「バリアフリーリフォームを考えているけど、どこを改修すればいい?」
「リフォーム費用にあてられる補助金はある?」
バリアフリーリフォームを考えている人にとって改修エリアやかかる費用などが、悩みどころではないでしょうか?
不動産ポータルサイト「SUUMO(スーモ)」の調査によると、バリアフリーを目的としたリフォーム費用・価格相場は1戸建ての場合300万円未満、マンションの場合は900〜1,200万円です。(中心費用帯)
参照:バリアフリーを目的としたリフォーム費用・価格相場情報|SUUMO(スーモ)
ただし、上記はおおよその予算であり、リフォームの改修内容によっても費用は変動します。
そこで今回は、バリアフリーリフォームの改修事例や予算感、そして補助金や減税制度について解説していきましょう。
目次
1.バリアフリーリフォームとは?
バリアフリーリフォームとは、身体的に障害のある方々が快適に生活できるように、自宅の設備や居住空間を改修することを指します。
一般的なリフォームでは、デザイン性や機能性、利便性の向上を目的として行うことが多いです。一方でバリアフリーリフォームは、障害者の身体的特性を考慮し日常生活を安全に送れるようにすることを主軸としています。
一般的なリフォームとバリアフリーリフォームでは、そもそもの目的が異なっているので改修内容や施行の優先順位も異なってくるでしょう。
また、バリアフリーリフォームは、障害者の身体的バリアを補うという観点から、耐久性や安全性も求められます。
例えば、対象者が利用するための手すりを設置する際には、金属製の丈夫な材質を使用し耐久性や安全性を向上させたり、滑り止めコーティングを施したりするなどが挙げられます。
バリアフリーリフォームは、高齢化が進んでいる日本社会のなかで欠かせない改修工事の一つです。
また、障害児を抱える家族にとってもバリアフリーリフォームをすることで、子育てがしやすい環境を整えることができます。
ふらっと。では障害児のバリアフリーな家づくりのポイントも解説していますので、興味のある方はぜひ以下の記事も参考にしてみてください。
参照:【プロに聞きました!】障害児と暮らすバリアフリーな家づくりに大事なこととは?|バリアフリー情報サイト「ふらっと。」
2.バリアフリーリフォームのメリット
2-1.自宅での事故を防止
長年住み慣れた自宅でも、高齢化や障害の影響によって転倒事故やケガのリスクは高まります。
厚生労働省の「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」によると、高齢者の介護のきっかけとなった原因は認知症、脳血管疾患(脳卒中)と続いて「骨折・転倒」が13.9%です。
また、消費者庁の調査では、65歳以上の転倒事故の48%は自宅で発生しているということが明らかになっています。
こうした自宅での転倒事故を未然に防止するためには、バリアフリーリフォームをして少しでも怪我のリスクを減らすことが大切です。
参照:2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況|厚生労働省
参照:10月10日は「転倒予防の日」、高齢者の転倒事故に注意しましょう!|消費者庁
2-2.障害者の自立を支援
バリアフリーリフォームは、高齢者や障害者の自立を促し支援する役割も果たします。例えば、段差をなくすことで車椅子でも介護者の手を借りることなく、移動がスムーズにできます。
これまで介護者に手伝ってもらっていたことが、バリアフリーリフォームによって一人でもできるようになることは、障害者にとって自立への大きな一歩です。
また、自立によってできることが増えたことで運動量も向上し、体力の維持にも役立ちます。
バリアフリーリフォームは、健康寿命を伸ばすとともに、高齢者や障害者のできることを増やすサポートもしてくれます。
2-3.家族や介護者の負担を軽減
バリアフリーリフォームは、同居する家族や介護者にとっての負担も軽減できます。例えば、高齢者や障害者の排泄介助をする際に、トイレが狭いと身動きが上手くできません。
リフォームによってトイレの広さを確保することで、介護者にとってもサポートしやすい環境で身体的負担を軽減できるでしょう。
また、段差をなくしたり手すりを設置することは、被介護者の転倒を防ぐことができるため、介護者にとっての心理的負担も軽減できるメリットがあります。
3.バリアフリーリフォームの改修事例と費用相場
バリアフリーリフォームは、改修する箇所や内容によって費用相場は異なります。ここでは、改修事例とおおよその予算感を解説しています。
なお、費用相場に関してはリフォーム前の状況や施工業者、改修規模によって変動しますので、あくまでも参考程度にしてください。
