インクルーシブ公園とは?誰もが遊べる遊具で車椅子でも楽しめる工夫を実例とともに紹介!

インクルーシブ公園

最近よく耳にする「インクルーシブ社会」や「ユニバーサルデザイン」。これらの用語は、障害の有無に関係なく、誰もが快適に過ごせることを目指す社会や環境を意味するものです。このような言葉が注目されている背景には、社会や私たちの生活を取り巻く環境を障壁のないものにしていこうという動きが活発化していることが挙げられます。

今回は、同じコンセプトを公園に持たせた「インクルーシブ公園」について、そもそもインクルーシブ公園とは何か、おすすめの遊具や公園などと併せて紹介します。車椅子ユーザーの方だけでなく、ベビーカーユーザーや小さなお子さんの遊び場としてもぜひ参考にしてみてくださいね。

「障害によって生み出される障壁は、社会のあり方によって生み出されている」という考え方の「障害の社会モデル」についての解説記事はこちら

1.インクルーシブ公園とは?

インクルーシブ公園とは、「障害の有無や年齢、性別、国籍などを問わず、すべての人が楽しく遊べること」を目的とする公園です。

インクルーシブ公園というと、障害のある子どもが遊べる遊具がある公園という意味で誤解されがちです。しかし、障害の有無、子どもか大人かに関係なく、すべての人が利用できる公園のことを指します。

そんなインクルーシブ公園ですが、下記5つが大切にされるべき項目として挙げられています。

  • アクセシビリティ

公園へのアクセスのしやすさを考慮し、誰もが最大限に自立して遊びに参加できる環境づくり。

車で公園の近くまで行けたり、車椅子ユーザーでも遊具へ自分で行けるような通りやすい道路への設計。

  • 選択肢

誰もが自分の「好き」を見つけられる場の提供。

運動遊びだけでなく感覚遊びや社会的遊び、さまざまな難易度がある遊び場の設置。

  • インクルージョン

相互理解が深まる、誰もが対等に遊びに参加できる環境づくり。

ルーツや身体的・知的発達がばらばらな多様な子どもたちがコミュニケーションを取りやすく、並んで遊べるデザインの導入。

また、対等で尊重し合える関係性の構築のため、障害が強調・特別視されない環境づくり。

  • 安心・安全

誰もが安全にのびのび遊べる配慮と工夫。

計画・設計段階から利用者へのヒアリングを行った、ニーズに合う公園づくり。また、危険は取り除きつつも子どもたちの発達に応じた環境の提供。

子どもだけでなく、多様なバックボーンを持った大人も見守りやすい環境づくり。

  • 楽しさ

公園を利用するすべての人が心躍り自分の世界を広げられるような、遊びの価値が高い環境づくり。

機能面だけでなく、見て遊んで楽しいデザイン設計。また、決まった遊び方だけでなく、子どもひとりひとりが自由な遊び方をできる柔軟性を持った遊び場の提供。

アメリカでは1990年に成立したADA法(Americans with Disabilities Act:障害を持つアメリカ人法)を契機に、インクルーシブ公園が多数設立されています。

一方、日本ではアメリカより約30年遅れて、2018年からインクルーシブ公園の整備が始まりました。

次章からは、インクルーシブ公園にある遊具やおすすめの公園を紹介します。

誰でも安全かつ快適に楽しめる遊び場であるユニバーサルビーチについての解説記事はこちら

2.インクルーシブ公園にはどんな遊具があるの?車椅子でも楽しめる工夫を紹介!


2-1.プレイビルダー

視覚、聴覚、触覚で遊べる遊具です。視覚では遊具に施されているイラストを、聴覚では遊具に取り付けられている音の鳴る仕掛けを、触覚では手でボールを動かしたりして楽しみます。

スロープなどが設けられ、車椅子に乗ったまま遊べるプレイビルダーがある公園もあります。

参照:インクルーシブ遊具の紹介|豊島区


2-2.ファウンテンデッキ

ウッドデッキ型の水遊び場です。フラットになっており、車椅子に乗ったまま楽しむことができます。時間によって噴水の高さが変わるため、見ているだけでも楽しめそうですね。

参照:インクルーシブ遊具の紹介|豊島区


2-3.​​ハーネス付きブランコ

ハーネス付きブランコ(松阪農業公園ベルファーム)

座位が保てない方でも遊べるハーネス付きブランコ。上半身をハーネスでしっかり固定してくれるので、足で踏ん張れない方も安全に遊ぶことができます。

参照:インクルーシブ遊具のある公園|三重県


2-4.砂場テーブル

テーブル型の砂場である砂場テーブル。サンドボードテーブルなどと呼ばれることもあります。テーブル型になっているため従来の砂場のようにしゃがむ必要がなく、車椅子に乗ったまま砂場遊びを楽しめます。

参照:インクルーシブ遊具の紹介|豊島区


3.車椅子におすすめのインクルーシブ公園6選

3-1.としまキッズパーク(東京都豊島区)

サンシャインシティのすぐ近くにあるとしまキッズパーク。造幣局の跡地に作られ、豊島区では初のインクルーシブ公園です。

鉄道ファンの中では有名な工業デザイナーの水戸岡鋭治氏がデザインを担当。公園中央にはミニSLの「IKEDEN」が堂々と設置されています。

車椅子のまま楽しめる砂場テーブルがあったり、車椅子のままでも入れる休憩所も。休憩所にはカーテンがついているので、暑さが苦手な方や、周囲の音が気になる方もカーテンを閉めることで落ち着ける空間となっています。

