.補装具業者との契約

支給決定を受けた後に、利用者は補装具業者と直接契約し補装具の作成を依頼します。

契約の際には、重要事項や契約内容をよく確認し、製作費用の見積書などを提示してもらいましょう。

補装具が完成したら、適合性を確認して調整などが完了したら引き渡しが可能です。

4-6.補装具の製作・支払い

補装具の製作・引き渡しが完了したら利用者は償還払い、代理受領のいずれかの方法によって自己負担分(原則1割)の支払いと市町村に残りの金額を請求します。

償還払いとは、ひとまず利用者が作製業者に補装具にかかった費用を全額を支払い、作製費から自己負担分を引いた金額を市町村に請求し受け取るという方法です。

一方で、代理受領とは利用者は自己負担分のみを支払い、作製業者は残りの負担分を市町村に直接請求するという支払い方法です。

支払い方法は市町村によって異なるので、申請時に確認するようにしましょう。

参照:第1章 補装具費支給制.3-4 補装具費支給手続きの流れ等について|補装具費支給事務ガイドブック


5.支給対象となる補装具の個数について

補装具の支給個数は、原則1つの種目・障害につき1個です。

ただし、身体障害者・児の障害の状況、環境に応じて、職業または教育上において必要であると判断された場合2個にすることができます。

例えば、車椅子の場合は職場のデスク幅に合わせて、違う車幅の車椅子にするなど必要性があると認められれば2つの車椅子の所有が可能です。

考え方としては、同一のものをスペアの目的として所有することは認められていませんが、環境に合わせて機能性が異なるものを使い分けるのが2個所有の目的です。

参照:第2章 補装具費支給事務の理解と運用.1-4 複数支給|補装具費支給事務ガイドブック


6.18歳未満の補装具費支給制度について

18歳未満の身体障害者の装具費支給制度については、成長過程を考慮し耐用年数に代わって使用年数を定めています。

使用年数以内の故障に関しては原則として、部品の取り替えや修理によって対応します。

また、児童の身体の成長や症状の進行に伴い短期間で補装具を交換しなければならない場合は、レンタルなどの借受けが平成30年4月から認められているので、必要に応じて検討が可能です。

参照:第2章 補装具費支給事務の理解と運用.1-6 耐用年数|補装具費支給事務ガイドブック


7.補装具費の再支給や修理について

カラフルなさまざまな工具

補装具費の再支給や修理についても、制度の対象となります。

補装具には、種目や型式・年式ごとに耐用年数が定められているため、原則として補装具費の再支給が可能なのは耐用年数が経過した後です。

ただし、耐用年数経過後でも修理によって継続使用が可能な場合は、再支給の対象にはならないので留意しておきましょう。

また、再支給前に破損した補装具は、基本的に修理の対象となります。

しかし、耐用年数前に修理が不能になった補装具に関しては再支給の対象です。

なお、災害や事故など本人の責任を伴わない事情により、補装具の紛失・破損した場合は新たに必要と認められる補装具費が支給されます。

本人の責任による破損や盗難などは、原則として自己責任ですが、事情を考慮して市町村が再支給を認める場合もあります。

参照:第2章 補装具費支給事務の理解と運用.1-5 再支給|補装具費支給事務ガイドブック


8.最後に

今回は、補装具費支給制度の概要や支給までの申請手続きの流れなどを解説してきました。

補装具費支給制度は、実施主体が市町村であるため地域によって制度内容が異なる場合があるので、申請にはまずお住まいの福祉担当窓口に問い合わせてみてください。

補装具は、身体障害者にとってなくてはならないものであり、日常生活を支えてくれる相棒です。

補装具費支給制度を正しく理解し、補助金を賢く利用しながら日々の生活をさらに充実させていきましょう。

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