今回は店舗運営をしている方々・企業にとって知っておいて損が無い記事・情報です。
障害者差別解消法の成立・改定に伴い、障害者からの訴訟案件・相談件数が年々増えています。
訴訟リスクを少しでも軽減したいと考える店舗・企業向けの記事となります。
目次
1.障害者差別解消法とは
障害者差別解消法は全ての国民が障害の有無により分け隔てられることがないよう、相互に歩み寄りながら共生する社会の実現を目指すために施行されました。
参照:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律|e-Gov法令検索
行政だけでなく民間事業者に対して障害を理由に、不当で差別的な取り扱いを禁止しています。また、障害者から社会的障壁の除去の意思表明(協力依頼)があった際に、過重な負担にならない時は合理的な配慮をするように努めなくてはいけません。
ここで注意したいのが、障害者からの提案を「全て受け入れて対応をしてほしい」というわけではなく、あくまでも事業者側で社会的障壁の除去を最大限努力するようにしてほしいということになります。
2.障害者差別解消法の改正ポイント
障害者差別解消法は「合理的配慮」の考えを取り入れた法律と言われています。
これまで合理的配慮は、行政のみ法的義務で、事業者側は「努力義務」とされてきました。しかし、2021年5月の通常国会で改正障害者差別解消法が成立しました。
これにより民間事業者においても合理的配慮が法的義務化されることになったのです。
合理的配慮も法的義務化される
2024年4月1日から民間事業者にも合理的配慮を義務付けると、2023年3月14日に政府は発表しました。
これにより、商品やサービスを提供する企業はもちろん、飲食店も合理的配慮の義務対象となります。
上記で説明したように、合理的配慮とは障害者の提案を全て受け入れることではありません。あくまで事業者側が本来の業務に影響が出ない程度に、障害者が社会の中で感じる障壁を取り除くことが合理的配慮なのです。
どちらか一方が負担をするのではなく、お互いにコミュニケーションをとりながら、より良い解決策を模索していくことが、今後は求められています。
罰則内容
では合理的配慮をせず、障害者の権利侵害を行なった場合、罰則はあるのでしょうか。
内閣府の『障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律についてのよくあるご質問と回答<国民向け>』によると、次のように記載されています。
この法律では、民間事業者などによる違反があった場合に、直ちに罰則を課すこととはしていません。 ただし、同一の民間事業者によって繰り返し障害のある方の権利利益の侵害に当たるような差別が行われ、自主的な改善が期待できない場合などには、その民間事業者が行う事業を担当している大臣が、民間事業者に対して報告を求めることができることにしており、この求めに対して、虚偽の報告をしたり、報告を怠ったりしたような場合には、罰則(20万円以下の過料)の対象になります。
引用元:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律についてのよくあるご質問と回答<国民向け>|内閣府
ここのポイントは合理的配慮を提供しないことが罰則ではないことです。合理的配慮に向き合わないことが違反とされています。
そのためには、障害者がどんな困り事を抱えているのかを考えるだけでなく、コミュニケーションの接点を持つ意識をすることが大切ではないでしょうか。
関連記事:【2023年最新版】合理的配慮の提供が「法的義務」化へ
3.障害者差別解消法で訴訟まで発展した事例の紹介
障害者差別解消法を知らなかった店舗や企業が、障害者の入店等を一方的に断り、当事者達から訴訟されてしまうケースが多くあります。
実際に、入店を障害の有無だけで拒否したネットカフェには70万円の賠償命令が出た事例があります。また、2021年10月28日にはスポーツジム運営会社が身体障害者に対して電動車椅子の入店を断る対応をして、慰謝料33万円の支払い命令が出されています。
上記の表のように年々、障害者差別や合理的配慮に関わる相談件数が全国で増えています。
「障害者差別解消法・合理的配慮を知りませんでした。」では済まされなくなってきています。
障害を理由とする差別解消の法律に係る調査結果の資料も、下記から確認してみてください。
参照:令和2年度障害を理由とする差別の解消に関わる相談件数について|山梨県福祉保健部障害福祉課
4.訴訟に発展することだけがリスクでは無い
店舗や企業にとっては訴訟され、賠償金の支払い命令を受けることだけがリスクではありません。今や、メディアの情報はすぐにSNSで拡散がされてしまいます。
拡散されることにより、店舗や企業のイメージに傷がつきます。傷がつくとお客さんが離れていきます。そうならないためにも、障害者差別解消法や合理的配慮について学び、障害者に対しての対応スキルを正しく身につける必要があると言えます。
反対に障害者に対しての対応が良い、接客が良いという店舗や企業は、ポジティブな内容でクチコミがSNS等で拡散されます。それが他の店舗や企業との差別化の一因にもなります。
障害者差別解消法の訴訟リスク軽減への対策の有無で店舗・企業のイメージ大きく変わると言っても過言ではありません。
5.店舗や企業と障害者がお互い最大限の歩み寄りを
訴訟リスクを避けたいと考えるあまり、どうしたら良いかわからない。となってしまう方もいるかと思います。
そうではなく、「私たちには何が出来るだろう?」「何に困っているのだろう?」と考え真摯にお客様に向き合うことが出来れば自ずと接客の内容は良いものになると考えます。
障害者も健常者も同じ「人間」です。嫌な対応・接客をされたら嫌な気分になります。
反対に、障害者の方々も「過度な要求」「無理・無茶な要求」はせずに、店舗にしてほしいことを素直な心で「提案・お願い」していくことが大事だとAyumiは考えています。
まさに店舗・企業と障害者の「歩み寄り」です。
6.最後に
今回の障害者差別解消法に伴う訴訟リスクについて話してきました。
この記事を読んで、障害者を「腫れ物扱い」するのではなく、「障害者も一緒に受け入れ、どのように対応をしたらベストなのか?」を考える一つのきっかけになっていたらAyumiは嬉しいです。