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【プロに聞きました!】障害児と暮らすバリアフリーな家づくりに大事なこととは?

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障害児を抱える家族が家を建てる、リフォームすると考えた時、「どんなことを考えたらいいの?」「どんな設備が必要なの?」と悩む方は多いのではないでしょうか。

SNSでも、そのような悩みを頻繁に見かけます。

実は筆者も悩んだ親の一人で、「巷にはたくさんの家づくりの本や雑誌があるのに、障害児家族向けの本はない」「インターネットの情報もほとんどない」という状況で、一般向けの情報から必死に参考になりそうなものを集めました。

「建築会社が提案してくれるんじゃないの?」とも思ったのですが、実際には「段差をなくす」以外の提案はほとんどありませんでした。障害児家庭自体が少ないので、施工例も少なく、そのノウハウはあまり持ち合わせていないのかな、というのが率直な印象です。

高齢者向けのバリアフリー住宅が得意だからといって、障害児向けのバリアフリーが得意とは限りません。

「両者は別物に近い」とまで仰る専門家の方がいます。それが、バリアフリー住宅に特化した家づくりをされている株式会社神崎工務店の吉村さん。

福祉住環境コーディネーターの資格を持ち、「障害児・者向けの家づくりをしたい!」とこの会社に入ったという熱意の持ち主です。約20年のキャリアの中で、依頼された実績は約2,000件にものぼります。

そんな経験豊富な吉村さんに、障害児家庭が家を建てる・リフォームをする時にどんなことを考えればよいのか、おすすめの情報収集方法など、家づくりのポイントについて伺いました。

1.バリアフリー住宅のポイントである「動線」とは?

【インタビュアー(ライター):小澤/インタビュイー:吉村さん

小澤:障害児と暮らす家の間取りを考える時に、ポイントになることはありますか?

吉村さん:障害児と暮らすときにどんな動線になるかを考え、「将来のシミュレーションを何パターンできるか」が大切だと思います。

※「動線」:人が自然に動く時に通ると予想される経路を線で示したもの

たとえば、「浴室をどうするか」を考える時には「入浴時は将来的にどうなるのか?」のシミュレーションをします。

「今は抱っこで入れるけど、体が大きくなったらどうするのか?」と、入浴の動作をまずは想像し、そこから具体的に大きさや必要な設備を考えていくことが大切だと私は考えています。

なぜなら、障害がある小さなお子さんの場合は特に、将来どうなるかわからないからです。「座れるのか?」「立てるのか?」「歩けるのか?」など、はっきりしていない場合が多く、また親御さんにも「こうなってほしい」という希望があります。

それを否定せず汲み取りつつ、可能性を提示してお客様に選んでいただくために、将来のパターンを思いつく限り提示して、納得がいく選択をしていただけるよう私どもはお手伝いをしています。

これが一般的な家づくりにはない考え方なので、建築会社にとっても難しいポイントになるかもしれません。

2.障害児家庭がバリアフリー住宅を考えるときに大事にしたい4つの動線

2-1.入浴時のこと

小澤:実際に、どんな動線がポイントになりますか?

吉村さんまずは入浴ですね。ここがみなさん不安に思われることが多いところですし、ご相談を受ける時も入浴についてのお話が多いです。

ポイントは、抱っこができなくなった時にどうするかのパターンをいくつ用意できるか?です。お子さんの状態を考え、将来を予想しながら一緒に考えていきます。

たとえばこんなことです。

・湯船に浸かるか、シャワーのみにするか
・放課後等デイサービスなど通所事業所で入る場合があるか
・訪問入浴サービスを使うか

こういったことを考えつつ、広さや浴槽の形などを考えていきます。

2-2.家に出入りする時のこと

吉村さん:次に多いのは「進入外出」ですね。家にどう入るのか、どう出るのか、ということです。駐車場からの動線も大事です。

こちらも入浴と同じように、動作として想定されるパターンを考えていきます。

・どう家に入るか(車椅子のまま、抱っこした状態など)
・車は福祉車両なのか、将来的に福祉車両になるか
・どこから家に入るか(玄関、掃き出し窓など)

その上で、雨に濡れず、そしてできる限り短い動線にするにはどうしたらいいのかも加味して決めていきます。

2-3.就寝時のこと

吉村さん就寝時のことも、障害の程度によって考え方が変わるポイントです。

・親と一緒に寝るのか
・一人の部屋をつくるか
・介護ベッドが必要になる可能性はあるか

こういったことを考えながら、部屋の大きさや間取りを考えていきます。

2-4.排泄時のこと

吉村さん:障害が重度のお子さんの場合、ずっとおむつが必要な場合も多いので、実はあまり数としては多くないのですが、トイレをどうするかもポイントです。

将来的にトイレで用を足せるようになるか、ということを予想しながら、そうなる可能性がある場合には建具の開口や動線を考えていきます。

3.バリアフリー住宅に詳しい建築会社はどう探したらいい?

小澤:吉村さんのように障害児と暮らすバリアフリー住宅に詳しい方がいる建築会社を、自分たちが住むエリアで探すためにはどうしたらいいのでしょうか?