3-1.浴室
浴室での改修事例と費用相場の目安は、以下の通りです。
- 段差解消・・・5〜10万円
- 床材張替え・・・10〜20万円
- 浴室スペースの拡張工事・・・30〜50万円
- ドア交換・・・5〜20万円
- 暖房設置・・・7〜15万円
- 手すりの設置・・・3〜5万円
- 浴槽交換・・・10〜50万円
- 昇降リフトの追加・・・20〜30万円
浴室のバリアフリーリフォームでは、転倒やつまずき防止のための段差の解消、滑りにくい床材への張替えなどがあります。
また、水滴や段差による転倒事故が多い場所です。万が一転倒した時でも、引き戸や外開きのタイプにドアを交換することですぐに救助ができるでしょう。
さらに、ヒートショックを予防する暖房設備で温度差によるストレスをなくすことも快適な入浴をするためのポイントです。
3-2.トイレ
トイレに関するバリアフリーリフォームの事例と費用相場は、以下の通りです。
- 和式から洋式への改修・・25〜50万円
- スペースの拡張・・・15〜35万円
- 手すりの設置・・・1〜7万円
- 引き戸ドアへの交換・・・5〜15万円
- 自動洗浄の導入・・・3〜15万円
トイレは使用頻度も高く、座る・立つ・かがむなど複雑な動作が必要な場所でもあります。中腰にならないと用を足せない和式から洋式への改修は、高齢者や障害者にとって自力で排泄できるきっかけにもなるでしょう。
また、手すりは排泄の動作の高さに合わせてL字のものを設置するケースが多いです。
車椅子ユーザーがいる家庭では、車椅子が出入りしやすい引き戸への交換やスペースの確保が推奨されています。
3-3.廊下・階段
廊下・階段の安全性を確保するためのバリアフリーリフォームの改修事例は、以下の通りです。
- 手すりの設置・・・1〜15万円
- 常夜灯の設置・・・2〜5万円
- 幅の拡張・・・40〜100万円
- 昇降機の設置・・・60〜150万円
- 階段の勾配の改修・・・20〜150万円
- 滑り止めシートの設置・・・2〜5万円
廊下や階段の手すりは、設置する長さによって異なります。常夜灯の設置は、動くものを感知した時にだけ反応する人感センサーが電気代の節約にもなりおすすめです。
また、高齢者が上りやすい階段の寸法は「蹴上×2+踏面=60cm」が一般的です。
蹴上とは段差の高さのことを指し、一般住宅の蹴上寸法は建築基準法で「23cm以下」と決められています。踏面とは階段の足を乗せる踏板の縦幅を指し、一般住宅の踏面寸法は建築基準法で「15cm以上」と定められています。
上記の建築基準法の寸法内で、計算式の合計が60㎝に近ければ近いほど高齢者の階段の上り下りがしやすくなる基準です。
ただ、障害の程度や特性によって、昇降しやすい階段の角度や高さというものは変わってくるので注意しましょう。
3-4.玄関
玄関のバリアフリーリフォーム事例と参考費用は以下の通りです。
- スロープの設置・・・6〜20万
- 手すりの設置・・・1〜15万円
- 椅子の設置・・・1〜10万円
- 玄関収納の設置・・・5〜40万円
- 引き戸への交換・・・20〜60万円
住宅への入り口となる玄関では、靴の脱ぎ履きなど動作が多い場所です。靴の脱ぎ履きをサポートする手すりや椅子の設置は、被介護者の自立にもつながるでしょう。
また、車椅子ユーザーがいる家庭では、スロープの設置や外出用の車椅子を収納するためのスペース増設も、使い勝手のいいバリアフリーリフォームの改修事例です。
スロープの角度や長さは、建築基準法やバリアフリー法で定められており、自走用か介助用なのかによっても異なるので、使用環境に合わせて検討が必要になります。
3-5.キッチン・ダイニング
キッチン・ダイニングのバリアフリーリフォームの事例と費用相場は、以下の通りです。
- 浅型シンクの設置・・・2〜5万円
- キッチン本体の取替・・・15〜120万円
- 床材の張替え・・・4〜20万円
- 自動水栓・・・5〜10万円
キッチン・ダイニングのバリアフリーは、車椅子を想定した作りが多く座ったままでも調理や食事がしやすいようにするのが目的です。
バリアフリーキッチンの本体には、あらかじめ浅型シンクや低めのカウンター、シンク下のスペースが確保されており、本体の値段は15〜120万円程度と幅広く機能によっても値段が前後します。
最近では、コンロの換気扇や収納スペースの昇降がリモコン1台で操作できるモデルもあり、利用者が料理しやすいように工夫されています。
転倒や滑り防止床材の張替えは、床材の種類や張り替える面積によっても変わってくるので、事前に業者や工務店と擦り合わせておくことが重要です。
4.マンションでもバリアフリーリフォームは可能?