また、園内には男女共用の「イケこどもトイレ」と呼ばれるだれでもトイレも設置されており、大人の車椅子ユーザーでも使うことができます。

園内は比較的段差も少なく、車椅子ユーザーやベビーカーユーザーにとって移動しやすいでしょう。

注意点は、入園にはweb予約が必須なこと。入園対象は小学校低学年まで向け・障害のある子ども向けとなっており、保護者同伴が必須です。平日空いている場合のみ当日予約も可能ですが、事前に余裕を持って予約しておくことをおすすめします。また、1時間交代制となっているので、その点も注意が必要です。詳しくはとしまキッズパーク予約サイトをご確認くださいね。

参照:真っ赤なミニトレインが走る!としまキッズパーク(豊島区)はいろんな子どもたちが一緒に楽しめるインクルーシブ公園|るるぶKids


3-2.国営昭和記念公園「わんぱくゆうぐ」(東京都立川市)

総面積180ヘクタールの敷地を誇る国営昭和記念公園の中にある「わんぱくゆうぐ」エリア。ユニバーサルデザインを取り入れており、インクルーシブ公園としての役割を果たしています。

遊具周りはゴム舗装が施されており、転んでも安心。中央にある巨大なプレイビルダーは、回廊が幅広いスロープとなっており、車椅子ユーザーも難なく遊べます。プレイビルダーの反対側にはゆらゆら揺れを楽しむ船があり、車椅子のままでも乗り込むことができます。揺れもおだやかなので、安心安全に楽しめるでしょう。

小学生以下専用のトランポリンである「ふわふわドーム」は、縁が垂直に立ち上がった安定したつくりで、車椅子の子どもが乗り移りやすく設計されています。

「ゆらゆらブランコ」は背もたれがあり、身体を支える力が弱い子どもでも安心して乗ることができます。わんぱくゆうぐのすぐそばにある「原っぱ南売店」にて身体のずり落ちを防ぐ安全ベルトの貸出もあるので、ぜひ活用してみてくださいね。

国営昭和記念公園は敷地が広いので、どの入口から入るかがポイントとなります。わんぱくゆうぐへは、西立川口ゲートから入るとアクセスがしやすいですよ。

参照:わんぱくゆうぐ|国営昭和記念公園


3-3.​​新田さくら公園(東京都足立区)

​​新田さくら公園(東京都足立区)

広大な敷地の半分以上を芝生が占める新田さくら公園。隅田川のリバーフロントに面した公園には、運動能力が鍛えられるといわれる遊具がたくさん設置されています。

そんな新田さくら公園にもインクルーシブな遊具が。車椅子に乗ったままでも通れるうんていやプレイビルダーがあります。また、バラ花壇脇にはスロープが設置されているため、5月と10月の開花時期を楽しむことができますよ。

参照:新田さくら公園|東京都足立区


 

3-4.秋葉台公園 (神奈川県藤沢市)

神奈川県内で初めてインクルーシブ遊具が導入された秋葉台公園。インクルーシブ遊具は全部で4つあります。

1つ目は、車椅子のまま楽しめるプレイビルダー。難度のある動線やクールダウンポイントを設けるなど、さまざまな工夫が凝らされています。

2つ目は、車椅子からの移乗ができる回転遊具。高さに変化があり、高い部分は体幹が弱い子どもでも安定して座れるハイバック席になっています。

3つ目は、体を保持する大型バケットシートが設置されたブランコ。ハーネスでしっかり体を固定するので、体幹が弱い子どもでも安心して乗ることができます。

4つ目は、複数人で乗れるスイング系遊具。スロープ付きで車椅子のまま乗ることができる上に、車椅子ユーザーも揺らす役ができますよ。

参照:誰もが遊べる,インクルーシブな遊具が完成しました|藤沢市


3-5.砧公園 (東京都世田谷区)

2020年3月に、日本初のインクルーシブ公園として誕生した砧公園内の「みんなのひろば」。2018年に、自身もダウン症児の母である龍円愛梨都議会議員がインクルーシブ公園の必要性を訴えたことがきっかけで、整備がなされました。

そんな「みんなのひろば」には、なんと9つものインクルーシブ遊具が設置されています。

その中で2つ紹介します。

  • 回転遊具「ぐるぐるマウンテン」

砧公園のスプリングシーソー


みんなで乗って回したり回してもらったりする遊具です。大きな凹みにもたれて座れるので、身体を支える力が弱い子どもでも安心して楽しむことができます。

  • スプリングシーソー

砧公園のスプリングシーソー


二人で並んで座れるワイドな座面のシーソー。身体を支える力が弱い子どもでも、介助者が支えながら楽しむことができます。

参照:砧公園|東京都公園協会


3-6.泉南りんくう公園「SENNAN LONG PARK」(大阪府泉南市)

SENNAN LONG PARKは、スポーツ・食・レジャーをまるごと体験できる関西最大級のレクリエーション施設

アースカラーのプレイビルダーでは、遊具の各所にあるさまざまな難易度のネットやロープ、トンネルを巡ることで、多様な動きを体験することができます。地上から手の届く範囲に遊べるしかけがたくさんあるので、車椅子のまま近づいて触ることができます。

また、遊び場の設置エリアを駐車場から近い場所にするなど、利用者がアクセスしやすいような工夫も。コミュニティエリアの通路も車椅子でも通れるよう幅広いつくりとなっています。 

参照:泉南りんくう公園|大和リース株式会社


4.最後に

今回は、インクルーシブ公園とはどのような場所か、どのような遊具があるのか、おすすめのインクルーシブ公園を紹介しました。車椅子の子どもやまだ一人できちんと歩けない子どもがおり、なかなか外で遊ぶ場所が見つけられない方は、ぜひ今回の記事で紹介した公園に行ってみてくださいね。

遊びだけでなく、新たな出会いや発見があるかもしれません。

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