吉村さん「バリアフリー」という言葉は実はとても広義で、「陸上競技」って言ってるみたいなものなんです。陸上競技といっても、短距離走や長距離走もあれば、砲丸投げもあるじゃないですか。それを一括りにはしないほうがいいですね。

たとえば「バリアフリーに詳しいです」という建築会社があったとしても、それは高齢者向けのバリアフリーかもしれないですよね。その会社に障害児のバリアフリーの話をするのは、短距離走の選手に砲丸投げのことを聞いているようなものなんです。

特に大人と子どものバリアフリーというのは、考え方が違います

たとえば、将来性。先ほども言ったように、将来どうなるかが子どもの場合は想像がつかないことも多いです。そこまで考えたうえで提案できる建築会社は、全国で見ても相当少ないです。

ですので、「障害のある子どもと暮らす家づくりに詳しい建築会社はない」という前提で考えることが大事かもしれません。建築会社に任せず、自分から建築会社に提案していけるような情報収集をしたほうが、いい家づくりになる確率が高いと思います。

4.障害児と暮らす住宅で快適な間取りを考える時におすすめしたい情報収集方法

小澤:では、建築会社に自分たちから提案をするためには、どんな情報収集をしたらいいのでしょうか。

吉村さん在宅介護に関わっている人に話を聞いてみるのは、一つの方法だと思います。

訪問介護や訪問看護を使っているご家庭は、担当の方に話を聞いてみると、色んなお家に行っている分、様々な事例を聞けるかもしれません。

もちろん、Instagramやブログなどで事例を調べるのも有効です。弊社では有料にはなりますが、個別相談も承っています。オンラインで実施しますので、居住地域を問わずご相談いただけます。

小澤:個別相談ならではのメリットはありますか?

吉村さん:インターネットに出ている情報は、ご自身のお子さんにあっていないこともありますので、身体状況に合った話が聞けるところは個別相談の良さだと思います。

また、動線を考える時には地域ならではの事情も考慮しなければなりません。台風が多い、雪が降るなど、気候や風習・文化などによって、駐車場からの動線や入浴の方法も違います。都会と地方では、土地や建物の広さも全く異なります。

そういった事情も加味して相談できるのが、個別相談のメリットになるかもしれません。

5.バリアフリー住宅の新築やリフォームに使える補助金はある?

小澤:現在家づくりを考えている場合、使えそうな補助金や制度は何かありますか?

吉村さん「こどもエコすまい支援事業」という、新築にもリフォームにも使える補助金が今はあります。ただし、予算上限に達し次第終了となりますので、今から新築を計画するのだと間に合わない可能性もあります。

家づくりを検討されている場合は、すぐに確認されたほうがいいですね。

参照:こどもエコすまい支援事業【公式】|国土交通省

あとは自治体によって変わるので、一概には言えないところです。建築会社に聞いたり、インターネットで調べてもらうのが確実だと思います。

6.これから家づくりをされる方へのアドバイス

小澤:これから家づくりをされる方にアドバイスがあれば教えてください。

吉村さん:まずは、家づくりのパートナーに「知識がある方より意識が高い方」を選ぶことですね。

寄り添ってくれる方、一生懸命お子さんのことを考えてくれる方と一緒のほうが、いいものができると思います。

その上で、将来の動線をしっかり考えて間取りをつくること、そのために情報収集をしていくことが大切です。

先ほどもお話しした通り、障害児向けの住宅に詳しいところはほとんどありませんので、施主主導になってしまう状況を受け止めつつ、自分から建築会社に提案していくために情報収集をしていかないといけません。

小澤:そのために、御社で行っている個別相談を利用するのも有効ですね。

吉村さん:そうですね。自分のような者をうまく使ってもらえたら。

有料ですし、オンラインなのでなかなかどうなるのか想像つかず、結構勇気がいると思うんですが、ご相談後にはみなさん「やってよかった」と言ってくれますね。

7.最後に

吉村さんにお話を伺って、障害児と暮らす家づくりの難しさを改めて実感しました。「将来どうなるのか」という医師でもはっきりとはわからないことを想定しつつ、今の障害の程度を鑑みて考えないといけないからです。

ですから、建築のプロだけでなく、障害児向け住宅のプロの視点というのはとても頼りになりそうです。

吉村さんは、TwitterやInstagramでも積極的に情報を発信されています。

施工例やお客様の声なども豊富に掲載されていますので、まずはSNSの投稿やWEBサイトなどで情報収集を行い、「それでも解決できない、自分の子どもに合った家づくりを知りたい」となった場合に、個別相談もできるというのはとてもありがたいなと個人的には思います。 

新築にしてもリフォームにしても、百万円単位のお金を払う大きな買い物ですし、毎日過ごす家なので、失敗のない家づくりがしたいですよね。

よりよい住まいをつくるために、多くの障害児向け住宅に関わってきたプロの知識を活用するということも、手段の一つとしてご検討されてみてもいいかもしれません。

Instagram:https://www.instagram.com/kanzaki.fukuoka/

Twitter:https://twitter.com/kanzakifukuoka

Ayumiには吉村さんに仕事への想いなどをお聞きした記事もありますので、こちらもご参考になさってください。

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