マンションでも、手すりの設置や段差の解消など基本的なバリアフリーリフォームは可能です。ただし、スペースの拡張や間取りを大きく変える大規模な改修工事は戸建てと比較すると難しいでしょう。
また、マンションのリフォームでは事前に管理組合の承認が必要です。入居者管理規約を確認しながら、どのようなリフォームなら出来るか検討しておきましょう。
マンションのバリアフリーリフォームの注意点としては、水回りにある段差の解消です。
例えば、洗面所やトイレなどの水回りにある段差の下には排水管が設置してあるケースが多く、無理に段差を解消してしまうと下水が逆流し排水ができないといったトラブルが発生します。そのような場合は、床の高さ全体を解消したい段差に合わせるといった大規模な工事が必要です。
5.バリアフリーリフォームの補助金・減税制度
バリアフリーリフォームには、補助金・減税制度があります。
制度にはそれぞれ適用条件がありますが、改修前に利用できる制度がないか把握しておきましょう。
5-1.介護保険の「住宅改修支援制度」
介護認定を受けた家族を自宅で介護する場合には、介護保険の「住宅改修支援制度」が利用できます。
制度の対象となるには、介護認定で要支援1〜2、要介護は1〜5のいずれかの認定を受けていて改修予定の自宅に住んでいることが条件です。
対象者が病院や施設にいる場合は制度の適用外ですが、住宅に戻る予定が決まっている場合は、特例として認められるケースがあります。
住宅改修支援制度が適用できる工事内容は、以下の6種類です。
- 手すりの設置
- 段差の解消
- 転倒防止のための床の張り替え
- 引き戸への改修
- 洋式便器等への便器の取替え
- その他居住状況に応じて必要となる住宅改修
補助額は、住宅改修費の9〜7割で残りの1〜3割は自己負担となります。自己負担額は、所得によって変動しますので詳しくはお手持ちの「介護保険負担割合証」をご確認ください。
1割負担の場合は、支給上限額は20万円なので、最大で18万の補助金が受け取れます。
一度の改修で上限額を使い切る必要はなく、上限額以内であれば分割して請求することも可能です。
また、住宅改修支援制度は、基本的に生涯で20万円までの支給限度額と決められていますが、転居や介護認定が3段階以上重くなった場合には、再度支給が受けられます。
住宅改修支援制度を利用したい場合には、まず担当のケアマネージャー等に相談することをおすすめします。
5-2.自治体の補助金
国が運営している介護保険以外にも、各市町村が支給している補助金制度があります。
自治体の補助金制度には、介護認定されていなくても適用、あるいは介護保険と併用可能など条件はさまざまです。
また、支給金額も各地自体によって異なるほか、介護保険では改修できないキッチンや浴室の工事が対象となるケースがあります。例として、各市町村の補助金制度の一例をみていきましょう。
【東京都港区】
引用元:高齢者を対象とした住宅改修費の助成(介護保険外のサービス)について知りたい。|港区
- 予防給付
手すりの取付け、段差の解消、床材の変更、扉の取り替え、便器の取り替え、その他これらの工事に付帯して必要な工事
助成限度額 200,000円- 設備給付
①浴槽の取り替え及びこれに付帯して必要な給湯設備等の工事
助成限度額 379,000円
②流し、洗面台の取り替え及びこれに付帯して必要な給湯設備等の工事
助成限度額 156,000円
③便器の洋式化及びこれに付帯して必要な工事
助成限度額 106,000円
【長野県長野市】
身体障害者住宅整備補助事業
対象者:上肢・下肢・体幹・視覚障害のいずれかの障害があり、1〜3級程度の人
前年度の所得税額が7万5千円以下の世帯
対象工事:浴室・便所・玄関・階段・廊下・台所・洗面所等
補助額:補助限度基準額70万円(補助金額は最大で63万円)
上記のように、自治体によって制度内容や補助金額が大きく異なります。
自治体の補助金制度については、まず国の介護保険制度を利用してリフォームし、不足した部分を補う形で申請を検討するというのが望ましいでしょう。
ただし、自治体によって制度が異なるので、気になる方はまずお住まいの市町村ホームページで該当する制度について確認することをおすすめします。
5-3.減税制度
バリアフリーリフォームを実施した場合、大きく分けて以下の3つの減税制度が受けられます。
- 所得税の控除
- 固定資産税の減税措置
- 贈与税の非課税措置
所得税の控除とは、リフォーム促進税制減税(住宅特定改修特別税額控除)とも呼ばれ、最大で60万円まで所得税が控除される制度です。
固定資産税の減税措置は、新築後10年以上経過した住宅を工事費用50万円以上でバリアフリーリフォームした場合、翌年分の固定資産税から1/3が減税されます。
贈与税の非課税措置は、祖父母や両親からバリアフリーリフォーム資金を受けた場合は、最大1,000万円まで贈与税がかからない制度です。
こうした控除や減税制度を受けるには、確定申告書やリフォームをした証明書類が必要になります。
6.バリアフリーリフォーム3つの注意点
6-1.対象者の身体の状況を考慮する
バリアフリーリフォームでは、対象者の体の状況を考慮して改修内容を検討することが大切です。
例えば、手すりを設置するにしても対象者の身長や身体機能の特性に合わせて、位置や高さを考える必要があります。車椅子ユーザーであれば車椅子の大きさを含めた通路幅を確保するなどの配慮が必要です。
また、バリアフリーリフォーム対象者本人だけでなく、同居家族にとっても暮らしやすい住宅でなくてはなりません。
例えば、対象者にとっては利用しやすいキッチンの高さでも、同居家族にとっては使いづらく屈んで腰が痛くなるような設計は本末転倒です。
そのため、いきなり大掛かりなリフォームをするよりも必要に応じて段階的にリフォームを進めてくのが理想です。
6-2.日常の生活・家事動線を意識する
日常の生活動線を意識したバリアフリーリフォームを検討することは、快適な生活を実現するための基本です。家の中の行き来をシンプルにすることで、ストレスなく生活できます。
例えば、朝起きて寝室からリビングに向かう途中に顔を洗うための洗面所やトイレを設置することで、毎日のルーティンがスムーズに行えます。
また、洗濯機の近くにランドリールームを設置するなど、家事動線も考慮することがポイントです。
6-3.実績のある業者に依頼する
バリアフリーリフォームは、一般住宅の改修とは異なり段差の解消やスペースの拡張など、特殊な工事内容であることが多いです。そのため、これまでバリアフリー改修工事に携わった実績のある業者に依頼することが大切です。
バリアフリー情報サイト「ふらっと。」を運営するAyumiでは、建築会社・工務店会社との連携により店舗のバリアフリー改装・バリアフリー建築に関する支援を行っています。
具体的な支援内容としては、バリアフリー建築・改装に強い業者の紹介、補助金や助成金制度のご案内、改修内容や図面を見てのアドバイスなどです。
また、バリアフリーリフォームを検討している飲食店舗のご相談も受け付けております。詳しいサービス内容は、以下のページをご覧ください。
参照:バリアフリー認証事業|Ayumi
参照:3.一般社団法人Ayumiのサービスリニューアルについて|Ayumi
7.最後に
今回は、バリアフリーリフォームの改修事例や費用、補助金・減税制度などについて解説してきました。
工事にかかるおおよその費用を把握しながら、快適な暮らしのため必要な箇所を検討し、バリアフリー化していくことが大切です。
また、減税や補助金などの制度を賢く活用しながら、リフォームにかかる費用を抑えることができます。
バリアフリーリフォームをお考えの方は、まず住宅に関するお困りごとを書き出して、プロや専門家にアドバイスをもらうことをおすすめします。